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第31話 サイレント、ホバッカ村の村長にならんとす!?

前回のあらすじ


 サイレント、葬式会場に潜入するために警備に来たと言い、会場を混乱させる。

 サイレントとアリア、副村長の助けを借りて葬式会場に潜入する。



 

 ボクとアリアは葬式会場の隅の方で気配を消して影をひそめる。


 会場には既に、たくさんの人が集まっていた。


 遠くの方で遺影の肖像画をじっと見つめるおじさんがいた。


「おし………………いひとを亡くした……」

 村長の遺影を見ながら、独りごちる。


 おじさんとは距離があったから、全てが聞こえたわけではないけど、きっと、村長の死を悼んでいるのだろう。


「きっと、『いい人』だったんだろうな、村長」

 ボクは独り言ちていた。


「ああ、本当にいい人だったよな、村長」

 ボクのつぶやきに反応してくれる一人の若い村人。


「ああ、そうだね、いい人だったね」「全くだ」「本当、本当」


 やっぱり『いい人』だったんだな、村長。


「「「「「ノリだけは」」」」」

 その場に居た村人全員の声が重なる。


 え?

 ノリ?


「そうそう、ノリだけは良かったんだよ」「ああ、そうだね、ノリだけはいい人だったね」「まったくもってその通り、ノリだけは良かったんだよ」


 全員激しく同意する。


 どういうことデスか……と目で訴えてくるアリア。

 多分、誰かが口火を切るはずだから、ちょっと待ってみようとボクはアリアに目で合図する。


「お酒を飲みに行こうと誘えば、村の重大な会議をしている真っ只中でも一緒に飲みに行ってくれるし……」

 まさかの職務放棄。


「自分の家に地下室を作った時には、『そうだ、村おこしのために地下街を作ろう』と言い出したかと思えば、地盤のことなんかお構いなしに、穴を掘り始めて、地盤沈下させようとするし」

 すごい迷惑。


「『村八分じゃんけん大会』……とか急に言い出して、じゃんけんに負け続けた最後の一人は村八分にしてのけものにすると言い出して、村長自身がジャンケンに負けて村八分になるし」

 世界で行われたじゃんけん大会の中で、最悪のイベントだよ。


「その場のノリで押し通すから、村の議会を通さずに、採決したりするんだもん」

「迷惑するのは私たちよ」

「まあ、ホバッカ村で騒動があったら、絶対に元凶は悪ノリした村長だもん」

「まずは『村長を疑え』……この村では子どもでみんな知ってることよ」

「かわいそうなのは副村長さんだよ。村長のやったことは全て副村長さんがしりぬぐいをしなくてはいけないから、いつも渋い顔をしていたね」


「ノリ以外にもいいところもあったような……」

 ボクは人混みに紛れて、声を発した。

 その途端、静まり返る会場。

 村人たちはうつむき始め誰も答えようとはしない。


 まるで、葬式会場のようだ……って、ここは葬式会場だった。


 ん?

 ……ということは、村長さんのいいところノリだけ?


 いやいや、そんなことはあるはずない。

 さっきのおじさんは、『おし…………い人を亡くした……』と言っていたくらいなんだから。


 きっと、『ノリ以外にもいいところもあったような……』というボクの声が小さくて聞こえていなかっただけだろう。


「ノリ以外に村長の良いところを話しましょうよ」

 ボクは先ほどよりも少し大きめの声で促す。


「他にはないな」「ええ、ないわね」「まったく思いつかない」

 今度はこの場にいる全員が即答する。


「そんなことないですよね、ボク聞きましたよ、さきほど、このおじさんが『おし…………い人を亡くした……』って言っていたのを」

 ボクはおじさんを指さす。


「いやいや、それは違うよ」

 え?

 違う?


「私が言ったのは、『押しの強い人を亡くした』だよ。村長はノリが良くて押しが強かったからね」

 惜しい人じゃなくて、押しの強い人だった!!


「確かに、ノリが良くて押しの強い人だったな」「その通りだ」「まったくね」


「「「本当にノリが良くて押しの強い人を亡くした!!」」」


「師匠、みんなが村長はみんなに愛されていたんデスね」

「そう……かな……?」

『うん、そうだね』と肯くことは絶対にできないレベルだよ。


 バンッ!!

 アリアと話していると、急に会場のドアが開く音が響き渡る。


 ボクはドアの方へ視線を向けると、ロウソクを鉢巻きで頭に巻きつけた若い女性が乱入してきた。


「はい、いいですか、みなさん、どうして村長が魔物に襲われたかというとですね、それは現世のカルマのせいです、はい」


 全身白装束でハスキーな声をだす若い女性。

 少しだけ白装束ははだけていて、色っぽい。


「あれは、タナトス教団の教祖様じゃないか!!」「そうだ、教祖様だ」「教祖様!」

 会場がざわつく。


「あの、タナトス教団の教祖様!?」

 ボクも大きな声を出してしまう。


「師匠、知っているんデスか?」

「いや、全然知らない。他の人がシリアスな顔をしたから、亡くなった村長さんのノリを見習って、ボクもしてみただけ」


「何でそんなことをしたんデスか?」

「ノリさえ良ければ、ボクもここの村長になれるかもしれないから」

 目指せ、ホバッカ村の村長!


「ここの村人でもないのに、村長になろうとするとは、さすが師匠デス」

 ……しまった。


 アリアが言うように、ボクはここの村人でもないのに、なんてことをしでかしたんだろう。

 まだ、村人にもなっていないのに、村長になろうとしているのだから。


 院長先生との約束でアリアにバカだと思われてはいけないという約束があるから、ここは押し切ろう。


「そう、村人じゃなくても、ボクはなりたいんだ、村長に。ホバッカ村長にボクはなるっ!!」

 ボクは心にもないことをアリアの前で堂々と宣言する。

 バカと思われないために。

 ホバッカ村の村長!


「ここの村人でもないのに、村長になろうとするとは、さすが師匠デス」

 ……しまった。


 アリアが言うように、ボクはここの村人でもないのに、なんてことをしでかしたんだろう。

 まだ、村人にもなっていないのに、村長になろうとしているのだから。


 院長先生との約束でアリアにバカだと思われてはいけないという約束があるから、ここは押し切ろう。


「そう、村人じゃなくても、ボクはなりたいんだ、村長に。ホバッカ村長にボクはなるっ!!」

 ボクは心にもないことをアリアの前で堂々と宣言する。

 バカと思われないために。


忙しい人のためのまとめ話


 サイレントとアリア、亡くなった村長はノリが良く押しが強い人だったと知る。

 サイレントとアリア、タナトス教の教祖様に会う。




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