元旦と元日
日付が変わっただけなのに、朝の空気は昨日とは少し違って感じられた。
「あけましておめでとうございます」と口にしながら、私はそれがいつまで有効なのかを考えていた。
元日。「時間の更新」を司る特別な日である。
まずは、元旦という字について考えてみたい。元旦と元日は混同されがちだが、本来は意味合いが異なる。「旦」という字は、地平線から日が昇るさまをかたどったものだ。その造形はまるで一枚の絵のようで、言葉そのものに意味を託してきた文化の感性を思わせる。
つまり、元旦とは一月一日の「朝」だけを指す言葉である。そう考えると、元旦という語は少し使いづらい。元旦の初詣とは、いったい何時までのことを言うのだろうか。
神社では、年神様がその年の運命を定めるとされている。門松や鏡餅はその依り代であり、参拝とは、年神に向かってその年の「自分がどのようにあるか」を報告する行為だ。本来それは、荒唐無稽な願いを思いつくままに並べ立てる場ではない。
普遍的で凡庸な日常に対して、凛と背筋を正し、「ここから始め直す」と宣言する。その行為が意味を持つのは、日本全国の人間が揃ってそう信じているからだ。誰にも見られない独白は、神に届く前に自分の中で消えてしまう。誰もが行うからこそ、この儀式は成立する。
ある意味で、元旦とは「制度化された希望」であり、「忘却が許された日」なのだろう。これまでのことはいったん去年に置き、これからの在り方を思い描くための一日である。
本来は朝だけを指す元旦も、今では元日とほとんど区別されずに使われている。それは正確さよりも、共有される感覚のほうが、この日には重要だからだろう。
それが、元日なのである。
今年も何卒、よろしくお願いします。




