第52話 サイレント、ホバッカの村に向かう!?
6月10日、後書きを修正しました。
(本編は修正していません)
前回のあらすじ
サイレント、無自覚にアリアに告白して、ダークドラゴンが契約を了承する。
致命傷を負ったダークドラゴン、サイレントとアリアを背中から落とす。
「……って、あれ? 何も起こってないデス」
ボクが何事もなかったかのように地面に立っている姿を見て、大きな目をぱちくりとさせるアリア。
「どうしてデスか?」
「鎌が地面に着く瞬間、ジャンプしたんだ」
「なるほど、鎌が地面についた瞬間にジャンプすることで、落下速度を相殺させたんデスね。さすが、師匠」
「そうそう、その通り。落下速度を相殺させたんだよ」
落下速度?
相殺?
アリアはよく分からない呪文を唱えているけど、とりあえず、オウム返しをして頷いておこう。
バカと思われないために。
「そんな無茶苦茶なこと、師匠しかできないデス」
アリアは目を輝かせる。
「そんなことないよ。誰でもできると思うよ。ボクもはじめてだったけど、ちゃんと成功したしね」
「あんなに自信たっぷりだったのに、はじめてだったんデスか?」
「うん、はじめてだった」
「失敗したらどうしよう……とか、考えなかったんデスか?」
成功するイメージしか考えてなかった……って言ったら、失敗するリスクを考えていないバカだと思われるかもしれない。
「失敗しそうだったら、アリアだけでも上に放り投げて助けるつもりだったよ。もちろん」
「師匠」
目を潤ませ、がしっと抱き着いてくるアリア。
それはそうだ。
アリアに大ケガさせたなんてことが院長先生にばれたら、打首獄門の刑にあうしね。
何があっても守らなければ。
そして、守る意志があったことをつぶさに伝えていかないと。
「大丈夫、アリアはボクが守るから」
「師匠、愛の告白以上に嬉しいデス」
愛の告白?
ああ、そういえば、さっきダークドラゴンがしていたっけ……
「ところで師匠、ダークドラゴンが飛ぶくらい高く跳べるなら、司祭様を倒すときに、瞬動を使わずに、ただ、ジャンプして距離を詰めれば良かったんじゃないデスか?」
「あ……」
言われてみればそうだ。
なんで瞬動にこだわっていたんだろう……
だけれど、『その通りだね、あはは』……なんて言ったら、バカだと思われるだろう。
ここはうまくごまかさないと。
「あ……アリアがどんな行動をするか確かめたくてね。ほら、一応ボク師匠だし。もちろん、アリアが何もしなかったら、すぐにジャンプして倒す予定だったよ」
「司祭様が回復魔法を使うかもしれないギリギリの状況で、アリアがどのような行動をするか試していたとは、さすが師匠デス」
「そんなことないよ。さて、邪魔が入ったけど、それじゃあ、ホバッカの村に行こうか」
「師匠、カバッカの町に戻らなくていいんデスか?」
「何で、追放された町にもどらないといけないの?」
「ダークドラゴンを倒したから、冒険者ギルドに報告をしないといけないのではないデスか?」
ダークドラゴンを倒したことを報告?
ダークドラゴンはSランクの弱い魔物なんだよ。
Aランクの強い魔物がカバッカの町を狙っているわけでもあるまいし、弱い魔物の報告をしたところで、町の連中に捕まるだけだ。
「わざわざ報告する必要なんてないの。ドラゴンなんて、道にいるスライムみたいなものなんだから」
「ドラゴンなんて、道にいるスライムみたいなもの……さすがデス、師匠。名言いただいたデス」
「え? ああ、まあね」
名言?
ボク、そんなすごい名言を言っただろうか?
よく分からないけど、深く追及するのは止めておこう。
バカと思われないために。
「それよりも、はやくホバッカの村へ行こう!!」
「わかったデス!!」
ボクはアリアをお姫様抱っこをしながら、ホバッカの村に……
「あのさ、アリア、ところで、ここは何処?」
ホバッカの村に……向かえなかった。
「アリアも分からないデス」
「どうしよう。ボクも分からない」
多分、カバッカ町とホバッカ村との中間地点くらいだろうけど、ボクの知っている道じゃない。
……ドラゴンを追ってて、迷子になってしまった……どうしよう?
第1章 完
第1章を読んでいただき、ありがとうございました。
第2章に続きます。