エクリプス=ヴァルティシア
地は荒れ果て、かつて楽園と呼ばれた幻想郷は、今や歪んだ時空の中で朽ち果てようとしていた。赤黒い裂け目が空を引き裂き、世界の法則は軋みながら崩れていく。
その混沌の中心に立つのは、一人の男――逆審ドゥルガ。
「始めようか……この世界を、再びカオスへと堕とそうではないか。
【エクリプス=ヴァルティシア】通称、混沌者 は、12名ほどで結成されている、彼らの目的は、混沌をもたらし、再び、世界に破滅を。
低く響く声が、大地を震わせる。その言葉に呼応するかのように、辺りの虚空が揺らめき、暗黒の渦が生まれた。
円卓に十二の席があり、見下ろすように高い位置に玉座がある。12名が座る
第一席──《絶氷の白翁》グラン・ビルドル
「……おぬしら前より荒れてるな」
白銀の魔導王。大気を凍らせる究極の魔術師。氷の力を肉体に宿す。【氷理】
第二席──《焔獄の覇王》煉王アモン・グラギオル
「人間ごときにボロボロにされるとは、情けない。なぁニルよのぉ」
煉獄の業火を纏う、赤き角が生えている。紅い肌。地獄こそが彼の理。【獄理】
【理とは、神々や強大な存在が持つ"絶対的な法則"のこと。
それは単なる魔法や能力ではなく、宇宙に刻まれた摂理そのものであり、持つ者の意志により発現する。】
理を持つ者は、一つの真理を掌握し、それを現実に具現化する力を持つ
理は法則を超え、時には因果すら書き換える力を発揮する。
同じ属性を操る者でも、理を持つ者と持たざる者では次元が違う。
第三席──《天使の救愛者》奸臣ニルハイナ
「.....はぁ」
小さくため息をついた
天使であり神に仕えた策謀の化身。今は、白き羽が2枚になっている。いまだ、傷が癒えない。
第四席──《天衝の雷鳴》照天震ハーラー
「今日も俺様はかっこいいなぁ!!」
神の血を引く雷鳴の破壊者。天空の審判を下す存在。彼も、また天衝の理を持っている。【天理】
第五席──《奈落の獣王》冥獄バルガスラ
「今すぐ、滅ぼしたいわい!!なぁ我が信徒ども」
奈落より生まれし獣王。魔獣の軍勢を従え、死を撒き散らす。そして、彼も、奈落と獣の理を持っている。【獣禍理】
第六席──《朽ち果ての黄昏》陀森ヒテンコウライ
「……ワレ、枯レルマデ……喰ラウ……吸イ尽クス……」
木と呪詛の化身。歪んだ生命の理を操る森の異形。己が満たされるまで吸い尽くす。この異形は、森羅の理を。【森理】
第七席──《禍ツ百足》蟲神ゼ=ゾルヴァ
「かつての友の願い、ようやく...」 無数の蟲を束ねる神。漆黒の外骨格に覆われた異形の存在だ。鋭利な甲殻は闇に溶け込み、どんな光も吸い込むかのように鈍く輝いている。
その身体を包む黒いマントは、不気味なまでに滑らかで、生き物のように揺らめく。それはまるで、己の姿を晒したくないかのように、ゼ=ゾルヴァの全身を隠していた。花と蟲生命の根源たる力を持っている。【百理】
第八席──《終焉の白蛇》蛇龍ザルヴァ
「われの野望は、すべての竜を食い尽くし、そして始祖を超える存在となるのじゃ。フハハハハ!!」
すべてを喰らう龍。白蛇の瞳に映った者の運命は狂い始める。同族を喰らい続け、白蛇の理を得た。
【吞竜理》】
第九席──《堕ちた悪魔》堕天魔ギルダラ
「英雄の皆さんだぁぁすげぇ...」
堕ちた天使の宴。終わることのない絶望を奏でる。堕ちた代償に、理が消え、三つの称号に力を持たせた。
第十席──《????》????
