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少々卑猥な表現が含まれています。大したものではないのですが、苦手な方はご注意ください。
昨夜、珍しいレア生物である妖精を発見し、ひと騒動があった『Blue sky海賊団』。
本日は、少し遅めの起床である。
それにも関わらず、一人暗闇の中で早々に活動している者がいたことを、本人以外は誰も知らなかった。
*****
「ん~!はぁ。今日もよく晴れてるなぁ」
大きく伸びをした『Blue sky海賊団』副船長であるフィーが、目の上に手をかざし空を見上げる。
「「フィー、おはよう~」」
船内から出てきたのは、双子のリュヌとエトワルだ。
「おい、ちゃんと寝れたのか?」
「「僕(私)たちは若いから大丈夫!」」
「でも、子供のうちにちゃんとした時間に寝ておかないと成長しないよ」
横から、ランが出てきて笑いながら諭すように言う。双子は、わかっているのかどうなのか、とても素直に返事をした。そんな双子に苦笑して、ランはフィーに話しかける。
「おはよう、フィー。レドは、まだ部屋かな?これからの進路について相談があるんだけど・・・」
「レドなら、ヒヨとじゃれながらこっちに来てたぞ」
先に仕事を始めていたらしく、少し汚れた手を拭きながら来たチャオと、それぞれエプロン、白衣を着たドナドナとカオルも合流する。
「相変わらず仲良いわよね~」
「ヒヨがやたら絡んでるだけの気もするがな」
みんなが同意を示す前に、話題の二人が船内から出てきた。
「だ~か~ら~、違うんだってば!」
「うるさい。高い声で騒ぐな」
「高い声に慣れてないの?まさか、童て」
ガシッ!
「それ以上言ったら、その口潰すぞ」
ヒヨが言い終わる前に、左手でヒヨの両頬を挟むレド。目が本気だ。
ヒヨは両頬を掴まれ、唇をタコみたいにしたまま数回肯く。
「はぁ、お前、一応女なんだから少しは考えて物言えよ」
レドが手を離し、呆れた顔をして言ったことに、ヒヨはケロッとした顔で言い返す。
「一応、考えてるんだけど?」
「あれでか?」
(((確かに)))
間髪入れずに突っ込んだレドに対して、話を聞いていた団員たちはおおいに同意したようで、首を縦にふっていた。
しかし、ここで退くヒヨではなかった。
周りの団員たちにチラリと目線を向けて、またレドに戻す。
「でもカオルも女だけど、あたし以上に口悪いよね」
満面の笑みを向けて言ったヒヨの言葉に、レドをはじめ団員たちは固まり、ゆっくりカオルの方を見た。そこには、同じく固まっているカオルがいる。この反応から、みんながこの船の船医であるカオルのことをどう認識しているかがわかるだろう。まぁ、今までのカオルの言動から女と認識しろという方が無理な話かもしれないが。一人称が、かろうじて女だろうが、あの言い方では年相応には聞こえない。
「カ、カオルは今更仕方ないよ。ここまできちゃったら」
ランが、カオルに視線を送りながら言うと、カオルは首をうんうんと振った。
「そうそう。それにあたしゃ柄じゃねぇし、急に女らしく喋ったらキメェだろ」
周りの団員たちも肯いている。本当なら、失礼な!と怒るところなのだろうが、誰もそんな素振りを見せない。
「そうかな?カオルは顔も整ってるし、良い線いってると思うけどなぁ」
「あたしの話はいいんだよ!それより、船長とヒヨは何を言い争ってたんだ?」
カオルは、話の方向を変えることにした。
「レド船長は童て」
「「「「「その話はもういい!」」」」」
レド、フィー、ラン、チャオ、カオルが即座にヒヨの言葉を遮る。
「あぁ、その前ね!えっと・・・何だっけ?」
ヒヨはレドに話をふったが、レドも思案顔だ。
「二人とも忘れたの~?」
