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第44話 サイレントとアリア、昨晩の事件の整理をする

前回のあらすじ


 サイレントとアリア、双子の武器の強さを知る。

 サイレントとアリア、双子に事件当日のことを訊く。



 


「あれ? でも、ちょっと待って。ムーとジュンどちらも人狼だったら、犯行は可能なんじゃない?」


「僕たちが人狼ってどういうことなんだよ?」「僕たちが人狼ってどういうことなんだね?」


「人狼は人に化けることができるんだよ。だから、結界に反応するのが、ムーとジュンの魔力だとしたなら、人狼の姿に戻ったら無反応でしょ?」


「確かに、僕たちが人狼なら無反応のはずだよ」「確かに、僕たちが人狼なら無反応のはずだね」

 うん、そうだよね。

 さすがボク。


「師匠、それはないデス。人狼は一人デスから、両方とも人狼ということはないはずデス」

 あ、そうだった。


「それなら、片方だけが人狼かもしれないよ。一人でいるときに人狼と成り代わってさ」


「それはないよ」「それはないね」


「ないってどういうこと?」

「生まれてこのかた、二人でいつでも同じ行動をしているんだよ」「そうそう、生まれてこのかた、同じ行動をしているんだね」


「一瞬も離れてないの?」

「そうだよ。だから、一人行動をしていないんだよ」「そうだね、一人行動はしていないんだね」


「食事も?」

「そうだよ」「そうだね」


「トイレも?」

「そうだよ」「そうだね」


「寝てる時は?」

「ハグしながら寝ているよ」「ハグしながら寝ているね」

 ムーとジュン、双子とはいえ、仲良すぎじゃない?

 でも、まあ双子だし、そんなものなのかもしれないな。


「もしも、二人の言っていることが正しければ、二人は白デスね。人狼は一人しかいないんデスから、一人だけ成り代わることはできないはずデス。それに、そもそも、ほぼ同時刻に村長の偽物が出てきているんデスから」


 あ、そうだった。

 村長のことを忘れていた。

 まずい、このままだとアリアにバカだと思われる。


「ボクもムーとジュンは最初から怪しくないと思っていたよ。ただ、あらゆる可能性を検証しないといけないからね」

 ボクは自分のあごに拳をあてて、低い声でかっこつけた。


「さすが、師匠デス」

 ふー、なんとか誤魔化せたぞ。

 よし、このまま話題を変えれば、ボクのミスはなかったことになるはずだ。


「村長の腕輪が盗まれた時、何か気になったことはある?」

 ボクは話題を変えるために質問をする。


「お兄さんの質問が気になるよ」「そうだね、お兄さんの質問が気になったね」

「ボクの質問?」


 あれ? なんか、ボク変な事聞いちゃたかな?


「そうだよ。だって、盗まれたのは村長の腕輪だけじゃないんだよ」「そうだね、盗まれたのは村長の腕輪だけじゃないからね」


「何だって? 村長の腕輪だけがなくなったんじゃないの?」

「違うよ、村長の遺体が丸ごとなくなっていたんだよ」「そうそう、村長の遺体が丸ごとなくなっていたんだね」


「それは本当?」

「本当だよ」「本当だね」

 話しが違うじゃないか、副村長。


「師匠、村長に恨みのある誰かが、村長の遺体を辱めようとして、盗んだ可能性が出てきたデス」

「うん、その可能性もでてきたね」


「ところで、副村長は遺体を丸ごと盗まれたことを何で言わなかったんだろう?」

「副村長、怪しいデスね」


「確かに怪しいね」

「村長のノリに一番ついていけないのは、副村長で、村長の尻ぬぐいをしていたのは副村長だったはずデス」


「あ、そっか。人狼の騒動に乗っかって、遺体を盗んだ可能性もあるね」

 村長に対して私怨があってもおかしくない。


「ここに来たのが副村長なら、すぐにわかるよ」「そうそう、ここに来たのが副村長ならすぐにわかるね」


「どうしてさ?」


「だって、副村長は足が遅いから、墓荒らしで村長の遺体を持って逃げたりなんかしたら、すぐに追いつくからだよ」「そうそう、副村長は足が遅いから、僕たちが追いつけないなんてことないね」


 確かに、あの恰幅で村長の遺体を担ぎながら早く動くのは難しそうだ。


「あー、わけが分からなくなってきた」

「考えれば考えるほど分からなくなる、思考の罠デスね」


「おーい、ムーとジュン、交代の時間だぞ」

 遠くで老人の声が聞こえた。


「質問がないなら、もういいかな? そろそろ、墓守の交代の時間だよ」「本当だ。交代の時間だね」


「うん、ありがとう」「ありがとうございましたデス」

 ボク達は双子にお礼を言うと、墓場から立ち去った。



「師匠、この後はどうするデスか?」


「うーん、そうだなー。宿屋に戻る道すがら、昨夜の出来事をちょっと整理してみる?」

「そうデスね」

 ボク達は誰もいない道を、歩きながら念のためにひそひそ声で話し始めた。


「まずは、お化け騒動からだ。昨夜、副村長の家に村長が現れた」

「正確には、副村長の奥さんが窓に小石が投げられていることに気づいて、副村長さんが犯人を追いかけたんデス」


「そうそう。でも、追いつくことができなかったんだよね」

「村長さんはフットワークが軽い上に、騒ぎを大きくするために、酔っぱらった村人に声をかけたせいデスね」


「うん。村長はきっと人狼のはずなんだけど、でも、疑問点があるんだよね」

「そうデス。人狼が用意した罠は稚拙すぎるのがひっかかるデス」


「でも、村長に化けることができるのは、人狼だけなんだから、昨晩の村長の正体は人狼な気がするけど……」

「確かにそうデスね」

 うなずきながらも、納得いかなさそうな顔のアリア。


「まあ、村長が人狼かどうかはひとまずおいておこう。お化け騒動の後、お墓荒らしが起こったんだよね」

「そうデス。お化け騒動とほぼ同時刻、見張りのムーとジュンに気づかれることなく、村長さんのお墓を荒らして、村長さんの遺体を丸ごと盗んだんデス」


「動機は、村長さんに恨みがあって、死体を辱めたかった可能性が高そうだね」

「そう考えると、墓荒らしは、人狼の事件と関係ないかもしれないデスね」


「そうだね。村長復活事件と村長の墓荒らしは、分けて考えたほうが良さそうだ」


 アリアと事件の整理をしていると、月明かりに照らされて、イスに座っている人影が見えた。

 お、あれは、カマテじゃないか。


 車いすの上には、子どもなら誰でもすっぽりと入りそうなくらい大きな木の箱を乗せている。


「おーい、カマテ!! 大変そうだね。車いす、押そうか?」

「放っておいてよ!!」


 カマテは大声を出すと、一人でどこかへと行ってしまった。


「カマテ……」

「カマテも、先日までは明るい子どもだったんですけどな」


「副村長!! どうしたんですか、こんなところで」

「道を歩いていたら、サイレントさんの大声が聞こえたので、何事かと駆け付けただけですな」


「そんなに騒動を起こしませんよ」

「最近のこの村の騒動の発端は、全て貴方ですな」

 はい、返す言葉もございません。


忙しい人のためのまとめ話


 サイレントとアリア、双子は人狼じゃないと判断する。

 サイレントとアリア、カマテと副村長にあう。




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