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第41話 サイレントとアリア、墓場に到着する

前回のあらすじ


サイレント、墓荒らしをしたと副村長に疑われる。

サイレント、副村長から捜査令状を受け取る。





 

「どうしたの、アリア、険しい顔をしているみたいだけど……もしかして、トイレに行きたいとか?」

 お墓へと行く途中、アリアが眉をひそめていたので、訊いてみる。

「トイレじゃないデス。気になることがあるんデス」


「何が気になるの?」

「昨夜の副村長が見たという村長のことデス」


「ああ、人狼が化けてでたっていう話だったよね?」

「そうデス。あの話に引っかかるところがあるんデスよ」


「え? 何に引っかかっているの?」

 全然おかしことなんかないはずだ。


「人狼の張った罠デス」

「人狼の張った罠って、落とし穴やこんにゃくのこと?」


「そうデス。人狼はなんで罠なんか用意したんデスか?」

「それは、人狼はお腹が空いていたから、恐怖が欲しかったからでしょ?」


「さすが、師匠……と言いたいところデスが、人狼が張り巡らせた罠って、幼稚で稚拙デスよね」

「そういえば、そうだったね」

 確かに、落とし穴とか、こんにゃくとか、子どもが作りそうな罠だった。


「あの稚拙な罠で人狼の空腹が満たされるとは思わないデス」

「そうなの?」


「そうデス。人狼は恐怖に震えれば震えるほど栄養になるんデスから、罠に誘導するなら、もっと高度な罠を用意した方が良かったはずデス」


「確かに、怖がれば怖がるほど良いなら、高度な罠の方がいいだろうけど……あ、分かった。人狼って、人を怖がらせるのは苦手なんじゃない?」


「師匠、人狼はパーフェクト・コピーで人間の感情は手に取るようにわかるのにデスか? しかも、あの感情の起伏の無いスライムをスケアード化できるほど拷問できるのにデスか?」

「うっ」

 確かに。

 感情をあらわさないスライムに比べれば人間の拷問なんか楽勝だろう。


「それなら、次に狙う標的を見定めるためだよ」

「標的デスか?」


「そうそう。罠をかいくぐるような強い人を見定めるために」

「それならなおさら、高度な罠をはるはずデス」

 確かに、アリアの言う通りだ。


「きっと、高度な罠を張り巡らせるための材料が用意できなかったんだよ」

「材料が用意できないということは絶対にないデス」


「どうしてさ?」

「人狼は相手にさえ触れば、パーフェクト・コピーでこの村の誰にでもなりきることができるんデスから、材料調達は朝飯前のはずデス」


「あ、そっか」

 どうしてあんな稚拙な罠を張り巡らせたんだろう?

 材料がなかったわけでもないのに……


「加えて、分からないのが、どうして酔っ払いを驚かせたかデス」

「酔っ払いなら簡単に恐怖に怯えると思ったんじゃない?」


「逆デス、師匠。酔っ払が村長を見たところで、飲み過ぎて幻覚を見ているか、夢かもしれないと思うデス。それなら、酔っぱらっていない村人の前に姿を現して驚かせた方が効率良いデス」

「それもそうか……」

 言われてみれば不可解な点が多すぎるな……


「うーん、考えても分からないことは、今は保留にして、もうそろそろ墓場に着くからまずは話を訊いてみよう」


「そうデスね。ところで、師匠、墓守って何デスか?」

「墓守っていうのは、盗人に墓荒らしをされないように守る職業の人のことだよ」

「そうなんデスね」


「アリア墓守を知らないの?」

「はい、知らなかったデス」

 ご両親を亡くされているはずなのに、なんで墓守を知らないんだろう……もしかしたら、あまりにショックで、墓参りとかしていないのかもな。


 身内の殉職というのは、ナイーブな問題だから、あまり深くは訊かずにそっとしておこう。


「それなら、墓守の強さのことも知らないね?」

「墓守って強いんデスか?」


「当然だよ。墓守という職業は、墓荒らしと戦わないといけないからね。強さがないと、墓守はできないんだ」

「それは是非、手合わせしたいデス」


 そうそう、やっぱり強い人を見かけるとワクワクして戦いたくなっちゃうよね……って、なんでだよ。


「ダメだからね。戦ったりなんかしちゃ」

 ボクはしっかりとくぎを刺す。

「善処するデス」


 そっか、善処してくれるか……って、それダメだから。

『善処する』って言葉は、貴族ができそうにない時に使う言葉だってことは、バカなボクでも知っているんだからね。


「本当にダメだからね。理由もないのに、墓守に襲い掛かったら、墓荒らしと勘違いされて捕まっちゃうから」

「善処するデス」

 ニコニコしながらこたえるアリア。


 とても不安だ……

 ボクは不安を抱えながらお墓へとついた。


 墓場はじめじめした日の当たらないところにあった。

 薄暗くなり始めたばかりなのに、今にも何かが出てきそうだ。


 ボクとアリアはきょろきょろと辺りを見回す。


「師匠、それらしき人はいないデスね」

「おかしいな。墓守はお墓にいるはずなんだけどな……」

 まばらに人はいるものの、それらしき人はみかけない。


「お兄さんたち、見ない顔だよ」「お兄さんたち、見ない顔だね」

 子どもの声がしたので振り返る。

 そこには、矛を持った少女と盾を持った少女がいた。

 顔も背丈もほぼ同じ美少女だ。


「最近この村に来たばかりだからね」

 ボクは警戒させないように笑顔で言う。


「なんか不気味な笑顔だね」「うん、不気味な笑顔だよ」

「え? いや、そんなことはないよ」

 ボクは少しだけ狼狽えながら言う。


「しかも、お墓できょろきょろとしていたから、この人たち怪しいよ」「うん、この人たち怪しいね」

「それには、ちょっと事情があって……」

 さすがに、子どもに魔物の調査をしているなんて言えないしな。


「もしかして、墓荒らしする気なんだよ?」「墓荒らしする気なんだね」

「墓荒らしなんかしないよ」


「それは、嘘だよ」「絶対、嘘だね」

 矛を持った少女と盾を持った少女がボクに襲い掛かってきた。


忙しい人のためのまとめ話


 アリア、副村長の話がひっかかる。

 サイレントとアリア、墓場で双子の美少女に襲われる。



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