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第25話 サイレント、副村長に檻から出して欲しいとお願いする

7月6日、本文を字下げしました。(内容は変わりありません)


前回のあらすじ


 サイレント、脱獄を諦め、正直に話すことを決める。

 嘘発見調査官、事実を捻じ曲げようとするが、結局サイレントの話を聞くことにする。


 



 

「横暴なのが嘘発見調査官なのだわ」

 嘘発見調査官はそう言いながらほっぺをつねり続ける。

「痛いです。放してください」


「それなら、村に入った魔物がどうして、人狼だと知っていたかのを正直に話すのだわ」

「わかりました、ボク達は山の中に住んでいるおばあさんから人狼がこの村に来ているかもしれないということを聞いていたんです。それで、ここに来たのも人狼なのかな……と思っただけなんです」


「ウソではないのだわ」

 嘘発見調査官は、ボクの顔から手をぱっと放してくれた。

 そっと、ほっぺを触ってみると、じんじんと痛く、だいぶ腫れていた。

 きっと、鏡で見たら、真っ赤っかだろう。


「嘘発見調査官さん……いや、女王様、さっきから水晶を見ないで本当か嘘か判断しているけど、本当に判別できているんですか?」

 ボクはもみ手をしながら聞いてみる。


「ええ、問題ないのだわ。私の目があれば、本当か嘘なんかすぐに判別できるのだわ」


「それじゃあ、さっき水晶をのぞいていたのは?」

「あれはただのパフォーマンスなのだわ」

 パフォーマンスだったんかい!


「そうやって、話を逸らして、時間でも稼いでいるのだわ?」

「そんなことないですよ、知ってることを正直に話します」


「それなら、その人狼の話を詳しく教えるのだわ」

「分かりました、ボクが知っていることを、包み隠さずに話します。だから、ここから出してください」

「それは話を聞いてからなのだわ。はやく話すといいのだわ」


「それはですね、人狼は人の肌に触れることで、触れた人に化けることができる魔物です。人の恐怖を食事にしています。それが全てです」

 他にも人狼についての情報が色々あったような気もするけど、ほっぺが痛すぎて思い出せないや。


「嘘ではなさそうなのだわ」

「そうです。嘘ではないデス」

 ボクは痛いほっぺをいたわりもせずに、もみ手をしながらこたえる。


「情報、ありがとうなのだわ」

「いえいえ、それよりも、この牢屋から出してください」


「それは無理なのだわ」

「ボク、包み隠さず話しましたよね? 話したら出してくれるって約束したじゃないですか」


「そんな約束なんかしてないのだわ」


「え?」

 ボクは聞き返す。

「私は話を聞いてから、出すか出さないかを判断するという意味で言っただけで、包み隠さずに説明したら必ずここから出すという約束はしていないのだわ」


「横暴だ」

「横暴なのが嘘発見調査官なのだけど、今回はそれ以外の理由があるのだわ」


「何ですか?」

「話を聞く限り、あなた達が人狼じゃないという保証がないからなのだわ」

「ボク達は人狼じゃないってば」


「でも、それを証明できないのだわ。このままじゃ水掛け論なのだわ」

「そんな……ボク達は人狼じゃないのに……」


「もしかすると、二人とも人狼の可能性もあるのだわ」

「それはないデス。人狼は1匹デス」

 アリアが話に割って入ってくる。


「どうしてそう言い切れるのだわ?」

「人狼は人の突然変異だと言われているからデス」


 え?

 そうなの?

 ……ということは、人狼は元人間?


「人の突然変異体……嘘ではなさそうなのだわ」

「こんなに協力しているんだから、ここから出してくださいよ」

「懇願したところで、それは難しいのだわ」


「何で?」

「私に貴方達を檻から出す権限がないのだわ」


「ふざけんな。権限のある人を呼べ!」

 結局ここから出せなかったんかーい。


「あ、でも、その権限ある人には私が取り次ぐのだわ」

「え?」

「こんなに態度の大きい人を会わせてもいいか、考えてしまうのだわ」


「デカい態度をとって、すみませんでした。偉い人を呼んできていただけないでしょうか?」

 ボクは土下座で謝る。

「しかたないのだわ。呼んでくるのだわ。ちょっと待っているといいのだわ」

 はぁーとため息をつくと、嘘発見調査官はどこかへ消えてしまった。


 …………

 ……


 しばらくすると、嘘発見調査官は一人の男性とともにやって来た。


 狐のような狡猾そうな顔なのに、狸のようにでっぷりとした体には、高級そうな服に身を包んでいて、明らかに偉そうな人だ。


 きっと、この村の村長に違いない。



「話は嘘発見調査官から聞いた。君たちをここから出すことは、絶対に出来んのだよ」

 開口一番、無理だと言ってくる男の人。


「どうしてもですか? 村長」

 ボクは思わず聞いてしまった。

「私は副村長ですな。まだ村長じゃありませんな」

 間違った。


 でも、副村長だもん。

 このくらいは笑って許してくれるよね?


 ボクは副村長の顔をちらりと盗み見る。

 副村長の顔はリンゴのように赤くなっていた。


「もしかして、副村長さんも嘘発見調査官にほっぺをつねられたんですか?」

「何で私が嘘発見調査官にほっぺをつねられなければいけないんですかな」


「嘘発見調査官につねられることで喜びを得る趣味があるのかと思いまして」

「そんな趣味はありませんな」

 副村長はさっきよりもほっぺを赤くして叫ぶ。


「副村長、もしかして、怒ってます?」

「もしかしなくても、怒ってますな」


「すみませんでした、副村長」

 ボクは土下座をする。


「私は副村長ですからな。それくらいは許してあげますな」

「ありがとうございます。ついでに、ここから出していただけませんか?」

 ボクは両手をもみもみしながらお伺いをたてる。


「ダメですな」

 ですよね。


忙しい人のためのまとめ話


 サイレント、嘘発見調査官に人狼のことを正直に話す。

 サイレント、副村長に檻から出して欲しいとお願いする。


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