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未来の失敗が見える子供は、全部避けて進む ~一歩ずつ間違えない選択が、世界を変えていく~  作者: 黒川レン


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第20話 対等な敵

 応じる。


 だが、そのままでは行かない。


 そう決めた瞬間、やるべきことは一つに絞られた。


 “準備”だ。


 馬車は王都の大通りを進んでいる。


 人の波。

 音の洪水。

 色の多さ。


 すべてが地方とは違う。


 だが――


 その中に、明確に異質なものが混ざっている。


 さっきの男。


 視線を外さない。

 隠さない。

 逃げない。


 そして――誘ってくる。


 あれは、今までの敵とは違う。


 “仕掛ける側”ではなく、“待つ側”。


 つまり――


 同じ土俵に立っている。


 僕は静かに息を吐く。


 いい。


 やっと来た。


 “話が通じる敵”だ。


「どこへ向かう」


 父の声が落ちる。


 短い。


 だが、選択を問う声だ。


 僕は視線を動かす。


 さっきの男がいた方向。


 そして――


 その先。


 通りの奥にある建物。


 人の出入りが多い。

 だが、ただの店ではない。


 流れがある。


 集まる場所。


 情報が集まる場所。


 僕はそこに視線を固定する。


「……あそこか」


 父が呟く。


 理解が速い。


 いい。


 話が早い。


「寄るぞ」


 決定だ。


 馬車がゆっくりと方向を変える。


 流れに逆らわず、自然に。


 だが――


 その変化は、確実に“見られている”。


 視線が増える。


 さっきの男だけではない。


 周囲の何人かが、明らかに反応している。


 いい。


 反応するということは――


 繋がっている。


 僕は目を細める。


 断片と照合する。


 まだ見えていない。


 だが、近い。


 確実に。


 建物の前で馬車が止まる。


 看板はない。


 だが、分かる。


 ここは――“選ばれた人間が来る場所”だ。


「降りる」


 父が言う。


 護衛が動く。


 配置を変える。


 緊張が一段上がる。


 だが――


 それでいい。


 ここは、そういう場所だ。


 扉が開く。


 中は静かだった。


 外の喧騒が嘘のように。


 音が少ない。


 視線だけがある。


 いくつも。


 だが――


 その中で、一つだけ違う。


 正面。


 椅子に座っている男。


 さっきの男だ。


 動かない。


 逃げない。


 ただ、待っている。


「来たか」


 男が言う。


 軽い。


 だが、芯がある。


 僕はその声を聞いた瞬間、理解した。


 こいつは――


 “読む側”だ。


 未来ではない。


 状況を。


 人を。


 流れを。


 読む。


 だからこそ、逃げない。


 だからこそ、誘う。


 父が一歩前に出る。


「誰だ」


 短い問い。


 だが、意味は重い。


 男が笑う。


「名乗るほどでもない」


 軽い返し。


 だが、逃げていない。


 余裕がある。


 つまり――


 勝てると思っている。


 あるいは、負けないと確信している。


「だが――」


 男の視線が、父から僕へ移る。


 完全に。


 迷いなく。


「そっちは、面白いな」


 来た。


 認識された。


 完全に。


 隠れられない。


 それでいい。


 むしろ、望んでいた。


 僕は視線を合わせる。


 逃げない。


 ただ、それだけ。


 男の目が細くなる。


「……なるほど」


 小さく呟く。


 何かを理解した顔。


 だが、完全ではない。


 そこが重要だ。


 読まれている。

 だが、全部ではない。


 まだ勝てる。


「何が目的だ」


 父が問う。


 男は笑う。


「簡単だ」


 そして――


 ゆっくりと指を鳴らす。


 その瞬間。


 空気が変わった。


 周囲の視線が動く。


 配置が変わる。


 出口が塞がれる。


 完全な包囲。


 だが――


 遅い。


 それはもう、予測済みだ。


「試したかっただけだ」


 男が言う。


 軽く。


 だが、その目は真剣だ。


「どこまで読めるのか」


 対話だ。


 これはもう、戦闘ではない。


 “勝負”だ。


 頭で。


 僕は静かに息を吐く。


 いい。


 求めていた形だ。


 そして――


 ここで終わるつもりもない。


 僕は、ゆっくりと視線を動かす。


 男の手。


 机。

 椅子。

 そして――


 床。


 ほんのわずかに、違和感がある。


 位置がずれている。


 罠だ。


 この場にも、仕込んでいる。


 つまり――


 こいつは“二重で仕掛ける”。


 それが分かっただけで、十分だ。


 僕は視線を戻す。


 男を見る。


 そして――


 ほんのわずかに、口元を動かす。


 音はない。


 だが、形で伝える。


 「――浅い」


 男の目が止まる。


 一瞬。


 だが、確実に。


 初めてだ。


 揺れたのは。


 いい。


 通じた。


 対等だ。


 完全に。


 その瞬間。


 男が、わずかに笑った。


「……いいな」


 低い声。


「これは、面白い」


 評価だ。


 敵からの。


 そして――


「また会おう」


 そう言って、立ち上がる。


 止める前に。


 気づいた時には、もういない。


 消えている。


 完全に。


 だが――


 追う必要はない。


 分かったからだ。


 こいつが、“軸”の一つだと。


 僕は静かに息を吐く。


 次の戦いは決まった。


 王都で。


 こいつと。


 そして――


 その上と。

ついに「対等な敵」が現れました。


ここからは今までのような一方的な対処ではなく、

“読み合い”が中心の戦いになります。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

もし面白いと感じていただけたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。


次は――王都での本格的な駆け引きが始まります。

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