第11話 アリアVSおばあさん?
前回のあらすじ
サイレント、おばあさんを疑う。
アリア、おばあさんを大鎌で襲う。
「放してください、師匠! おばあさんの首がとれないデス」
「いや、証拠もないのに、アリアにそんなことさせられないよ」
「首を差し出したってことは、おばあさんは人狼に違いないデス」
「そんなの状況証拠じゃないか!」
「私は人狼じゃないよ! あんた達が人狼じゃないのかい?」
「ボクもアリアも人狼じゃないよ! ね、アリア!!」
そもそも、人狼が何かよく分かってないけど、きっと違うはずだ。
「そうデス! アリアたちは人狼じゃないデス!!」
「それならそうとはやく言ってくれよ。首を差し出して、命を落とすところだったじゃないか!」
「どうやら、アリアもおばあさんもお互いに勘違いしていたみたいだね。そうと分かったら、大鎌を降ろすんだアリア」
話から察するに、おばあさんはボク達が人狼で、アリアはおばあさんが人狼だと思っていたってことだろう。
よく分からないけれど、これで一件落着だな。
「そうだよ、あんたたちが人狼じゃないなら、そんな物騒なものを降ろすんだ。そして、お茶でも飲んで一息しなさい」
おばあさんは両手にティーカップを持って近づいて来た。
「待つデス」
「どうしたの、アリア?」
「おばあさんは、こちらに近づかないでください」
「何で、そんなに警戒してるの、アリア?」
「もしも、おばあさんが人狼だったら、体に触れさせてはいけないからデス」
「どうしてさ?」
いや、まずは、人狼のことを説明して欲しいんだけど……
「人狼が相手の体に触れた瞬間、パーフェクト・コピーという能力が発動するデス」
「何? パーフェクト・コピーって?」
見たことも聞いたことのない能力だ。
「相手の記憶や人格や体型や気配など、その人の全てをコピーする特殊スキルです。このスキルを使えば、本人そのものになりすますことも可能デス」
へー、そんな便利なスキルが使える魔物がいるのか……
「ん? それってつまり……」
「このおばあさんは偽物で、人狼がなりすましているかもしれないということデス。そして、アリア達に触れて、アリア達の全てをコピーしようとしているかもしれないデス」
「そっか、その可能性もあるよね」
良く分からないけど、とりあえず、うなずいておこう。
バカと思われないために。
「納得していただけたなら、手を離してほしいデス」
「OK……じゃないよ! おばあさんがもしも人狼じゃなかったら、アリアの大鎌で致命傷じゃないか!!」
下手したら死んじゃうよ。
「でも、人狼のコピーは完璧なので、致命傷を与えないと、人狼かどうか分からないデス!!」
必死に大きな声で叫びながら訴えかけてくるアリア。
「それはそうかもしれないけど、おばあさんが首を差し出している時点で人狼じゃないって言えないの? 本当の人狼なら自分の首を差し出したりしないでしょ?」
人狼が自殺志願者でもない限り、自ら首を差し出すなんてことはしないはずだ。
「人狼が自分から首を差し出すわけはない……という師匠の考えまで見越して首を差し出すほど狡猾なんデス」
「なんてずる賢いんだ、人狼!!」
ボクの考えまでも計算に入れるなんて……
「そもそも、おばあさんが人狼のことを知っていること自体が怪しいんデス。人狼は魔王直属の四天王の一人で、Sランクの魔物デスよ?」
「確かに」
『魔王直属の四天王の一人』という言葉の意味はよく分からないけど、人狼という魔物のことを冒険者歴の長いボクが知らなかったのに、魔物ハンターでも冒険者でもないおばあさんが、人狼を知っていること自体がおかしい。
納得したボクは、アリアを放してしまった。
「うぎゃ」
急に解放されたアリアは、壁に顔をぶつける。
「あ、ごめん、アリア。ケガはない」
「大丈夫デス」
ボクはアリアの手を取って、アリアを起こした。
「どうやら、ボクが間違っていたみたいだ。このおばあさんは怪しいよ」
ボクはダガーを手に持ち、何があってもいいように身構える。
「ちょっとお待ち、あんたたち」
「何を待つデスか? 自分の犯した罪を数えて、念仏でも唱えるデスか?」
「そうじゃないさ。私は言いたいことがあるのさ」
「言いたいことって、遺言デスか?」
「遺言でもないさね。何で私が人狼を知っているか、説明させておくれ」
「……と言っているけど、どうする、アリア?」
「話だけは聞いてあげるデス。ただし、妙な動きをしたら、命はないと思ってくださいデス」
「ありがとうよ。ついさっきまで我が家にいたんだよ。人狼が」
おばあさんがぽつりと語り始めた。
忙しい人のためのまとめ話
サイレント、おばあさんを襲うアリアを止める。
おばあさん、人狼について話し始める。