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第39話 サイレント、昨晩のことを訊く

前回のあらすじ


 外が騒がしいことに気づいたサイレント、外に出たいとおかみさんに懇願する。

 おかみさん、サイレントが外に出ることを許さない。





 

「おかみさん、昨晩、何があったんですか?」

「何もありませんよ」

 おかみんさんは何もなかったを貫き通すつもりだな。


「そうですか。ありがとうございます」

 ボクはそうそうに話を切り上げる。


「師匠、本当は何もなかったのではないデスか?」

「いや、あったんだって。他の村人に聞けばすぐにでもわかるはずだよ」


「そうと決まればすぐに朝ごはんを済ますデス」

「そうだね」

 ボク達は朝ごはんを済ませて外に出た。


「あの、すみません、昨晩は何があったんですか?」

 食堂でご飯を済ませたボク達は道行く人に訊ねる。


「昨晩? 何かあったかい?」

「昨晩、騒がしかったですよね?」

 ボクは確認するように訊いた。


「そうだったかな? よく覚えていないな」

 昨晩のことを覚えてないとかありえないんですけど。

 もしかして、ホバッカ村の人はボクよりバカなの?


「師匠、本当に昨晩何かあったんデスか?」

 うう、アリアにも疑いの目を向けられたよ。


「本当にあったんだって!! こうなったら、聞きまくってやる」

 ボクは手あたり次第、目についた村人に声をかけまくる。


 だが、昨夜のことを誰に尋ねても、はぐらかされてしまう。


「師匠、夢を見ていたんじゃないデスか? これだけ聞いても、誰も何も話してくれないデスよ」

「いや、夢じゃないんだって」


 何故だ?

 何故なんだ?


 何故誰からも情報が得られないんだ……


「分かったぞ、きっと情報規制されているんだ!!」

 人狼のことを情報規制したように、昨晩のことも情報規制されてい可能性が高い。

「確かに。その可能性はあるデス」


「こうなったら、情報規制のことを忘れている村人に話を聞くしかない!!」

 きっと、情報規制のことを忘れて口を滑らせてしまうバカな村人が一人くらいいるはずだ。

「師匠、それは大変なので、情報規制を号令したであろう副村長に話を聞くのが一番早いんじゃないデスか?」


「あ、それもそうか」

 この村で起こったことを副村長が把握していないはずがない。

 ボクは道行く人に副村長の家の場所を聞きながら、副村長の家へと向かった。


 …………

 ……


 ボク達は副村長の家についた。

 高価そうな木で作られたお屋敷だ。

 旅の一座が来ても、泊まれそうなくらい大きい。


「おや、どうしましたかな、サイレントさんにアリアさん」

 庭で木に水をやっていた副村長が、ボク達に気づいて声をかけてくれた。


「副村長、昨夜は何があったんですか? 誰に訊いてもとぼけて答えてくれないんですよ」

 ボクは大声で尋ねる。


「ああ、そのことですかな。まあ、こちらへいらしてください」

 副村長は自分の玄関へと招き入れる。


「失礼します」「失礼するデス」

 ボクとアリアはお辞儀をしてから玄関の中に入った。


 副村長は辺りを確認すると、ひそひそ声で話しかけてきた。

「おばけ騒動と村長の墓荒らしがあったのですな」

「ね、ほら、昨晩何かがあったでしょ、アリア」

 ボクは副村長を指差しながら、アリアを見る。


「村人が昨晩のことを誰も答えなかったのは、副村長が情報規制したからデスか?」

 アリアはボクの方を見向きもしないで、話を進めた。

「その通りですな」

 副村長はこくりとうなずいた。


「それで、お化け騒動と村長の墓荒らしって、具体的にはどんなことが起こったのデスか?」


「お化け騒動から説明いたしますな。村の東側で、死んだはずの村長が動いていたんですな」

「何だって!? 死んだ村長が動いただって!?」

 ボクは驚いて大声を出す。


「静かにして欲しいですな、サイレントさん。昨夜のことを知らない村人に知られたらパニックになりかねませんからな」

「ごめんなさい」

 ボクは慌てて両手で口を塞ぐ。


「それは本当に村長だったんデスか?」

「暗かったですが、私が見たのですから、間違いないですな」


「副村長さんが見たんデスか?」

「はい、そうですな」


「詳しく教えて欲しいデス」

「はい、昨晩、私が家で寝ていると、妻が窓に小石を当てている音がしたと言ってくるのですな」


「そういうことはよくあることなんデスか?」

「以前はよくあったと言うべきですな」


「以前はあった……ってどういうことデスか?」

「生前、村長がよくしていたんですな。しかし、村長はすでに亡くなった今現在、こんなことをする村人は一人もいないですな」


「なるほどデス。その後はどうしたデスか?」

「亡き村長を模倣した悪いイタズラだと思った私は、住み込みのメイドに妻を任せて、窓を開けて犯人を確認しようと追いかけたのですな」


「追いついたデスか?」

「残念ながら、もともと村長はフットワークが軽く、私の脚では追いつけませんでした」

 確かに、副村長のでっぷりとしたお腹と、太い脚では追いつけそうにないな……


「見失ったんデスか?」

「いいえ、私が来るのを待っていましたな。なんなら、罠まで用意していましたな」


「罠デスか?」

「ええ、落とし穴やこんにゃくが吊るされていましたな」

 なんてチープなトラップだ。


「道で寝ていた酔っ払いたちを起こして、起こされた酔っ払いが、『村長が生き返った』……と、騒ぎを大きくしていましたな」

「おそらく、村長の正体はパーフェクト・コピーした人狼デス。きっと、死んだ人に化けて恐怖を集めようとしたんデス」


「騒ぎが騒ぎを呼んで、近くの家の村人たちも祟りだのなんだの言いはじめましてな……」

「……ということは、村人も村長を追いかけたんデスか?」


「いいえ、村人は死んだ村長が蘇ったと怖れて、部屋の中に閉じこもったんですな」

「なるほど、追いかけたのは副村長だけだったんデスね?」

「そうですな」


「その後はどうしたんデスか?」

「あまりにも騒ぎが大きくなったので、事態を収拾するために、今夜のことは誰にも話さないように口止めをしましたな。今夜のことを口にすれば、たたられるかもしれない……と」


「その後、人狼はお墓を荒らしたということデスね?」

「いえ、お化け騒動と墓荒らしの犯人は別ですな」


「何で別だと分かるんデスか?」

「二つの犯行はほぼ同時刻でしたからな」

「同時刻だって!?」

 ボクは声をあげてしまった。


忙しい人のためのまとめ話


 サイレント、昨晩のことを村人に訊くが、誰も答えてくれない。

 副村長に訊いたところ、昨晩、おばけ騒動と墓荒らしがあったことを知る。




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