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第22話 サイレント、檻の中で水を飲む

前回のあらすじ


 サイレント、禁断の技で脱獄をしようとする。

 サイレント、脱獄を失敗する。




 



 

「ごめんね、アリア。禁断の方法は失敗しちゃったんだ。他の方法を考えよう」


「他の方法ってなんデスか?」

「うーん、そうだな……マジック・バックの中に入って隠れるってのはどう?」

 なんという名案だ。


「それはできないはずデス」

「どうしてさ?」


「魔法の術者は常にマジック・バックの外にいないといけないデス。術者がマジック・バックの中に入ったら最後、永遠に出ることができなくなるデス」

「え? そうなの?」


「少し魔法学をかじっていれば、論理的に分かるデス。そもそも、こういう檻は魔法を封印させる札か結界かがはられていて魔法は無効化されているはずデス」


 え、そうなの……

 知らなかった。

「師匠もしかして、また、アリアを試しているんデスか?」

「……もちろんさ!」

 ボクは嘘がバレないように、満面の笑顔で返事する。


 はぁー、どうしよう。

 魔法が封じられているなんて思わなかったよ……

 とりあえず、水でも飲んで落ち着くか。


 確か、ボクは山の中でおばあさんから貰っていた、水筒があったはずだ。


「マジック・バック」


 えっと……


 ボクはマジックバックの中に手を突っ込み、水筒を探す。


 あ、あった、あった!

 水筒!!


 水をごくりと飲む。


 ふー、生き返る。


「師匠!!」

 慌てた様子でアリアが小声をかけてきた。


「どうしたの? そんなに慌てて……あ、喉が渇いたとか?」

 ボクは自分の持っていた水筒をアリアに差し出した。


「あ、ありがとうございますデス……って、違うデス。この牢屋、魔法無力化がされていないみたいデス!!」

「あれ? 本当だ!!」


 普通なら、魔力封印の札だったか、結界だったかで、魔法無力化がされているはずなのに、されていないな。


「これなら、アリアの魔法ボルケーノで、この檻を破壊して脱出できるデス」

「うん、そうだね。アリアの魔法で破壊すれば……って、ちょっと待って。ボルケーノの魔法規模って……」


「もちろん、この村すべてが熱で溶ける程度デス」


「そっか、この檻どころか、この村すべてが熱で溶ける程度か……ってアリア、それは、ダメだから」


「どうしてデスか?」

「そんな派手なことしたら、村を滅ぼした罪で全世界から指名手配犯になっちゃうよ」


「大丈夫デス。この村すべてが一瞬で溶けるので、生き残りはいないはずデス」

「そっか、それなら安心だ……って、それだと、ボク達も死んじゃうよね?」


「まさか。アリアは術者デスので大丈夫デスし、師匠の魔力レベルなら、痛みも感じないと思うデス」

「いやいや、術者のアリアは生き残っても、ボクは痛みも感じずに即死のパターンだよ、それ」


 かいかぶりすぎだぞ、アリア。


「そんなことないデス。師匠は傷一つつかないデス」

 頬を膨らますアリア。


「とにかく、アリアは魔法禁止!」

「分かったデス。でもこれからどうするデスか?」


「そうだな……魔法が使えるというアドバンテージを利用して、何とか脱獄できる方法を考えよう……」

「それならば、ボルケーノで……」


「もちろん、誰も怪我をさせない方法でね」

「誰も怪我をさせないとなると、やはり、鍵を盗むのが一番デスね」


「確かに、そうだ」

「鍵の場所が分かればいいデスが、鍵の場所も分からないとなると、難しいデスね」


「そうだね、鍵の場所がわからないもんね……ん? いや、知ってるよ、鍵の場所!」

「本当デスか?」


「うん、本当だよ。警備員のポケットにあったよ」

「それなら、警備員さんに気づかれずに、ポケットから鍵を拝借できれば、脱獄できるデスね!!」


「確かにそうなんだけど、どうやって、気づかれずに鍵を盗むかが問題だよ」

「檻を壊すしかないデスよ」


「檻を壊すにしても、武器は預けちゃったしな」


「師匠は何か魔法を使えるデスか?」

「使えない……」


「使えないんデスか?」

 まずい、適性職業がアサシンとはいえ、冒険者が魔法の一つも使えないようでは、アリアにバカにされる……


「ああ、前までは使えていたんだけど、今は使えないというか、人に貸したというか……」

 もちろん、口から出まかせだ。


「魔法って貸せるんデスか?」

「もちろんだよ。本と一緒で、ボクの魔法は人に貸していて、まだ返してもらっていないんだ」

 何を言っているんだろう、ボクは。


「本当デスか?」

「本当だよ、アリア。返してもらえさえすれば、聖魔法のホーリーだって使えるんだから」

 もうちょっとうまいウソを言えればいいんだけど……これが精一杯のウソだ。


「さすが、師匠デス。はやく貸した魔法を返してもらうデス」

「残念ながら、貸した人が近くにいないと、返してもらうことができないんだ……」


「そうなんですね、残念デス」

「今、ボクが使えるのはマジック・バックくらいしか……そうだ、いいことを思いついたぞ!!」


「どんなことデスか?」

 目を輝かせ、大声を出すアリア。


「それは後でのお楽しみ」

 この方法なら、警備員の鍵を盗むことができるはずだ。


「さっきから、何を大きな声出しているんだべ? 何かいいことでもあったべか?」

 その声を聞きつけ、スタスタスタと歩いてくる警備員。


「そうデス……うぐっ」

「いいことなんか何もないよ」

 ボクはうなずくアリアの口を手でふさぎ、代わりに答えた。


「そりゃあ、こんな檻の中で、いいことなんか起こりようがないべ」

「うん、そうだね。今は反省しているんだ」


「お、お前素直だべな。そうそう、囚人は囚人らしく、檻の中で反省してればいいんだべ」

 言うだけ言って、スタスタとどこかへ立ち去る警備員。


「……ダメじゃないか、アリア。ボク達は捕まっているんだ。それなのに、そんなに目を輝かせていたら、警備員が不審に思われただろ」

「ごめんなさいデス」


忙しい人のためのまとめ話


 サイレント、マジック・バックから水筒を取り出して水を飲む。

 サイレント、鍵を盗む名案を思い付く


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