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第13話 サイレントとアリア、おばあさんからスケアード・スライムが襲ってこない理由を聞く

前回のあらすじ


 サイレントとアリア、おばあさんから話をきく。

 おばあさん、人狼の恩返しについて話し始める。




 

「いや、大切でしょ、そこ。だって、恩返しに来たって言って、裸の女の子がいたら、おばあさんだってびっくりするだろうしさ」

「そこは大切じゃないデス」


 アリアは頬を膨らませてそっぽ向く。


「きちんと服は着ていたさ。ボロだったがね」

「人狼って、服とか作れるの? だって、狼姿の時は基本裸でしょ?」


「人狼は、服や装飾品の原料を持っていれば、そのままコピーできるデス」

 アリアはこたえてから、頬をぷくーっと膨らませる。


 そんなに怒らせるような質問だったかな?


「へー、つまりは、布の原料になるようなものを持っていたというわけか」

「おそらく、森の中で布の原料になりそうな素材を見つけてから、おばあさんを訪ねたのでしょう」


「なるほど。ちなみに、原料を持っていなかったらどうなるの?」

「その時は、持っている原料で似たようなものを作るみたいデス」


「えっと、つまりどういうこと?」


「例えば、包丁をコピーしようとしても、鉄がなく、木しか持っていなかったら、木製の包丁になるデス」


「なるほどね。コピーされた木製の包丁は、鉄製の包丁と同じように、食材を切れるの?」


「本物と同じようにはきれないデス。木製なので」

「見た目がそっくりなだけってことか」


「そういうことデス」

 アリアはこくりと肯いた。


「へー、すごいんだね、パーフェクト・コピー」

「ついでに言うと、パーフェクト・コピーの力で他の生き物にもなれるデス」


「生き物ってことは、象とかアリとかにもなれるの?」

「それはできないみたいデス。人狼の体重より2倍以上大きい姿や、逆に体重が半分以下の生物にはなれないみたいデス」


「へー、そうなんだ」

 2倍とか半分とかは分からないけど、とにかく、大きすぎもダメだし、小さすぎてもダメだということか。


「それじゃあさ、魔物にもなれるの?」

「はい、大きすぎず、小さすぎなければ、なれるはずデス」


「なるほど。色々な生き物になれるけど、今は、女の子の姿になっているということか」

「他の人や生き物に変身していなければ、そうデスね」


 なるほど、もう一度気配察知をしてみよう。

 何か他の生き物がこの家にいるかもしれない。


 …………

 ……


「今、この家の気配を察知してみたけど、この家にボク達以外の生き物の気配はないよ」


「当然さ。人狼は出て行って、この家には私しか住んでいないからね」

 おばあさんが口を開いた。


「出て行った? つまりは、今日まさに恩返しが終わったってこと?」

「恩返しが終わったわけではないんだ」

 おばあさんは悲しそうに首を横に振る。


「それなら、喧嘩でもしたの?」

「あんなに優しい子と喧嘩になんかならないさね」


「恩返しでも喧嘩でもない……何で出て行ったの?」

「人狼のルプスがガリガリにやせ細っていったのさ」


「どうしてやせ細ったんデスか?」

「私が人狼のルプスを怖くないと思ってしまったからさ」


「なるほど、そういうことデスか」

 アリアは一人で納得する。


「どういうこと?」

「師匠、人狼の主食は何デスか?」


「それは人間の恐怖でしょ?」

 それくらい覚えているんだから。


「おばあさんが人狼のことを信頼して、恐怖を感じなくなってしまったら、人狼はどうなるデスか?」

「あ、人狼はお腹が空きっぱなしだ!!」


「その通りデス」

「お腹が空いてしまったルプスは魔物の恐怖で飢えを凌いだらしいのさ」


「魔物の恐怖デスか?」

 とてつもなく驚くアリア。

 別に驚くようなことでもなさそうだけど……


「ああ、そうだよ」

「それは、一大事です」


「ん? 魔物の恐怖だと何で一大事なの?」

 同じ恐怖じゃないか。


「魔物の恐怖は人狼にとって毒みたいなものなんデス」

「毒だって?」


「そうデス。人狼が魔物の恐怖を食べたら、一時的にはお腹がいっぱいになるのデスが、その反動として、体重が減っていくんデス」


「何だって!?」

「魔物の恐怖が毒になって痩せていくということは、ルプスがここを出て行く直前に聞かされたことだがね」


「まさか、あのスケアード・スライムの大群って、もしかして……」

「全部ルプスの仕業らしいさ」


「あの量のスライムから恐怖を得たってこと?」

「その通りさ。スライムにとって、ルプスの香りが染みついているこの家はトラウマなのさ。だから、あいつらはここを襲ってこないのさ」


「なるほど、筋は通っていますデス」

「私の話を信じてくれるかい?」


「筋は通っているデスが、信じるかどうかは別デス。おばあさんが人狼じゃないという証明にはならないデス」


「ちょっと、待って。人狼が狼の姿の時って何色の毛をしているの?」

「銀色さね」

 おばあさんの返答を聞いて、ボクは鳥肌がたった。


「ここに来る前に、ボクが見た反対方向に走り去った狼、確かに、銀色の毛だったよ、アリア」

「間違いないデスか?」


「間違いないよ。この両の目でしっかりと見たんだから、きっとこのおばあさんが言っていることは本当だよ」

「師匠が目撃したと言うなら、本当の可能性が高いデス」


忙しい人のためのまとめ話


 おばあさん、人狼を怖くなくなる。

人狼、スライムの恐怖を食べてやせ細ったので、おばあさんの家を出て行った。

 



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