ドナドナが首を傾げて尋ねる。レドとヒヨも首を傾げて思い出そうとしている。
「二人とも忘れるくらい、どうでもいいことだったんだろ」
チャオの結論に、ヒヨはそうかもね~、と答えたがレドは納得いかないようだった。その様子を見たヒヨが、レドの肩をポンと叩く。
「しょうもない事であんなに叫いて、結局忘れちゃったなんて、漫画みたいなマヌケなことをして恥じでしかないけど、ここは素直に認めようよ」
ヒヨの目は、母親のような温かく、しかし微かに哀れむような目をしていた。
「ちげぇ!つか、その目やめろ!」
レドは、肩からヒヨの手を払い怒鳴ったが、ヒヨはケラケラ笑い、団員たちも楽しそうに二人のやりとりを見ていた。
(平和だな)
チャオがそう思った直後、見張り台から身を乗り出し、こちらに叫ぶような報告が聞こえた。
「レド船長!船がこちらに近づいています!海賊船です!」
その言葉に、団員たちがざわめきだした。
レドはそれを無視し、見張り台にいる男に向かって声をあげる。
「どんな旗かわかるか!?」
「はい!船はそれほど大きくないですけど、旗は・・・白地に紅のドクロです!!」
それを聞いて、幹部たちをはじめ一部の団員たちの目つきが変わった。
*****
『Blue sky海賊団』の船に真っ直ぐ近づいている一隻の船。そこにはためく、白地に紅のドクロマーク。
最近、この旗印について聞いていた『Blue sky海賊団』にとって、今近づいてきている船を警戒しないわけにはいかない。レドや幹部たちを中心に団員たちが集まり、ピリピリした空気を醸し出す。
そんな空気が流れているなど、気にしないというように、その船は『Blue sky』の船の横に引っ付くように並んだ。
そして、その船から現れたのは、長い黒髪をなびかせた女と白衣を着て眼鏡をかけた医者のような青年、ヒラヒラとした服を着た派手な女、目をつり上げてレドたちを睨みつけている少年、顔に刀傷があり、一番年上だろう風格に満ちた三本の刀を持つ男の計五名だ。
「その海賊旗、『crimson海賊団』か?俺たちに何の用だ?」
レドが前に出て五人に向けて言うと、黒髪の女も前に一歩出てきた。
「『Blue sky』のような名高い海賊団に知って頂いてるとは、光栄ですね。私はこの『crimson海賊団』の副船長、シザレノン=マイスターと言います。突然の接触、申し訳ありません」
そう言って、シザレノンは軽く頭を下げた。その行動と毅然とした態度に『Blue sky』のメンバーから、驚きと賞賛、悪態の声があがる。幹部たちは、ジッと『crimson』のメンバーを見つめる。
それをわかっているのか、シザレノン以外のメンバーはそこから動かず堂々とたたずんでいた。ただ、少年の方は、威嚇し今にも襲いそうな勢いだが、なんとか踏みとどまっているといった感じだろう。
それを見ていたレドは、小さく息を吐き、再度用件を聞く。
「で、『船長がいないcrimson海賊団』が俺たちに何の用だ?」
「おっ前!」
レドの言葉に、少年が怒りをあらわにし、レドたちの船に飛び移ろうとしたが、白衣の青年に止められた。
「アル、落ち着きなさい」
「でも、レオ!あいつ!」
「シンの邪魔をしてはいけませんよ」
「うっ、わ、わかったよ」
レオと呼ばれた青年、本名レオンドロ=トルエノの言葉に、アル少年ことアルボノ=ティエラは、しぶしぶ退き下がる。その様子を横目で見ていたシザレノン -シン- は、レドに目を向け直し、少し眉を寄せる。
「うちの団員を煽らないでくれませんか?まだ幼いぶん、感情に流されやすいんです。『Blue sky』を束ねている船長なら、それくらいわかっていらっしゃると思っていたのですが?」
「俺は、事実確認をしただけだが?気に障ったのならすまないな。お前のような器量を持った奴が副船長を務めているのだから、たとえどんな事実だろうが受け止められると思ったのだが」
