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現人神さまの最愛の妹君

作者: 下菊みこと
掲載日:2024/02/27

可愛い可愛い妹は、プーレは、とても幼い。


いつまで経っても可愛らしくて、小さくて弱くて俺がいなければ生きてもいけない。


「プーレ」


「…はい、兄様」


そんなプーレをいつも甘やかしてしまうのだけど、今日は少しお説教が必要かもしれない。


「いつも言っているでしょう。あまり兄様を困らせてはいけないよ」


「でも、でも…」


「それを出して」


プーレはおずおずと背に隠した信者からの贈り物の花を差し出す。


「いい子だね、プーレ」


これは、身体の弱く外に出られないプーレを想い男が贈った花。


汚い欲を隠した、綺麗な花。


「プーレは、こんなものいらないよね?」


「えっと、えっと、兄様…」


「ね?プーレ」


優しく微笑んで小首を傾げれば、プーレはおずおずと頷く。


可愛い子。


兄様である俺が守ってあげないと。


花はプーレの目の前で塵籠に入れてあげた。


悲しそうなプーレを横抱きにして布団に戻す。俺も共に布団に潜った。


「あんなものでいいのなら、今度兄様が持ってきてあげる」


「でも、でも信者の方が心配してくださったのが嬉しくて…」


ああ。


可愛くて可哀想なプーレ。


自分が邪な気持ちを抱かれているなど気付かずに、ただ純粋に表向きの想いだけを受け取ってしまって。


「お前が気にする必要はないよ」


「…はい、兄様」


頭を撫でれば、そっと目を閉じるプーレ。


可愛い。


「さあ、身体を少しでも休めないとね。おやすみ」


「…はい、おやすみなさい兄様」


同い年だというのに俺よりよほど弱く出来の悪いこの小さな子を、俺は生涯をかけて守るのだ。













俺が五歳になり、神として祀り上げられた時に親無し子である彼女が贄として捧げられた。


同い年の五歳児らしい。


だというのに俺より小さくて、細く、そして傷だらけで死にそうな目をしたその子。


ああ、可哀想に。


俺は与えられたその子を殺すことも隷属させることもなく、ただただ優しく抱きしめた。


「う…あ…」


「ああ、まともに言葉も話せないんだね」


頭を撫でる。


信者どもの制止も振り切り、可愛いその子を風呂に入れてやる。


綺麗な服を与えて、美味しい食べ物を与える。


そして俺は宣言した。


「これは俺への供物だからね。俺の好きにするよ…この子は俺の庇護下におく。いいね?」


信者たちの動揺は見て取れたが、俺に逆らえるわけもなく。


結局彼女は俺の庇護下に入った。


妹、という立場を与えた。


プーレ、という名前を与えた。


言葉すら知らない彼女に、少しずつ知識を与えた。


「プーレ、兄様が好き?」


「はい、兄様…」


愛を与え、傷を癒し、教団から外に出さないようにして。


栄養を与えたので肉がつき、知識を与えたので言葉も喋り、思ったよりよほど綺麗な声で俺を兄様と呼ぶようになったお前。


でも、長期間栄養失調のまま生きてきたお前は身体が弱くて。


…正直、俺の力で、癒力で治してあげられるのだけど、そんなことをしたら、お前はすぐにどこかに行ってしまう気がして。


お前を籠の鳥にした。


「兄様、くすぐったい」


「ふふ、我慢だよ」


五歳児のプーレは一人で風呂は難しいだろうと、俺が風呂に入れてやる。


俺も五歳だけど。


「兄様、もうおトイレできるようになったよ」


「うん、でも粗相をしてしまうといけないからまだ見守ってあげるよ」


トイレトレーニングもしてあげた。


できるようになってもしばらくは付き添ってあげた。


「兄様、自分で食べられるよ」


「そうだね。でも手ずから食べるお前が見たい」


五歳児のこの子に、手ずから食事を与える。


小さなお口が可愛くて。


「兄様、おやすみなさい」


