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お掃除屋サン  作者: した
1/1

お掃除屋のお仕事


「護衛をお願いしたい?」

「ああ。最近の警察は役に立たないからな。SP二人よりお前一人の方がよっぽど役に立つ。」


「…料金は先払いでいいっすかね?」


砂仁(サジン)さーん。朝ですよー。」

「んぁ?」

砂仁と呼ばれた男はソファーで寝ていた。

鋭い雰囲気が似合いそうな男だが、今はその殺気は微塵も感じられない。

細身の長身はソファーからはみだし、足は肘掛に乗せられている。

短い黒髪をかきあげる。その奥の瞳は気だるげだ。

「また遅くまで飲みに行ってたんですか?夜更しはだめですよー。」

先ほどこの男を『砂仁』と呼んだ少女が再び口を開いた。

見た目は幼く、砂仁の子供というには大きく、妹というには若すぎる。

「飲みに行ってたんじゃないよ。」

「お仕事?」

「そうそう。営業終わったオフィスの清掃。」

「それじゃあお疲れだね。起こしてごめん。」

「大丈夫だよ。」

「まだ寝てていいよ。朝ごはんあるから食べてね。」

少女がテーブルへと目をやる。

綺麗に仕上がったハムエッグとキャベツがワンプレートに乗っている。

テーブルの上にはインスタントコーヒーの瓶と空のカップ、スプーンが並ぶ。

「もう学校に行くのか?」

「もうっていつもの時間だよ?」

呆れたように少女は笑った。

砂仁がちらり、と壁に掛けられた時計を見る。

時間は七時四十分過ぎを指している。

納得した砂仁を見て少女は楽しそうに笑った。

学校の鞄を抱える。

「じゃあ行ってきます。」

「行ってらっしゃい、ゆき。」


リビングを出ていったゆきが玄関先で誰かと話す声がする。

ほどなくしてドアが閉まる音と共に相変わらずの砂仁のいるリビングに人が入ってきた。

「いいの?玄関までゆきちゃんお見送りしなくても。」

「新婚夫婦かよ。」

「ちゃんと構ってくれるのも今のうちだよ?そのうち反抗期で口も聞いてくれなくなるかもよ?」

「へいへい。」

入ってきた男は、砂仁に及ばずとも長身で、丁寧に作られた端整な顔立ち。

ただ、その頭を覆っている金髪は恐ろしいほど彼に似合っていなかった。

度のほとんどないファンション用の眼鏡も似合ってはいなかった。


「で、サンちゃんお仕事ってなによ?」

「護衛。」

「護衛?金弾まなそう。」

男は仕事の内容を聞いて明らかにつまらなそうな顔をした。

「実際大してよくねぇよ。」

「じゃあなんでOKしたのさ?」

「お前はそんなに『お掃除』したいわけか。」

「そうじゃないけどー。」

「…本題はこっちだ。」

昨夜から着たままでよれたスーツの上着の内ポケットから、書類を一枚取り出す。

「なにこれ?…あーそういうこと。」

その書類にさっと目を通して、金髪の男はすぐに納得した。


「護衛はお前だけだと思っていたが。」

初老の男が明らかに怪訝そうな顔をした。

夕闇が迫るホテルの前、出入りする人々は皆身綺麗な者ばかりだ。

「念には念をってやつですよ。こいつも実力あるんで心配いりません。」

砂仁の隣には場にそぐわない金髪。

スーツに身を包んではいるが、その姿はエセホストにしか見えなかった。

「そうか。」

「何か用事があったら『ドラ』って呼んでやればこいつ来ますから。」

「どうもー。」

ドラは見た目通りの適当な挨拶をする。

「んで俺はいつも通り」

「『サン』か。」

「はい。お任せ下さい、他の誰にも貴方は殺させません。」

サンはとびきりの笑顔で言った。


「うまくやれよ、砂仁。」

同じ時刻、男が一人呟いた。

一人でいるには大きすぎる部屋で、ひとりごちる。


ホテルの一番大きな会場、そこは有力者の集まりだった。

「このニホンにさらに大きな栄光あらんことを。乾杯!」

