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第30話 サイレントとアリア、葬式会場に潜入する?

前回のあらすじ


 サイレント、村長の葬式会場行こうとする。

 サイレント、砂糖菓子の客引きに会うが、何とか脱する。





 


 おじさんについて行くと、大きく立派な白い建物に到着する。


「ここがお葬式会場みたいデスね、師匠」

 小声で訊いてくるアリア。


「うん、そうだね」

 ボクは格好をつけてこくりと肯いた。


「アリア達は村長さんのことを知りませんよね? ここからどうやって潜入するんデスか?」

「知り合いじゃないのに、お葬式会場へは入れないよね」


「それなら情報収集ができないデスよね?」

「普通ならね。でも、ボクにいい考えがあるんだよ」


「いい考え?」

「おじさんのすぐ後ろに並んで、親戚のフリをして、おじさんと一緒に潜入すればいいのさ」


「なるほどデス。でも、アリア、嘘はつけないデス」

「大丈夫、ボクの言っていることにただ『うん、うん』とうなずいてくれればいいからさ」


「分かったデス」

「あとは、それとなく親戚のフリをするんだよ」


「分かったデス!!」


「この度はご愁傷様でした……」

 おじさんは葬式の会場に着くと、受付係の人に消え入りそうな声で挨拶をした。

 何食わぬ顔でおじさんの後ろにさりげなく立つ。


「本当にご愁傷様でした……さすが立派で豪華な家ですね。さすがは村長さんの家だ」

「そうデスね」

 自然な形で会話に割り込むボクとアリア。


「ここは冠婚葬祭が行われる村のホールで、村長さんの家ではないですよ」

 受付係の歳をとった男性は、冷静沈着だ。


「あ、そうでした、そうでした。ここは冠婚葬祭が行われるホールでした。すみません、勘違いしちゃって」

「そうデス。勘違いデス」


「さあ、おじさんと一緒にお葬式会場へ行こう、アリア」

「そうデスね、師匠」

 不自然な会話になってしまったが、このままおじさんと一緒に会場に入ってしまおう。


「大変失礼ですが、貴方がたは、どちらさまですか? この村では見かけない顔ですが……」

「師匠、バレちゃったデスよ」

 小声で訊いてくるアリア。


「アリア、まだ慌てるような時間じゃない」

 ボクは落ち着いてアリアに言う。


「ボク達怪しい者じゃないんですよ。村長さんのお葬式に参加しようと思いまして……」

「その格好でですか?」


「え?」


 ボクは指摘されて自分の服装を見直す。

 冒険者の服装。

 うん、どう見てもお葬式に出る格好じゃないね。


「あの、その、そう、お葬式に参加すると言っても、参列者としてではなくて、警備としてですよ」

「警備ですか? そのような話は聞いていませんが……」


 それはそうだ。

 ボクがとっさに考えたウソだもの。


「魔物が襲ってくるかもしれないから、警備を頼まれたんですよ。副村長に。だから、いつでも対処できるように、この格好なんです」

「え? 魔物がここに来るかもしれないんですか?」

 驚いた受付係はたまげて大声をあげた。


「ここに魔物が来るって……」「それは本当か?」「そうらしいぞ」

 会場がどよめき始める。


「そうだったんデスか!?」


 いや、そこは話を合わせてよ、アリア。

 君は、『うん、うん』と肯いていればいいんだからさ。


「あの、お連れの方が驚いてらっしゃるのですが……」

「副村長の依頼をきちんと聞いてなかったんです。困った子です」


「……ということは、ここに魔物が来るんですか?」

「警備を頼まれましたからね」

 ボクは真っ赤なウソをつく。


「葬式どころの話じゃない。すぐに避難しないと!」「そうだ、そうだ。はやく逃げないといけないぞ」「どけ、私が先に逃げるんだ」


 まずい、会場がパニックになってしまった。

 こんなことが副村長にバレでもしたら、大変なことになる。


「みなさん。落ち着いてください!!」

 ボクは大声を出す。


「雇われ警備員が必死だぞ」「やはり、ここに魔物がくるんだ」「はやくどけよ」

 村人たちはさらにパニック状態になる。


 うわー、ボクが混乱を鎮めようとしても逆効果だ。

 どうしよう……


「みなさん、静粛に!!」

「「「副村長!!」」」

 会場にいた全ての村民が足を止める。


「私は警備なんか頼んでいませんな。なぜなら魔物はここを襲うなんてことはありませんからな」


「どういうことだ?」「魔物はここを襲わないらしいぞ」「警備の話は嘘ってことか?」


「そうですな。きっと、間違えたんですな」


「なんだ、人騒がせな」「まったくだ」「村長の葬式会場で迷惑極まりない」

「そうそう、まったく人騒がせで、迷惑極まりない情報だったね、アリア。さて、村の外の警備でもしよう」


 ボクはその場の雰囲気に乗じてその場から立ち去る。


「これはどういうことですかな、サイレントさん?」

 もちろん、この場から立ち去ることなど、副村長が許すわけもなく、ボクは肩をがっちりとつかまれる。


 ボクはおそるおそる振り返った。

 そこには、顔を真っ赤にし、青筋をたてた副村長。


「えっと、これはですね……」

 まずい、言い訳が思いつかない。


「サイレントさん、とりあえず、こちらへ」

 副村長は人気のないところへと手招きする。


「イヤです。これ、ボク、ボコられる流れですよね?」

「ボコらないから、きてくれますかな?」


「絶対?」

「亡くなられた村長に誓いますな」


「信じますからね」

 ボクは副村長について行くことを決めた。


「それで、これはどういうことですかな?」

「あの……これは……その……魔物を捕まえるために必要な情報取集で……」


「それなら、そのように言って欲しいですな。葬式会場に魔物が来るなんて言ったら、村人はパニックになってしまいますな」

「すみませんでした」

 ボクは副村長に平謝りする。


「受付の者には私からうまく説明しておきますから、サイレントさん達は会場へ。村人を不安にさせるようなことは決して言わないで欲しいですな」

「分かりました」

 お金を積まれて頼まれても言いません。

 ボクは副村長からゆっくりと離れると、アリアの元へと戻る。


「大丈夫デスか、師匠」

「うん、なんとかね」


「これからどうするデスか?」

「許可をもらったから、葬式会場に潜入するよ」

「分かったデス」

 アリアはこくりとうなずく。


「アリア気配を消せる?」

「気配を消すのは、お茶の子さいさいデス」


「よし、それなら、気配を消してお葬式の会場に潜入しよう。そこで、村長さんの情報を集めるんだ」

「了解デス」


忙しい人のためのまとめ話

 

 サイレント、葬式会場に潜入するために警備に来たと言い、会場を混乱させる。

 サイレントとアリア、副村長の助けを借りて葬式会場に潜入する。

 




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