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第6話 サイレント、マジック・バックの中見をアリアに見せる

前回のあらすじ

サイレント、アリアにマジック・バックを披露する。

アリア、サイレントにマジック・バックを披露する。








 

「師匠のマジック・バックの中には、具体的に何が入っているんデスか?」


「タンスとか、服とか、食器とか、薪とか、枕とか、火打ち石とかかな。あ、でも、水をそのまま入れちゃうと、他の物が濡れちゃうから、水は入っていないよ」

 言いながらじゃんじゃん入っているものを出していく。


「すごいデス。100㎏は軽く越えてるデス。こんなに入れることができるってことは、師匠はAランク魔法使いくらいの魔力総量があるっていうことデスよね?」

「Aランク? はっはっはっ、それは大げさすぎ!!」


 ボクがAランク魔法使い?

 そんなはずはないじゃないか。


「いやいや、それくらいデスよ」

「魔力の総量っていうのは精神的な強さなんだよ? Aランクの魔力総量なんていったら、霞を食べるような仙人の生活をしないといけない……って、アイズやブリジットがぼやくレベルだよ? ボクが精神的に強いはずがないじゃない」


 きっと、アリアはボクをからかっているに違いない。

 こういう時は話を流しながら聞くのが一番だ。


「デスが、師匠、Aランク魔術師に匹敵する魔力がないと、こんなことできないデスよ?」

「これ位でおおげさだよ、アリア」


「いやいや、おおげさでも何でもないデス。師匠はすごいんデス」

 アリアが尊敬のまなざしでこちらを見てくる。

 あれ?

 もしかして、これ、冒険者を諦めさせることができるんじゃないか?


「はっはっはっ、この程度で驚いているようじゃ、冒険者は務まらないよ、アリア」

「どういうことデスか?」


「冒険者になるには、これくらいの荷物、簡単に運べるようにならないといけないんだよ」

「そうなんデスか?」


「そうそう。この前なんて、ファイヤー・ウルフっていう魔物をたくさん暗殺した時は、この荷物に加えてマジック・バックで毛皮を冒険者ギルドまで運んだんだ。いつもボクが持ち歩いているくらいの物を持ち運べないなら、冒険者なんて夢のまた夢だよ」


 ボクはあごに手をあてて、格好良く決めポーズをしながらアリアに騙った。


「師匠、そもそも、冒険者は物を持たないから、ポーターを雇うんデスよね? どうして、物が持てないと冒険者になれないんデスか?」

「あ」


 しまった。

 そうだよ。

 ボクがマジック・バックを使えることは、ラカン達にも秘密だったじゃないか……


「えっとね、それくらいの物を持ち運べるくらいまで魔力の総量をあげなければいけないということだよ、アリア」

 我ながら苦しい言い訳だ。


「なるほど……確かに、師匠のようにAランクの魔物、ファイヤー・ウルフを1人でたくさん狩れるようにならないといけないデスよね」

「Aランク? いやいや、ファイヤー・ウルフはFランクでしょ?」


 まったく、何を言っているんだアリアは。


「炎を吐かないウルフだったらFランクデスが、その最上位種である炎を吐くファイヤー・ウルフは、Aランクだったはずデスよ」

「確かに炎を吐こうとしていたけど、ボクが戦ったファイヤー・ウルフはFランクだよ、アリア」


 この前の時は、ラカンがFランクのウルフを狩りに行くって言っていたし。

 そもそも、Fランク冒険者のボクがいるのに、Aランクの魔物を討伐するわけないじゃないか。


「デスが……」

「きっと、ファイヤー・ウルフの中にも序列があるんだよ。で、ボクが倒したのはFランクのウルフだったに違いない」


「ファイヤー・ウルフに序列なんかないデス」

「それなら、ボクが倒したのは、ファイヤー・ウルフじゃなかったんだよ」


 ボクがAランクの魔物なんか倒せるわけないじゃないか。


「そうなんデスかね?」

「そうそう。普通のウルフだったんだよ」


 ラカンがAランクの魔物とボクを戦わせるわけないじゃないか。


「ところで、師匠、先ほど、地図を家に忘れたと言っていましたが、何で地図だけ家に忘れたんデスか? 基本はマジック・バックに入っているんデスよね?」

「えっと……」


 まずい。

 そもそも地図を持っていなかった……なんて言えないぞ。


「……そう、地図は机の上に置きっぱなしにしていたんだよ、たまたま」

「そうなんデスね」


「そんな地図のことよりも、アリアは水浴びをして足のケガを治さないと」

 まだ何か言いたそうなアリアの言葉を遮って、話題を切り上げ、水浴びへと促す。


「そうデス、アリアはやく水浴びしたいデス!!」

「よし、火を用意するから、待っていて」


「師匠にそんな雑用を任すわけにはいかないデス。ここはアリアが火起こしするデス」

「大丈夫だよ、火を起こすくらい、すぐにできるから」

 ボクは手際よく火打石をカチカチならし、火種を作って、それを枯草で育てる。


「よし、火は着いたよ」

「さすが手慣れているデス、師匠」


「あれ? でもさ、もし、この炎にカバッカ町の誰かが気付いて、ここに来たら捕まっちゃうんじゃない、ボク」

 煙が登っていたら、誰かが来てしまうかもしれない。


「生木じゃないですから、そんなに煙は出ないので気づかないはずデス。万が一、人が来たら、アリアが対応するデス。アリアの顔はほとんどの人にはバレていないはずデスから」


「おお、その手があったか。よろしくね、アリア」

「任せるデス」


「ボクは周りに魔物や野生動物がいないか見張ってるから。もしも襲われそうになったら大声で叫んで。すぐに駆け付けるから」

「分かったデス」


 アリアが水浴びの準備を始めやすいように、ボクはアリアに背を向けて歩き始めた。


忙しい人のためのまとめ話

サイレント、マジック・バックの中をアリアに見せる。

アリア、水浴びをしようとする。

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