「…………」
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第十一席──《微睡の幻想姫》慈悲楽カッカマ
「子供たちは、どこかへ行ったようだけど?」
魔女と妖精の血を引く妖魔の少女。最弱ながら、想像と再花の理を持つ。
カッカマの言葉に、反応したのは、これらを統べる【逆審ドゥルガ】が僅かに笑う。
「構わん。野望の成就には最低でも五年。たった五年でどうにかできるほどの力を、あの者たちが持つとは思えん。」
そう言いながら、彼は黒に染まる玉座にゆっくりと腰を下ろす。その双眸は闇よりも深く、何かを見据えている――いや、すでに未来を見通しているのかもしれない。
彼の視線の先にあるのは、希望か、破滅か。それはまだ、誰にもわからなかった。
ドゥルガは静かに立ち上がった。混沌の玉座が微かに軋む音が、静寂の中に響く。
「神託が下った。」
神託一
「駒を集めよ。目的に向かって進め。」
神託二
「月と太陽の神殿を探し出せ。。」
神託三
「目覚めし者を討て。それは最古の存在、世界を揺るがす。」
神託四
「遺物を手に入れよ。それこそが新たなる力を得る鍵となる。」
その言葉に、混沌者たちは一斉に顔を上げる。
「頼んだぞ・・・もう失敗は許されない」
その言葉と同時に、闇の中から影が揺らめき、次々と跪いた。彼らは皆、ドゥルガの命を待つ者たち――闇の使徒たち。そして、虚空に消えた。
開口一番、煉王アモンが角を弄びながら言った。
「誰が、どの神託に従うかは置いといてだのぉ、再び、お前たちに会えたこと、腹から喜ばしいのぉぉ」
その声は、炎が爆ぜるような熱を孕んでいた。
彼の角は禍々しくねじれ、燃え立つような輝きを放っている。黄金と紅蓮が混じり合い、まるで生きた炎のごとく揺らめいていた。
アモンの口元が裂けるように笑みを形作る。
「さて――この再会を、祝うべきか、それとも、血で染めるべきかのぉ?」
カッカマが、まるで風に運ばれる羽のように軽やかに歩みを進めた。煉王アモン・グラギオルの真横を、まるでそこに何もないかのように通り過ぎる。
アモンの赤き瞳がわずかに細まるが、カッカマは振り返ることすらしない。まるで最初から視界に入っていなかったかのように、無邪気な笑みを浮かべながら、ニルハイナの前でぴたりと足を止めた。
「ねぇ、ニル姉さま。まだ痛む?」
小さな手が、傷の残る白き羽へとそっと伸びる。
場違いとも思えるほど、屈託のない笑顔。
ニルハイナは少し驚いたように瞬きをした後、微笑んだ。
その笑みには、どこか儚げな優しさが滲んでいる。
「えぇ、大丈夫よ。」
カッカマはその言葉を聞くなり、嬉しそうにニルハイナの手を握る。
カッカマが微睡むような声で言った。
「ねぇ、ニル姉さま。ちょっといい場所があるの。行ってみない?」
ニルハイナが返事をするよりも早く、カッカマはふわりと微笑み、そっとその手を取る。白く細い指が空をなぞると、周囲の景色が揺らぎ、淡い光の粒が舞い踊る。
そして、まるで幻のように──二人の姿は、静かに消え去った。
煉王アモンは角を弄ぶ手を止め、ニヤリと笑った。
「むぅ…俺様の愛の言葉が聞こえなかったかのう?」
誰に向けたものなのか分からぬ問いかけだったが、周囲の者たちは誰も応えない。
グラン=ビルドルは白いひげを触りながら、静かに息を吐き、アモンを一瞥する。
「おぬしの愛とやらは、いつもながら歪んでいるな。」
アモンは大げさに肩をすくめた。
「ほう? ならば、もっと甘美に囁いてやろうかのぅ?」
その言葉に、場の空気が一瞬だけ揺らいだ。
しかし、それ以上の戯れは必要ないとばかりに、蛇龍ザルヴァラが淡々と告げる。
体中に白蛇を纏う蛇龍ザルヴァラは、静かに周囲を見渡し。
「俺は勝手に動かせてもらう。もし、邪魔するならばここで殺す」
低い声で言い残すと、彼は無数の蛇に包まれ、そのまま闇へと消えていった。
グランは穏やかに白い髭を撫でながら、重々しい言葉を吐いた。
「ふむ、あやつなりになにか考えておるのじゃろ。そう、苛立つでない、アモンよ。」
アモンは舌を打ちながら、面倒くさそうに肩をすくめて言った。「ちぇっ、相変わらず蛇のように孤高を気取るのう。」
その言葉にグランは軽く笑みを浮かべ、じっとアモンを見つめた。「孤高も、時に役に立つのじゃ。貴様のように突っ走るだけでは、何も得られんぞ。わしらでじっくりと話しあおうじゃないか・・・」
アモンは眉をひそめながら、無言でグランを見返す。その目には、火花のような激しさが宿っている。だが、すぐにアモンは目を逸らし、荒っぽく言った。
「モンは深いため息をつき、手をひらひらと振って言った。「...ふぅ、貴様の言うとおりだのぉ、じゃあのぉ、新人のギルちゃんに任せようかのぅ。」
その言葉を受け、若干身長150センチほどの少年が堂々と姿を現した。漆黒の翼を広げ、その背はまるで夜の闇そのもので、周囲の空気が少しひんやりと冷たく感じる。その名は、堕天魔ギルダラ彼は一歩踏み出し、焦ることなく堂々とした姿勢で言った。
「勝手ながらご指名させていただきます。神託1はアモンさんとグラン殿、神託2は...」
その言葉が続くことなく、冷ややかな声がそれを遮った。
「私が行こう...」ゼ=ゾルヴァが、花を嗅ぎながら、呟いた。 彼の表情は、俺一人で十分だ、そう感じさせる...
