表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

90/372

第38話 サイレント、夜中に外が騒がしいのに気づく

前回のあらすじ


 サイレント、宿屋の息子の護衛を申し出るが断られる。

 サイレント、人狼を捕まえる名案が思い付かない。




 

 ベッドに入ったものの、いい考えが浮かばない。

 きっと、疲れているせいだろう。


 少し眠ってから、朝早く起きて考えればいいや。

 少しだけ眠れば……そう、少しだけ……


 ボクはまどろみについた時である。


「……憎き、魔王め!!」

 アリアの声にびっくりしたボクはダガーを構えてしまう。


「憎き、魔王め!! むにゃむにゃ……」


 なんだ、寝言か。

 ドキドキした。

 心臓バクバクで、全然眠れなくなってしまった。


 どうしよう……って、人狼を探す手立てを考えなきゃ……


 …………

 ……


 ……うん、全然思いつかない。

 疲れているからな……ボク。

 それでも何かを考えなきゃ……


「うわーっ」「ぎゃー!!」「うぎゃー!!」

 外から騒がし声が聞こえてきた。

 酔っ払いが暴れているのか……


 いや、どちらかというと、悲鳴に近いな……

 こんな夜中に、何があったのだろうか?


「ねえ、アリア、外が騒がしくないかい?」

 ボクはアリアに話しかける。

「打倒、魔王!!」


 ボクの呼びかけを完全にスルーしたアリアは大声で寝言を叫んでいた。

 うん、これは起きそうにないね。


 よし、それじゃあ、アリアを起こさずに、外の様子を見に行こう。

 熟練の冒険者でさえ委縮してしまうようなアリアの殺気をかいくぐりながら、ボクはドアノブを静かに回して部屋を出る。


「どうかされましたか、お客様」

 宿屋のカウンターにさしかかったところでおかみさんに声をかけられた。


「ちょっと、外が騒がしいので、何かあったのかと思いまして」

「何もないです」

 有無を言わさない速度でおかみさんがこたえた。


「何もないわけないと思うんですけど……」

「いいえ、何もないです」

 ぴしゃりと言い切るおかみさん。


 うん、これは何かあるね。

 ここは嘘をついてでも、外に出ないといけないな。


「えっと、ボク、トイレに行きたくて……」

 ボクはわざとらしく股間を押さえる。


「トイレは、宿屋の中にあります」

 そうだった……

 ここは正直に言うしかないな。


「ごめんなさい、おかみさん。どうしても外に出たくて嘘つきました」

「お客さん、ダメですよ。許可証もないのに、夜中に外に出たら。事件があったら、真っ先に疑われますよ」


 そういえば、あったな、そんな許可証。

 昔、勇者パーティーでホバッカ村に来た時、夜間外出許可証を手に入れるのに、数多くの手続きが必要で大変だったとラカンがぼやいていたっけ。


 ここまで見越して、副村長に手続きをお願いすれば良かったよ。


「うわーっ!!」「ぎゃーっ!!」

 おかみさんとやり取りをしている間中も悲鳴が聞こえてきた。


「おかみさん、この悲鳴聞こえないんですか? 外で何か起こってますよね?」

「何もないので、お部屋にお戻りください」


「あのですね、ボクは副村長さんに魔物の捜査を任されているんですよ」

 そうだよ、ボクは副村長さんから、捜査を任されているんだよ。

 おかみさんにボクを止める権利なんかありはしないんだよ。


「任されているかもしれませんが、夜間外出許可はもらってないんですよね?」

「それは、そうです」


「部屋にお戻りください。もしも、私がこのまま外にお客様を出したと知られたら、私も罰せられるので」

 玄関の前で仁王立ちをしながら、ぴしゃりと言い切られてしまっては、何も言い返せない。


「それなら、おかみさんは知らなかったことにしてください」

「今現在も、嘘発見調査官がこの村に滞在しているので、そんな嘘すぐに見破られてしまいます。お部屋にお戻りください」

 くっ、確かに、あの嘘発見調査官がいるから、嘘はつきとおせないな。


「ボクなら、人狼を止められるかもしれないんです。だから……」

 それでもボクは食い下がった。

「この騒ぎが人狼かどうかは分からないですよね?」


「……それは確かに」

「お客様、お部屋にお戻りください」

 ボクが全ての話を終える前に、深々と頭を下げながら懇願してくるおかみさん。


「分かりました」


 ボクを外に出さなかったせいで、人狼を止められなかったとしても、ボクのせいじゃないからね。

 ボクを外に出さなかった、おかみさんのせいなんだからね。

 あっかんべーだ。

 ボクは心の中で悪態をつきながら、渋々部屋へと戻った。


 …………

 ……


「おはようございますデス、師匠」

「おはよう」

 アリアの寝言のせいで、また、あまり眠れなかった。


「それでは師匠、さっそく作戦を教えてください」

「作戦?」


「昨晩、師匠が考えていたじゃないですか」

 あ、まずい、何にも考えていなかった。


「それはね……いや、やめておこう」

 ボクはもったいつける。


「どうしてデスか? もしかして何も考えていなかったとかデスか?」

「そんなわけないよ。状況が変わったんだ」

 本当は図星だけど、それは絶対に言えない。


「状況デスか?」

「そう、深夜遅くに、外が騒がしくてね」

「全然気づかなかったデス」


 そりゃあ、あんだけ熟睡していれば、気づかないのも無理ないよ。


「何があったんデスか?」

「それが分からないんだ。騒動の根源が何かを確認するために、外に出ようとしたんだけど、許可証がなかったから、おかみさんに止められてしまったんだよ」


「そうだったんデスね」

「まずは宿屋の朝ごはんを食べてから、昨晩何があったのかを確認をしにいこう」


「分かったデス……って、師匠、もうお昼を過ぎているデスよ」

「よし、お昼ご飯を食べに行こう」

 ボク達は食堂へと向かった。


忙しい人のためのまとめ話

 

 外が騒がしいことに気づいたサイレント、外に出たいとおかみさんに懇願する。

 おかみさん、サイレントが外に出ることを許さない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