レドが、ニヤニヤしながら腕を組む。それを見つめるシン。
端から見ると、虎と豹の戦いのようだ。嫌みの言い方といい、態度といい、お互いの印象は悪い方へと進行している。
「ねぇ、ねぇ、あの船長、格好良くない?やぁだ~、野性的な男ってそそられるのよねぇ~」
緊迫な雰囲気に、場違いな声をあげたのは『crimson』側の派手な女だった。
「バカじゃねぇの!?あっちは敵だぜ?レェナのその癖、なんとかしろよ」
「別にいいでしょ~。それに、敵って決まったわけじゃないし。もしかして、アル僻んでんの?ダサ~」
レェナと呼ばれた女 -バイレェナ=カンシオン- は、ツンっとそっぽを向く。なおも食って掛かろうとするアルに、今度は刀傷の男が止めに入った。
「だから、やめろって。レェナも、今は控えるところだってことぐらいわかってるだろう?」
「わかってるわよ。だから、ここに留まってるんじゃない。こんな状況じゃなければ、今すぐ向こうの船に飛び移るわよ」
「っ、お前サイテーだな!」
「アル、レェナがこういう事言うのは今にはじまったことじゃないだろ?少し落ち着け。レェナも、心配で仕方ないのはわかるが、今は言葉を選んでくれ」
「っ!何言ってんの!?ディエス、意味わかんないし」
レェナは、慌てて言うと、またそっぽを向いた。その耳は少し赤い。
ディエス、本名ディエス=オンセは、レェナの態度に苦笑した。
アルは、不思議そうに二人を見ている。
「なんか、あっち揉めてるっぽいスね。やっぱり、船長がいないからスかね?」
声は聞こえないが、何か言い合っている事はわかった『Blue sky』の面々は、どうしたものかと『crimson』のメンバーを見ていた。
「レド、どうしようか?」
ランが後ろから尋ねると、レドはため息をついて面倒臭そうに答える。
「仕方ない。このまま放っておいても面倒なことになりそうだし、アレを止めてさっさと用件を聞きだすか」
レドが言うアレとは、crimsonの言い合いのことだろう。幹部たちも同意見で、首を縦に振っている。
「おい。結局、用け」
「お見苦しいところをお見せして申し訳ありません。もう済みましたので、本題に入りましょうか」
レドの言葉を遮り、シンがにっこり笑いながら言った。このタイミングとあの笑顔から、レドの嫌みをまだ根にもっていたようだ。
(ここで言い返すと話が進まないからな。今は黙っとくか)
レドの考えが伝わったのか、シンはそのまま言葉を続ける。
「私たちがあなた方のところに来たのは、返して貰うためです」
「返す?」
レドたちが、何のことかと疑問に思ったとき、団員たちの間をサッと黄色いものがすり抜けていき、レドの横を通り過ぎて船から飛び出した。『Blue sky』のメンバーが驚きに声をあげるころには、黄色いものは『crimson』の船の上に立っていた。
「ヒヨ」
レドの呟きに、団員たちは一斉に『crimson』に飛び移ったものを見る。
そこには、綺麗な金髪をなびかせ、やけに膨らんだ麻袋を担いだヒヨがいた。そして、ヒヨに近づくシン。
『Blue sky』の団員たちが戸惑っているなか、シンはヒヨの目の前まで来ると、温かさを感じさせる笑みを向けた。そして・・・
「おかえりなさい、船長。あなたの船へ」
「「「せ、船長~~~!??」」」
『Blue sky海賊団』、衝撃の事実である。
幹部たちと一部の団員たちは、ヒヨが『crimson海賊団』と繋がりがある可能性を予想していたが、さすがに船長とは思わなかったのだ。
「船長って、海軍に捕まってるんじゃ」
フィーが、信じられないという顔で言う。
