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第16話 サイレントとアリア、おばあさんから朝食に誘われる

前回のあらすじ


 アリア、おばあさんの香りで人狼じゃないことを確信する。

 アリア、一緒にシャワーを浴びようと提案するが、サイレント断る。






 

「あ、そうだ。タオルを渡してなかったね。タオルはこれを使っておくれ」

 おばあさんはタオルを持って、リビングまでやってきた。


「ありがとうございますデス」

 ボクとアリアのタオルを受け取ったアリアは恭しく頭を下げる。


「アリア、シャワーを浴びてくるデス」

「いってらっしゃい」

 ボクは手を振り、窓から辺りをうかがう。


 スライムはいなさそうだ。


 念のために警戒を続けよう。

 ボクはアリアがシャワーを浴びている間、警戒し続けた。


 …………

 ……


 たったったっ……


「師匠、シャワー、気持ちよかったデス!!」

 シャワーを浴びおえたアリアが走って来た。


「良かったね、アリア……って、あれ? アリア、足の怪我は大丈夫なの?」

「シャワーを浴びたので、ほとんど治ったデス。シャワーはすごいデス」


「そっか、すごいシャワーなんだね」

 もしかしたら、シャワーに傷を治しやすくする成分でも含まれているのかもしれないな……


「師匠も浴びると良いデス」

「うん、そうさせてもらおう。念のために、ボクが戻ってくる間、警戒を続けてね」


「分かったデス」


 ボクは服を脱ぎ、シャワーを浴びる。


「久しぶりのシャワー、気持ちいい!!」

 水しかでないが、とても気持ちいい。

 ボクは汗を洗い流した。


 あれ? でも、このシャワー、どこにでもあるような普通のシャワーだよな……

 アリアの傷を瞬時に回復させるような魔力も成分もなさそうだけど……ま、いっか。

 気持ちいいし。


「あー、さっぱりした」

 おばあさんの用意してくれたタオルで体をふいて、部屋に戻る。


「魔王軍、許すまじ!」

 部屋の前に立つと、部屋の中からアリアが殺気を放ちながら、大声を出したので、とっさに身構えてしまった。


 まさか、スケアード・スライムが襲って来たのか?

 ボクは警戒しながらも素早く部屋に入る。


 部屋の中に入ると、アリアはゴスロリ服で大鎌を抱えたままベッドで横になっていた。

「怪我はない、アリア!?」

「打倒、魔王……むにゃむにゃ……」


「なんだ、アリアの寝言か……」

 まったくもう、アリアは。

 スケアード・スライムが襲ってくるかもしれないから、警戒してって言ったのに、寝てるんだもん。


 ボクは体を揺らしてアリアを起こそうとしたが、その手を止めた。


 アリアはボクみたいなベテラン冒険者じゃないんだ。


 はじめて町から出て、ドラゴンと戦って、空から落とされて、ボクが無理矢理つかんだせいでケガまでした上に、スライム達に追いかけられたんだ。

 そりゃ、疲れるよね。


 うん、寝てしまっても仕方ないよ。

 ボクはアリアに薄い毛布をかけてから、寝顔をそっと覗きこんで、外の気配を探る。


 うん、何もいなさそうだ……って、スケアード・スライムはボクの気配察知にひっかからないんだった。


 直接、目視しなくては。

 ボクはカーテンを少しだけ開け、窓から外を覗き見る。


 暗くて見えづらいけど、スライムはいなさそうだ。


 念のためにおばあさんの気配も探る。

 気配から察するに、どうやら、下の階でベッドに横になって眠っているようだ。


 呼吸も正常。

 他の物が動く気配もない。


 おばあさんの言う通り、スライムはこの家には来ないだろう。


「ボクも寝るか……」

 少しばかりの不安もあったが、ボクはアリアが使っていないベッドに座ると、横になった。


 ――翌朝――


「ふわぁ……」

 アリアが起き出した。


「おはよう、アリア」

「おはようございますデス、師匠」

 アリアはすっきりとした顔で挨拶をしてくる。


「師匠はもう起きていたんですね。朝が早いデス」

「それは……もしかしたらスケアード・スライムが襲てくる可能性もあったから、熟睡していなかったんだよ」

 ボクはしれっとウソをつく。


 本当は、アリアが魔王に対して、寝言を言いながら殺気を放っていて、全然眠れなかったからだよ……とは言えない。


「はっ、そうでした。ごめんなさいデス、師匠。アリア、警戒しろろ言われていたのに、途中で寝てしまったデス」

「仕方ないよ、初めての冒険なんだから」


「アリア、冒険するの初めてじゃないデスよ?」

「え、そうなの? でも、ボクと冒険するのは初めてでしょ?」

「そうデス」


「それなら、やっぱり仕方ないよ。慣れないことをずっとしていたんだしさ。それに、結果的にスケアード・スライムは襲ってこなかったしね」

「師匠、優しいデスね」


「そうかな?」

「アリアは師匠の優しさに甘えずに、師匠みたいに寝ないで警戒できるようにならなくてはいけないデス!!」

 意気込むアリア。


 その必要はないんじゃないかな……

 あれだけ殺気を出していたら、スライムどころか、魔王だって寄り付かないよ。


 アリアには言えないけど。


 コンコン。

 ふいに、ドアのノック音がした。


 気配から察するにおばあさんだろう。


「はいデス」

 アリアはドアのノックに返事をしながらドアを開ける。


 うん、ドアノブの開け方も気品のある開け方だ。

 優雅。


「朝ごはん、一緒に食べるかい?」

 アリアはボクの方を見て、顔色をうかがってきたのでボクはにこりと笑みで返す。


 おばあさんが人狼じゃないのなら、好意は頂いておいた方が良いに決まってるじゃないか。


「いただくデス」

「それなら、リビングにおいで」

「分かったデス」


 アリアは静かにドアを閉め、ボク達はリビングへと向かう準備をした。


忙しい人のためのまとめ話


 アリア、サイレントがシャワーを浴びている間、眠ってしまう。

 翌朝、おばあさんから朝食に誘われる。

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