乾杯、と会場にいた人々が続く。

初老の男、サンとドラもそれに続いた。

全員がグラスの中の白ワインを飲み干す。

マイクは司会の男の元に渡り

「では、皆様はしばしご歓談をお楽しみください。」

その声で上座を向いていた人々はそれぞれ食事に会話としきりに口を動かし始めた。


ドラもそれに習って料理を取ろうとしてサンに止められる。

「仕事中。」

「はいはい。」

残念そうに料理へと伸ばした手を引く。

「サン。」

依頼者に呼ばれたサンはすぐさま振り返る。

「はい、なんでしょう?」

「主催者と話がある。来い。」

「わかりました。ドラ、早く。」

「はいはい。」


「どうも、お久しぶりですな。」

依頼者がまず口を開いた。

「おお、これはこれは。仕事の方はいかがですかね。」

「おかげ様で。それで次は…」

「その話だが…今は対外との交渉が立て込んでいてね。」

「そうでございますか。いやはやこれは失礼しました。」

「こちらこそ失礼。国が安定したらその時は。」


「くそっ。」

男二人を従えた依頼者は悪態をついた。

建物の中だが窓はなく、あたりの照明は少なく薄暗い。

「『国政が安定したら?』いつのことだと思ってるんだ!?」

一人で暴言を吐き続ける。

サンとドラは黙ったまま、その様子を後ろから見ている。

「あいつ…!そうだあいつを殺せ!報酬は上乗せしてやる!!簡単だろう!?サン!!」

「あーそういうこと言っちゃう?」

サンは呆れたような声で言い、自身の黒髪を掻く。

先程まで依頼者に向けていた丁寧な口調ではない。

「ま、ある程度は読んでたけどね。」

頭にあった手をそのまま内ポケットに運ぶ。

落ち着いて、むしろ気だるげなままサンは内ポケットから一丁の拳銃を取り出した。

「な、貴様…契約違反か!?」

「あのさぁ、俺の本業忘れてない?護衛程度でなんでOKしたと思ってんの。」

「金か!?あといくら積めばいい!?」

その口調には既に依頼者と護衛の関係はない。

「ごめんなさいね、俺への依頼は先着順って決めてんだ。」

「クソっ!」

慌て脂汗を額から流す男とは裏腹に、サンは至って落ち着いている。

「なにか遺言は?」

「こんなことでこんなことでこんなことでこんなことで…」

「あーはいはい。」

拳銃の安全装置を外す。

「ひいっ!?」

「はい、バーン。」

直後、サンは引き金を引いた。

男の額を血で染めた。



「あのさーわざわざ拳銃でする必要なかったんじゃない?血飛ぶし。」

先程までの豪華な場所とは一片して、深夜のファミレスでドラが不満を述べた。

洋服もスーツから薄緑色の作業着に変わっていた。

「確かに、ナイフ使ったほうがよかったかもな。」

サンは話しながらステーキをナイフとフォークで切るようなジェスチャーをした。

二人の元にウェイトレスが料理を持ってやってきた。

サンの元に『厳選トマトのこだわりオムライス』、ドラには『極上チーズのカルボナーラ』が運ばれた。

フォーク片手にドラが続ける。

「じゃあなんでさ。」

「いいんだよ。俺が個人的に恨みのある相手だったから。」

「へぇ…。」

サンがオムライスを咀嚼する。

続いてドラも納得いってない顔でカルボナーラを口へ運んだ。

よく噛んで飲み込んでからサンが言った。

「大体、今の政治の状態で足がつくわけないっての。」

「まあね。」

今夜一番のすっきりとした表情で、ドラがもう一口カルボナーラを口へ運んだ。


落ちまでできてるので多分4話完結くらいだと思います。(書いてないけど)

できれば早く完結させていです。(いつになるか分からないけど)

かなり会話が多くて説明が省かれてると思います、読みづらかったらすいません。(直す元気はないけど)

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