「確かに捕まったよ。けど、隙をついて逃げ出したんだ。海軍は、あんな大っぴらに国民に公表した手前、結局逃げられました、なんて言えないんでしょ。だから、国民とか公の場では、私はまだ捕まってることになってるみたいだね」
ヒヨは、どうでも良さそうに答えた。
「お前、記憶はいつから?」
カオルが無表情で聞くと、ヒヨは眉を下げて申し訳なさそうに答える。
「ごめん。他の海賊にあたしの素性がバレると厄介だから、記憶喪失のふりをしてたんだ。本名はソレイユ=ホロセレサ」
「そうか」
カオルは、無表情のまま言葉を返す。それは、騙されたことに傷ついているわけでも、悲しんでいるわけでもなく、医者としての確認のようなものだった。
その事に少し安心したヒヨは、笑ってもう一つの爆弾発言を投下する。
「ごめんねついでに・・・『Blue sky海賊団』の財宝、ちょっと貰ったから」
「「「はぁ?」」」
『Blue sky』の団員たちが呆けた表情をする目の前で、ヒヨは肩に担いでいた麻袋を下ろして中身を見せるように傾ける。そこには、キラキラの宝石や札束が袋いっぱいに詰まっていた。
「船長!!」
いまいち、状況が掴めていなかったとき、船内から一人の団員が息を切らせて出てきた。
「大変です!宝物庫が荒らされ、一部の金品が無くなって・・・って、あ~!それ!」
団員が指さす先には、ヒヨが持っている財宝が・・・。
「・・・あは☆」
ヒヨがウインクして首を小さく傾げる。その顔は、「やっちゃった☆」という感じだ。
「~ふざけんなよ、こらー!」
「恩を仇で返す気か~!」
「何が、あは☆だ!」
「ごまかされねぇぞ!」
『Blue sky』の団員たちが口々に文句を言うなか、ヒヨは笑いながら手をヒラヒラさせている。
「ごめんごめん。だって財宝の在処がわかってるのに指をくわえてみてるだけなんて、海賊として駄目でしょ?大丈夫!価値が低そうな物しか選んでないから!」
「そういう問題じゃねぇよ!」
「そうだ!そうだ!」
団員たちの声を聞きながら、『crimson』の様子を見ていたレドたちのところに、先程宝物庫の報告をしに来た団員が近寄ってきて、折り畳まれた紙を差し出してきた。
「これ、宝物庫のドアに挟まってたんですけど」
「なに?」
レドはそれを受け取り、中の文字を読み始める。幹部たち、双子も覗き込む。
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『Blue sky海賊団』のみなさんへ
短い間だったけど、お世話になりました。
ずっと、騙すようなかたちになってしまってごめんなさい。
情報鳥は、あたしが勝手に使わせて貰ってました。
仲間にあたしの場所を教えるために・・・。
今まで来ていた新聞は、あたしの使っていた部屋の机の裏に隠してあります。
あと、財宝を少し貰っていきます。ごめんなさい。
ここでの生活は、本当に楽しかったです。ありがとう。
お互い、いつどうなるかわからない人生ですが、この広い大海原で
いつかまた会えることを楽しみにしています。
『crimson海賊団』船長ソレイユ=ホロセレサ
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「ヒヨ・・・ん?」
フィーが、目を少し潤ませる。しかし、まだ続きがあることに気付き、目を向ける。
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P.S サウスタウンでウォールティに気付かれたので、
仲間と思われたかもしれません。
ちなみに、あたしはウォールティの隊から逃げてきたから、
そのことを根にもってるかも・・・。ごめ~んね☆
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グシャッ!