「うん、おやすみ」


添い寝もしてあげる。


普段遠慮がちなプーレだが、夜寝るときは俺にしがみついて離れない。


…可哀想に、家族で寝ていた時に両親が目の前で惨殺されたらしいからね。


前の名前すら思い出せないのに、そんな記憶ばかりを残してしまって。


けれどそんなお前が好きだよ。


でも、お前は最近…十八歳を過ぎた辺りから反抗期になったね。


「兄様、お風呂は一人で入りたいの…」


「だめだよプーレ。兄様を困らせてはいけないよ」


「でも…」


「お前は身体が弱いのだから。一人で風呂に入って、そのまま溺れたらどうするの?」


「それは…」


女の身体になった辺りから、二人でのお風呂をイヤイヤするようになってしまって。


悪い子だ。


まあ、俺が諭せばわかってくれるけれど。


「あのね、兄様…さすがにおトイレの前に見張りがいるのは嫌なの…」


「だめだよプーレ。もし悪い男に押入られたら困るでしょう?」


「う、うう…」


見張りといっても、俺の守護獣だし恥ずかしがることはないのに。


恥じらう姿も愛らしいけれど、ダメなものはダメだよ。


「兄様、お食事はあーんしなくても…」


「どうして?こうして過ごす時間が兄様の幸せなのに」


「うう…」


手ずから食事を与えるのが幸せなのに、最近はイヤイヤする。


何故?


「さあ、そろそろ寝ようか」


「兄様、あの…」


「うん?」


「お布団、二つ欲しいの…」


「…でもお前、俺にしがみついてないと眠れないよね」


聞いてやれば黙り込む。


ねえ、最近どうしちゃったの。


女の身体になったくらいで、なんで兄様への態度を変えるの。


…女になったから?


俺が男だから?


…そっかぁ、意識してくれてるんだね。


俺の可愛いお前。


…ならば、新しい立場を与えてあげようか。













信者たちを集めた。


プーレを隣に置く。


「…さて、今日は重大な発表があるよ」


プーレは喜ぶだろうか。


驚くだろうか。


…拒絶なんて、あり得ないよね?


「プーレは今この時より、俺の妹ではない」


プーレを溺愛していた俺の突然の宣言に、信者たちに動揺が広がる。


何故かプーレは、少し安心した表情。


…そっかぁ、やっぱり妹の立場を捨てたかったんだね?


新しい立場を、欲しかったんだね。


「プーレは俺の贄、俺の供物。プーレは、俺のもの。であれば、どうしようと俺の勝手。そうだよね?」


信者たちに同意を求めれば、誰も彼もに頷かれた。


プーレは戸惑った顔。


「だから、プーレには新しい立場を与えてあげることにした…俺の、嫁。神の嫁として娶るよ」


プーレは目を見開いて体を震わせる。


信者たちは、大声をだして万歳万歳と喜んだ。


俺が嫁を取ろうとしなかったから、みんな心配していたから。


そりゃあ、祝福するよね。


で、なんでプーレは震えているのかな?


兄様が抱きしめてあげようね。


「に、兄様…」


「プーレ、大丈夫だよ。兄様が守ってあげるからね」


優しく抱きしめた。


プーレは泣く。


嬉し泣きかな?


「お前は俺のものだよ」


「うっ、うう…」


「最初から…わかっていたこと、だったよね?」


「うう…」


可愛いな。


…供物として捧げられた時点で、俺から逃げられるわけがないのに。


でも、その分幸せにするよ?


どんなものでも与えよう。


自由以外はね。


ね、いいよね?


俺の可愛い妹よ。


…ああ、もう妹ではないのだった。

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― 新着の感想 ―
[神の子扱いされている優しい義兄に気を遣っていたら、なんか執着されました]の、悪化版みたい。 でも正直こっちのほうが好きかもしれない…
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