第7話 サイレント、パシリをさせられる
前回のあらすじ
勇者パーティー、ダンジョンの入り口まで戻る。
健康チェックとレベルチェックをする。
「ところで、ラカンはレベルアップしてんの?」
アイズ、ラカンのレベルが気になるんだね。
「知らねー。俺様は昔からスクロールを確認しない主義だからな」
「そういえば、そうだったわね。ラカンは今の自分のステータスが気にならないの?」
「俺様は勇者だぞ? 勇者は誰よりも強いに決まっているんだから、ステータスなんか気にしねーんだよ」
「わたくしは気になるけどな」
「俺様は気にしない。そもそも、レベルだのステータスの数値なんてあくまで目安だ。魔物との戦いは、その時の体調や天候や状況やらで刻々と変化するものだろ?」
「だから、確認するだけ時間のムダだということね。さすが、職業勇者様は、言うことが違うわ」
「そうだね」
ボクはこくりと肯く。
「そういうサイレント、あなたのレベルはどうなの?」
ボクは返事をする代わりに足元を見た。
「おいおい、サイレントに訊くのは、酷ってもんだろ、アイズ。こいつ、スクロールをもらって以来、1回も確認したことなんかないじゃないか」
「そ、そ、そうですよ、アイズ」
「わたくしも、悪気があったわけじゃないの。つい、うっかりしていて」
「まあ、誰にでもうっかりミスはあるんだから、許してやれよ、バカシンのサイレント……おっと、俺様もうっかりミスをしちまった。許してくれ、アサシンのサイレント」
ラカンの顔をちらりと盗み見ると、その表情は『にたぁ』とわらっていた。
「うん、そうだよね、誰にでもミスはあるよね……あはは……」
ボクはもう一度うつむき、乾いた笑いでその場をごまかす。
「さてと、ミスの許しを得たところで、サイレント、ファイヤー・ウルフの素材は今日中に換金をよろしくな」
「うん、そうだよね、誰にでもミスはあるもんね」
「おい、サイレント、俺様の話を聞いてないだろ」
自分で自分を納得させていて、ラカンの話をスルーしてしまった。
「え? あ、ごめん、何?」
「まあ、誰にでもミスはある。まあ、俺様は許さないけどな」
言いながらチョップをしてくるラカン。
理不尽!!
「素材、今日中に換金な」
「え? 今日中に換金? あれ? ファイヤー・ウルフ討伐って、クエストだったっけ?」
素材の調達クエストに、冒険者が失敗すると、依頼者に迷惑をかける上に、ギルドも大損失を負う恐れがある。
そのリスクを分散するために、ギルドは同じクエストを何パーティーかに依頼をするのが一般的だ。
その場合、素材の納品が一番早いパーティーが適正なクエスト報酬を得られる半面、納品が遅かったパーティーは適正報酬の半分の時もあるので、1分1秒を争うこととなる。
報酬が半分になってしまったら、パーティーの財政も悪くなってしまうから、急ぐのは分かるけど、今回はクエストじゃないって言っていたはずだ。
「クエストじゃねーよ」
「クエストじゃないなら、急ぐ必要ないんじゃない? 納品するのは毛皮で、お肉じゃないんでしょ?」
もしも、換金する素材が生肉だったりすると、時間が経てば経つほど、鮮度が悪くなってしまうから、すぐに換金して欲しいというのならば話は分かる。
だけど、今回の換金素材は毛皮だから、鮮度は関係ないはずだ。
「毛皮でも、家に置いておくと、うじ虫がたかって、品質が悪くなるから、早めに買い取ってもらえって、毎回言ってるだろ。いい加減覚えろよ」
そういえば、前も同じ説明を受けていた気がする。
「ごめん、そうだったね」
ボクはサムズアップしながら笑顔を作った。
「ファイヤー・ウルフの毛皮、できるだけ高く買ってもらえよ。高く買ってもらえなかったら、どうなるか分かってるよな?」
ボクを睨みながらパキパキと指を鳴らすラカン。
「うん、分かってるよ……」
どうなるかって、もしも安く買われたら、人間サンドバッグにされてしまうってことでしょ?
1度素材を安く買いたたかれて、ラカンがぶち切れて、死にそうな目にあったもん。
バカなボクでも命に関わることは、忘れるわけないよ。
「分かっているならそれでいいんだ。日が落ちてきているから、そろそろ、冒険者ギルドも閉まる頃合いだ。はやく行けよ」
「わかってるよ」
パシらされるのは毎回のことだが、あまり役に立ってないから仕方ないよね。
「それじゃあ、解散!」
ラカンの一声で、ボクは自分の脚に鞭を撃ち走り始める。
「肩こっちまったなー」「私も相当、疲れてるわー」「あ、あ、あの、お疲れ様です、ラカンさん、アイズさん」
小さくなっていく3人の話し声を聞きながら、ボクも雑談に混ざりたかったな……と思ってしまう。
いつからだろう?
素材の鮮度を優先して現地解散が当たり前になり、ボクだけ走って帰るようになったのは。
……うん、全然思い出せない。
思い出せないけど、とにかく急がなきゃ。
そうしないと、ラカンにボコられる。
ボクは猛スピードで町へと向かった。
忙しい人のまとめ話
ラカンとサイレントは、レベルチェックをしない。
サイレント、素材売りのパシリをさせられる。