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第12話 サイレントとアリア、おばあさんから話を聞く

前回のあらすじ


 サイレント、おばあさんを襲うアリアを止める。

 おばあさん、人狼について話し始める。




 

「四天王の人狼が人間の家にいたんデスか?」

 素っ頓狂な声をあげるアリア。


「ああ、この家にね」

「にわかに信じられないデス」


「そうかもしれないが、聞いておくれ。名前をルプスと言ってね」

 ルプス……

 おばあさんが呟いていた言葉は、人狼の名前だったのか……


「どうして、人狼がおばあさんの家に来たんデスか?」

「不思議に思うだろ?」

「そうデスね」


「私はこの家に、狩人の旦那と過ごしていたんだよ。だけど、つい先日、旦那が亡くなってね」

「それはご愁傷様デス」

 アリアはおばあさんを瞬きせずに見つめながら、感情を乗せることなく返答した。


「ここは野生の獣や魔物が多くてね。ここで独り暮らしは難しいから、家を出て、カバッカの町に定住しようと思っていたのさ」

「そうだったんデスね」


「荷物をまとめて、いざ引っ越そうとした時、家の庭に狼が倒れていたんだよ」

「狼? 今は人狼の話をしていたんだよね? 人狼は人間の姿をしているんじゃないの?」

 ボクはおばあさんに尋ねてしまっていた。


「師匠、人狼は、人の姿にも狼の姿にもなれるんデス」

「へー、そうなのか。つまり、狼の姿をした人狼が庭に倒れていたってこと?」


「そういうことだね」

 おばあさんはこくりと肯いた。


「庭にいた人狼を、おばあさんはどうしたの?」

「その狼は傷はないのだが、お腹がぐうぐう鳴っていてね。空腹の状態だとすぐわかったんだが、相手は狼だ。下手に近づいたら食い殺されてしまう。ここで数日、恐怖に耐えていれば、きっと息を引き取るだろうと思って、家から眺めていたんだ」


「へー」

 それは賢明な判断だ。

 空腹の状態なら、そのうち息を引きとるだろうしね。


「ところがだ、その狼は瀕死の状態で一歩も動けないというのに、死ぬどころか時間が経つにつれて元気を取り戻していくじゃないか。だんだんと気味が悪くなってね」

「ん? 元気を取り戻した? 何も食べていないのに、何で?」

 人狼の主食が空気だったとか?


「師匠、人狼の食べ物は人間の『恐怖』デスからね」

「恐怖だって?」


「はい、そうデス。人が怖いと思えば思うほど、人狼の栄養になるんデス。言い伝えでは、人狼は例え死んでしまっても、恐怖があれば生き返るとか、恐怖を食べれば食べるほど、際限なく強くなる……なんてことも言われているデス」


「えー、死んでも蘇るし、強くなるだって!!」

 ボクは驚いてしまう。


 人狼ってSランクだって言っていたよね?

 Sランクって、Fランクのスライムより弱い魔物ってことだよね?


 弱いくせに、なんて生命力の強い魔物なんだ。


「……あ、でも待てよ。スライムとかゴブリンって、毎日毎日、倒しても倒しても、どこかから次々に現れるもんな……魔物ってそんなものか。だって、魔物だもの」


 不死身という点では、スライムも人狼も似たようなものか。

 強くなると言っても、どうせスライムやゴブリンよりは弱いだろうしね。

 なーんだ、驚いて損した。


「師匠、話を戻してもいいデスか?」

「あ、ごめん、ごめん」


「おそらく、おばあさんの恐怖は、人狼にとって一番の栄養だったので、瀕死から回復していったってことデスね」

「その通りさ」

 おばあさんはこくりとうなずく。


「その後、人狼はどうしたの?」

「いつの間にか消えちまっていたのさ。きっと、回復して、どこかに行ってしまったんだと思っていたんだがね。その晩のことだ、人間の女の子が我が家の門戸を叩いてくるじゃないか」


「女の子デスか?」

「もしかして、その女の子の正体って……」


「お察しの通り、倒れていた狼だよ」

「えーっ!!」

 ボクは大声をあげてしまった。


「狼が女の子にフォルムチェンジしたってことデスね」

「そうさね。『わっちはおばあさんの家の庭で倒れていた狼のルプスという者です。あなたの恐怖のおかげで回復をすることができました。恩返しをしたいから、住まわせてくれませんか』……って言ってね」


 まさかの、人狼の恩返し!!


「おばあさんは受け入れたんデスか?」

「追い返そうかとも思ったんだが、ここで追い返しでもしたら、狼姿になって、私の喉元を食いちぎってしまうんでないかと思ってね。死を覚悟して恩返しを受け入れたよ」

 死を覚悟したって……


「確認なんだけど、おばあさんは今、生きているよね?」

 実は幽霊でした……なんてことはないよね?


「この通りピンピンの健康体さ」


 力こぶを見せてくるおばあさん。

 いや、ガリガリにやせているから、健康体かどうかなんてわからないんだよ。


「ちょっと待って。狼がフォルムチェンジしたってことは、もしかして、その女の子は裸だったとか?」

「師匠、なんてことを聞くんデスか! アリアの目の前で!!」

 アリアは顔を真っ赤にしながら怒る。


忙しい人のためのまとめ話


 サイレントとアリア、おばあさんから話をきく。

 おばあさん、人狼の恩返しについて話し始める。



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