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第27話 サイレント、悪い考えが頭をよぎる

前回のあらすじ


 副村長、サイレントの申し出を断る。

 副村長、サイレントの申し出をうける。




 

 ダガーと大鎌を手渡されたボクは、ふと、悪い考えが頭をよぎる。


 武器も返してもらえるんだし、この牢から出たら、ボク、すぐにこの村から出ればいいんじゃないか?


 そうだよ。

 馬鹿正直に人狼を探す必要なんかないよ。


 このホバッカの村から出て、一生近づかなければいいじゃないか。

 なんて良い計画だろう。


 我ながら、パーフェクト・プラン。

 よし、そうと決まれば、すぐに逃げ出す準備だ。


 檻の鍵を鍵穴に入れようとした瞬間、副村長が手を止めた。


「どうしたんですか、副村長」

「貴方達をここから出す前に、2つの条件があるのですな」


「2つの条件?」

 良く分からないけど、とりあえず、首を縦に振っておこう。



「1つ、村を襲った魔物が人狼だと言わないこと。狼だと知られれば村は混乱してしまいますからな」

「はいはい、良いですよ、言いません」

 どうせ、ここから逃げるんだから、何にも難しい話ではない。


「あなたの返事は軽いのですな」

「え? そうですか?」


「絶対に言ってはいけませんぞ。人狼の目撃者には口止めをしてあるので、ほぼすべての村人はどんな魔物が襲ってきたかは知らないのですからな」

「だから言いませんってば。それよりも、他の条件を教えてください」

 正直、はやくこの村から脱出したいんだから。


「貴方がたの魔力を登録させて欲しいのですな」

「はい、いいですよ」


「それでは、この魔術具に手をかざすのです。そうすれば勝手に魔力を吸収してくれますからな」

「分かったよ」


「師匠、いいんデスか? その魔術具は……」

「アリア、今は交渉中なんだから、静かにしていて」


「デスが……」

「いいから、いいから。ボクを信じて、魔力を吸収させて」

 ここで疑われたらボクのパーフェクト・プランが頓挫してしまうと思ったボクは何か言いたそうなすぐさまアリアを止めた。


「分かったデス」

 アリアは、しぶしぶ副村長が持って来た黒いキューブ型の魔術具に手をかざす。



「これで、魔力の登録は完了ですな」

「そうですね。あと、他の条件もぱっぱと済ましてしまいましょう」


「2つの条件は既にお話しましたな」

「あ、そうでした、そうでした。うっかりしていました」


「うっかりというのは、嘘ですわ」

 本当に邪魔だな、嘘発見調査官。

 ……って、まずい。


 嘘発見調査官に嘘はつけないから、もし、『ボクに人狼を捕まえる気がありますか?』みたいな質問をされたら、曖昧な返事では切り抜けられないかもしれないぞ。

 はやく、ここから出ないと。


「副村長、はやくここから出してください」

 ボクは大声を出す。

「いいですな」


 よし、逃げるか。

 ボクはアリアをお姫様抱っこする。


「いきなりどうしたんデスか、師匠!」

「いいから、いいから。アリアはちょっと、黙ってて」


 ボクは脚に力を入れた。

 まずは、副村長から逃げるんだ。

 走れ、走れ、走れ!!


「どこに行くのだわ?」

「行きたいところがあるんだ。ちょっと……」

 ボクは曖昧な返事をしながら、外へ出る。


「あの二人、どこかに行くみたいだけど、いいのだわ?」

「いいのですな」


 見逃してくれるなら、ありがたい。

 ボク達はここから村の外まで逃げてみせる。


 おおっ、さんさんと輝く朝日もボク達を祝福しているようだ。

 はっはっはっ、さらばだ、副村長。


「先ほど、魔力を登録しましたからな。私の魔力結界の力で、この村から出た途端、心臓発作を起こして死んでしまいますからな」


 そうそう、ボク達はこの村の外まで逃げて、心臓発作で死ぬんだ…………ええっ! 心臓発作で死ぬだって!!

 あと1歩で外に出られるというところで、ボクは脚を止める。

 朝日はいつの間にか厚い雲で覆われていた。


「どうしましたかな、サイレントさん。そんなところで脚を止めて。まさかとは思いますが、逃げようとは思っていたんじゃありますまいな?」


「はっはっはっ、今から、探すつもりですよ。人狼」

 この村から逃げられないなら、今から思ったことを話す。


「さっきまでは逃げようとしていたのではないのですかな?」

「はっはっはっ、今から、探すつもりですよ。人狼」

 ボクは同じ言葉を繰り返すしかなかった。


「見つけて欲しいですな、人狼を。絶対に。3日で人狼を見つけられなければ、貴方達が入る鍋かフライパンを発注しなければいけませんからな」

「それは必要ありませんよ。安心して待っていてください」

 ボクは啖呵を切る。


 そこに間違いはない。

「それでは、3日後を楽しみにしていますからな」

 副村長と嘘発見調査官はボク達を追い越してどこかへ立ち去ってしまった。


 …………

 ……


「解放され、武器も返してもらいましたが、これからどうするデスか、師匠?」

「それは誰が人狼かをあぶりだすんだよ!!」

 こうなれば、作戦変更。

 諸悪の根源である人狼を副村長に差し出すしかない。


「どうやってデスか?」

「そりゃあ、村人が人狼かどうかを見極めるために、フリーハグをするんだよ」


「フリーハグ……って何デスか?」

「無料で村の人とぎゅーっと抱きしめあうんだ。美少女のアリアとフリーハグができるとなったら、すぐに行列ができるよ。そうすれば、村人全員の香りが分かるでしょ? 人狼なんか、すぐに見つけ出せるさ!!」


 地道だが、確実に人狼をあぶりだせる。


「師匠、師匠が止めたので、檻の中では言い出せなかったのですが、香りで人狼を見つけだすのはできないデス」

「え、どうして?」


 アリアが言うには、人狼は甘い香りがするんでしょ?

 フリーハグで見極められるでしょ?

 まさか、アリア、風邪をひいて鼻がきかなくなったとか?


 ボクはアリアの顔をまじまじと覗き見る。

「鼻水はでてなさそうだけど……」

「アリア、風邪は引いてないデス」


「もしかして、アリア、フリーハグが恥ずかしいとか?」

「自分からやりたいとは思わないデスが、師匠がやれと言うなららるデス」


「申し訳ないけど、やって欲しいなフリーハグ」

「やっても良いデスが、それでも人狼を見分けることはできないデス」


「どうしてさ?」


忙しい人のためのまとめ話


 サイレント、悪い計画を考えるが、頓挫する。

 サイレント、村でフリーハグを計画するが、アリアができないと言いはじめる。




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