手紙を読んで固まっていたフィーたちは、その音にハッとして音の方を見る。
そこには、手紙を握りつぶしているレドの手があった。
「あの女ぁ《あま》~」
レドは、手紙を投げ捨て走り出すと、船から飛び出し、『crimson』の船へ飛び移った。その顔は、笑っているが、目つきは鋭く、獲物を狙う狼のようだった。
出航しようと準備を始めていた『crimson』のメンバーは、突然の来訪者に目を見開く。
ヒヨは財宝をアルに渡すと、懐から短剣を取り出し、レドからゆっくり距離をとった。
「随分なことしてくれたみてぇじゃねぇか」
「あれ~?どんな事になろうと覚悟の上でおいといてくれたんじゃなかったけ?」
「それは不可抗力の場合だ。お前自身が考えて動いた場合は話が違う」
レドは、その場を動かず怪しい笑みを浮かべたまま言った。その威圧感に、ヒヨは怯みそうになる足を必死で踏ん張る。
「それは残念。というか、レドをこの船に招いた覚えはないんだけど?」
「海賊がそんなの気にするわけないだろ。それに・・・」
今まで動かなかったレドは、腰の剣を抜き、一歩踏み出して構えた。
「宝が奪われていくのを、大人しく指をくわえて見てるわけにはいかないだろ?」
レドはニヤリと笑い、一気にヒヨと距離をつめ、剣を一閃させた。
ギリギリで避けたヒヨは、距離をとろうとしたが、レドはそれを許さずどんどん攻めてくる。ヒヨは短剣で防ぎつつも、隙をついては攻撃にまわる。どちらもギリギリでかわし、致命傷にはならない。このまま長期戦になれば、体力的にヒヨが不利だろう。しかし、二人の戦いはそう長く続かなかった。『crimson』の船が動き出したのだ。
「そろそろここから出ないと、向こうに帰れなくなるよ?」
ヒヨは、ニヤニヤしながら言った。レドは、忌々《いまいま》しそうにヒヨを見ると、舌打ちして身を翻した。
そのことに安堵していたヒヨは、目の前を剣が過ぎ去ったことに反応しきれず、頬が小さく裂けた。慌てて前を見ると、こちらを振り返り、剣を握っているレドがいた。その顔は、先程と違い勝ち誇っていた。
「ざまぁみろ」
レドは、一言残して今度こそ船から出ていった。
自分の船に戻ったレドに、団員たちが寄ってきて安否を確認してくる。それに対して、何ともないと返せば、後ろから「女の顔に傷を付けるなんてサイテー!」とか「悪魔ー!」とか聞こえてきた。
「どっちが悪魔だ」
レドの言葉に、みんなは苦笑し肯いた。そして、レドの表情を見た団員たちは、全くこの人は・・・と、呆れつつやはり苦笑せずにはいられなかった。
最後にレドにしてやられたヒヨは、悔しそうに『Blue sky海賊団』の船を見ていた。
「ソレイユ、大丈夫?」
後ろから、シンが声をかけてきた。
「あ、うん、大丈夫。みんな、心配かけてごめん。迎えに来てくれてありがとう」
「当たり前だろ!お前は船長で、この船に必要な奴なんだからな!」
「それに、私たちを庇って捕まったのに、放っておくわけにいかないじゃない」
「アル、レェナ」
「と、言っても海軍から助けてやれなかったがな」
ディエスが悔しそうに言う。それを聞いて、ヒヨは首を左右にふり、穏やかに笑う。
「ううん、みんなは良くやってくれた。あれが最良の行動だったと、あたしは思うよ」
『crimson』のメンバーは、その言葉になんとも言えない顔をした。その中で、みんなの良き相談相手であるレオが出てきて、ヒヨに手を伸ばした。
「とりあえず、先に怪我の手当をしましょう。他に怪我は?」
「ありがとう、レオ。他は大丈夫。『Blue sky』の船医さんが治療してくれたから」
ヒヨが嬉しそうに答えると、シンは眉を寄せた。
「ソレイユ、報告は受けてたけど、向こうで何もなかった?変なことされなかった?」
「大丈夫だったよ。むしろすっごく良くして貰った。財宝貰ってきたのが悪いと思えるくらい」
「ソレイユがそんなこと思うなんて、よっぽどね。やっぱり、いい男がいる船は良い船ね!」
レェナの言葉に、睨むアル。そんないつもの風景に、呆れた顔をするシン、レオ、ディエス。その様子を見て、帰ってきたんだなと実感したヒヨは、空を見上げた。
今日も雲一つない晴天だ。
「よし!さぁ、みんな!次の陸地に向けて出発!」
「「「「「はい!」」」」」
ヒヨは、限りなく続く海の先を見る。その視線は、新たな地を夢見ているのか、はたまた、賑やかだったとある海賊団に思いをはせているのか、それとも他のことを考えているのか。それは、本人にしかわからないが、その目には不安も後悔もなく、期待に満ちたものだった。
*To be continued*