ハーラーはバンッと机を叩き、勢いよく立ち上がった。
「おうおう! なんか楽しそうな神託独り占めしてんじゃねぇ!俺も行くぜ!」
ゼ=ゾルヴァはゆっくりと花を嗅ぎながら、「むぅ」と興味深そうに目を細める。
「つまんねぇなぁ!駒集め?退屈!面倒くせぇ!」ハーラーは大げさに腕を振りながら叫ぶ。「けどよ!最古なるものだぁをぶっ倒す!?そりゃあ最高に燃えるじゃねぇか!」
アモンが呆れたように「相変わらずバカだのぉ」と吐き捨てるが、ハーラーはまったく気にしない。
「それにな!もしかしたら、美しい巫女や女神様がいるかもしれねぇだろ!?そんでもって、俺に惚れちまうかもしれねぇ!そしたら最高じゃねぇか!」
グランが「はぁ…」と深い溜め息をつく。「相変わらずじゃな…」
ゼ=ゾルヴァはクスクスと笑い、「なるほど、それが貴様の"高尚なる理由"か」と皮肉げに言う。
「そういうことだ!」ハーラーはドンッと胸を叩き、大きく笑う。「よし!決まりだな!俺とゼ=ゾルヴァで暴れに行くぜぇ!
ゼ=ゾルヴァは無感情に花の香りを楽しんだ後、淡々とした声で返す。「我々は何も求めていない、ただ必要なことをするまでだ。」
「それでは、神託二はゾルヴァさんとハーラーで決定ですね。神託三は……ヒテンさん。神託四はバルドガスさんと私が同伴します。」
陀森ヒテンコウライは、ゆっくりと身体の幹を軋ませた。まるで大地そのものが呼吸するような音が、静寂の中に響く。
「……コオォ..」
「よろしく頼むよ、ギルダラ」「はい!!」
「よっしゃァァ!! そろそろいい女でも探しに行くかァァァ!! 雷と恋は、激しく燃え上がるもんだろォ!? ハハハハ!!」
勢いよく雷が弾け、彼の周囲に火花が散る。その目はギラつき、どこか楽しげに輝いていた。
火花にょうに
ゼ=ゾルヴァと共に消えた。
ギルダラが、黒い翼を広げる。
「では、私たちも、私につかまってください。」
バルガスラは瘴気を指先で弄びながら、目を細めた。
「うむ、これでよいか」 闇の渦に飲み込まれ消えた。
「・・・・・」
誰もいなくなった玉座の間に、静寂を裂くような声が響いた。
「――愉快な奴らじゃのう。グランよ、いや、忠実なる僕よ。」
その声に即座に反応したのは、煉王アモンの使徒「七獄(セブン=ヘルズ)」の一人、灰瞳のオルガ(かいどうのオルガ)。
かつて白いローブを纏い、長い白髭を蓄えていたはずの男。しかし今、そこに立つのは全身白のスーツに赤い紋様が浮かび上がる、赤髪の180センチの青年。その瞳は灰色に濁り、冷ややかな光を放っていた。彼の纏うオーラは、地獄の王アモンのそれとは正反対の、不気味な静寂を孕んでいる。
薄気味悪い白い男が、不遜な笑みを浮かべながら問いかける。
「どうされますか、王よ?」
アモンは玉座に深く腰掛けたまま、鋭い瞳でオルガを見下ろした。
「お前は神託を遂行しろ。俺は或るものを探す。」
「或るものとは?」
その瞬間、オルガの脳内に像が浮かび上がった。血のように赤い月、砕け散る神殿、そして、まばゆい光を放つ"何か"。
「なるほど……面白くなりそうですね。」
オルガの唇が不敵に歪む。まるで、獲物を前にした飢えた獣のように――。
物語は、すでに動き出している。