第43話 サイレントとアリア、双子に事件当日のことを訊く
7月24日誤字脱字を訂正しました(内容は変わっていません)
前回のあらすじ
アリア、双子と戦って負けた後、サイレントが戦い、双子の膝を折らせる。
サイレント、捜査令状を見せて、誤解をとく。
「矛盾なんかしてないよ」「そうだよ。矛盾なんかしてないね」
「それなら、そのムーの持つ最強の矛で、ジュンの持つ最強の盾で防いだらどうなるデスか?」
えーと、どんな盾でも貫ける矛とどんな矛でも防げる盾がぶつかるわけだから……あれ? どうなるんだろう?
「それは、やれば分かるよ」「うん、やれば分かるね」
二人は距離をとってお互いを見合ったと瞬間、ムーがジュンに飛び掛かった。
カキン。
金属がぶつかる音。
ムーの矛をジュンが折れて、ジュンの盾は割れなかった。
「盾が勝ったということは、ムーの言っていたどんな盾でも貫ける矛じゃないってことデス」
「それは違うよ!!」「うん、それは違うね!!」
「どこが違うんデスか?」
「なぜなら、私の矛がどんな盾でも貫く最強の矛だからよ」「そうだね、ムーの矛は最強だもんね」
「たった今、最強の盾に防がれたよね?」
どういうこと?
「まあ、黙って見てるといいんだよ」「うん、黙って見ているといいんだね」
おお、いつのまにか折れていたはずのムーの矛は元通りになっているし。
今度はムーの矛がジュンの盾を貫いているし。
「あれ? さっきと逆だね」
「……ということは、ムーの矛が勝ったんだから、ジュンが間違っていたことになるデス」
「そんなことないよ」「うん、そんなことないね」
「ボクの目が間違っていなければ、たった今、最強の盾を貫いたよね?」
「なぜなら、ジュンの盾がどんな矛でも防げる最強の盾だからよ」「そうだね、私の盾は最強だもんね」
いつのまにか貫かれていたはずのジュンの盾は元通りになっていた。
もう一度ムーの矛がジュンの盾を貫こうとすると、ムーの矛は折れてしまった。
「どうして?」
「私の矛は成長しているんだよ」「私の盾も成長しているんだね」
「これは、間違いなく矛も盾もティタン製の武器デスね。折れたり割れたりしても、持ち手の魔力を吸収して前より強い武器になっているデス」
ティタン製の武器って成長するのか……すごいな。
「ちょっと待って。それって……」
「文字通り、矛盾無しの最強の矛と最強の盾デス」
矛盾しているようで矛盾していないことを誇る双子。
「すごい!!」
ボクは感心して拍手をする。
「……って、違うよ。ボク達、ティタン製の武器の性能を見に来たわけじゃないよ」
「あれ? ホバッカ村の唯一の観光スポットである最強の矛を見に来たんじゃなかったんだよ?」「あれ? ホバッカ村の唯一の観光スポットである最強の盾を見に来たんじゃなったんだね?」
「この村の観光スポット、これしかないの? 少ないな……じゃないよ。墓荒らしされたときのことを聞きにきたんだよ」
「あ、そうだったよ」「あ、そうだったね」
ムーとジュンは構えていた武器を後ろ手にもった。
「墓荒らしをされた日も、お墓を見張っていたんデスよね?」
「そうだよ」「そうだね」
「その時のことを詳しく教えてもらっても良いデスか?」
「あの時は確か、村が騒がしかったんだよ」「そうそう、あの時は死んだ村長さんが生き返ったとかで、騒がしかったんだね」
「その時はまだ墓荒らしされていなかったんデスか?」
「そうだよ」「そうだね」
「それでは、村長さんが走ってきて、村長さんの墓を荒らした可能性もあるデスよね?」
「それはないと思うよ」「それはないと思うね」
「どうしてデスか?」
「だって、村長さんは住宅街にいたんでしょ? 住宅街からこの墓場まで来て、一瞬で墓場を掘るなんて芸当、できるわけないよ」「そうそう、村長の墓を掘る音もなく荒らせるわけないね」
「「超一流のアサシンでもない限り」」
ムーとジュンの声は揃い、ボクをみらみつけてきた。
それって、もしかして、ボクのこと?
いやいや、超一流のアサシンでも、一瞬で墓を掘り起こすなんて無理だよ。
「待つデス、二人とも。一流のアサシンでも、魔王でも一瞬で墓を掘り起こすのは難しいはずデス。もちろん、師匠にもできないはずデス」
「もちろん、冗談だよ」「もちろん、冗談だね」
冗談と言いながら、目が笑ってないんだよな……
「ところで、墓荒らしの犯人の姿は見たんデスか?」
「あっという間の出来事だったから、見ていないよ。ムーはポルターガイストだと思ったよ」「あっという間の出来事だったから、見ていないね。ジュンは村長の怨念だと思ったね」
ムーとジュンは、今度はあははと笑った。
「心霊現象がおこりそうな場所ではありますが、そのような気配は全くないデス。本当にいたんデスか? 墓荒らしをした人は?」
「どういう意味だよ?」「どういう意味だね?」
「貴方達なら、墓荒らしのせいにして、お墓を掘り起こすことができるんじゃないデスか?」
あ、そっか。
最初から、ムーとジュンが犯人だったら、適当な証言をすればいいだけなのか。
「できるけど、できないよ」「そうだね、できるけど、できないね」
「できるけど、できないって、どういうこと?」
「僕たちが墓荒らしなんかしたら、すぐにばれちゃうね」「うん、すぐにばれちゃうよ」
「誰にバレるんデスか?」
「副村長だよ」「そうそう、副村長にだね」
「どうしてデスか?」
「副村長が墓場に結界をはっているからね」「うん、ボク達が墓場に入った瞬間、副村長は、すぐに分かるんだよ」
「その結界は誰が入っても発動するデスか?」
「発動するのは、僕たちだけだよ」「そう、僕たちの魔力にしか反応しないんだよ」
「なるほど」
きっと、ボク達が登録したあのキューブ型の魔道具で、墓守が墓荒らしをしないように予防しているのだろう。
「それなら、お墓に入らずに、どうやってお墓を守っているデスか?」
「お墓の結界の外から見回っているよ」「お墓の結界の外から見回っているね」
「そこからだと、お墓の中には死角も多いということデスか」
「お墓の中には死角もあるけど、見逃すはずないよ」「誰かがお墓に入らないように見張ればいいだけだから、見逃すはずないね」
「確かにそうデスね」
んー、ムーとジュンに犯行は無理か。
忙しい人のためのまとめ話
サイレントとアリア、双子の武器の強さを知る。
サイレントとアリア、双子に事件当日のことを訊く。