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第49話 サイレント、アリアにキレる

前回のあらすじ

サイレント、ダークドラゴンに一緒に町を滅ぼそうと誘われる。

サイレント、断る。




 

「師匠とやらの命が惜しければ、吾輩と一緒に来い!!」

 ダークドラゴンはアリアへと手を差し出す。


「アリアは絶対に渡さない! アリア行くんじゃない!!」

 ボクは地面に這いつくばりながら叫んだ。


「師匠、もういいデス」

 とぼとぼと肩を落としてダークドラゴンの元へと歩き出すアリア。


「どうして諦めているんだ、アリア!」

「師匠の命にはかえられないデス。エスコートされたくはないデスが、ここはついていくしかないデス」

 アリアはこちらを振り返りもせずに、ドラゴンの元へと向かう。


「それ本心?」

「本心……デス」

 頷くアリアの握りこぶしは確かに震えていた。


「これで分かったか? この者は吾輩についてくることを望んでいるのだ」


「おい、ちょっと待てよ!!」

 ボクは声が枯れるくらい大きな声を出す。


「なんだ愚かな人間?」

「お前じゃない。ボクはアリアに言っているんだ!!」


「何デスか?」

「アリアの夢は魔王を倒すことじゃないのか?」

「それは……そうデス」


「魔王ってのは、このドラゴンよりも強い存在なんだろ?」

「そうデス」


「それなら、何で戦いもせずに降伏してるんだよ?」

「それは、ドラゴンがSランクで強いから……」


 ドラゴンが強い?

 相手はFランクのスライムより下のSランクなんだよ、アリア。

 強いはずないじゃない。


「今ここでSランクの魔物も倒せないようじゃ、一生魔王なんて倒せないよ!!」

「それは分かってるデス。でも、こんなに力の差がある相手なんてできないデス」


「確かに、今のアリアでは手も足も出ないかもしれない……でもさ、心で負けるなよ。ここにはボクもいる。こういう場面では、一緒に倒してくださいじゃないのか?」

「そうデスね。師匠の言う通りデス。アリア、戦うデス。師匠、一緒に戦って欲しいデス!!」

 その言葉には力がこもっていた。


 うん、良かった、良かった。

 アリアは強いんだから、スライムより弱い魔物でやる気をなくすなんてもったいないよ。


「吾輩を倒すだと!? ふざけるな、ぎゃおー」

 ドラゴンが吠えると、アリアはその場に倒れてしまった。


「くっ、地面が歪んで見えるデス……」

 戦おうとした瞬間、大鎌を杖代わりに使うアリア。

 ドラゴンの咆哮で平衡感覚をやられたのだろう。


「あ、無理に戦おうとしなくてもいいから。とりあえず、休んで回復をするんだ、アリア」

 アリアにケガさせたら、ボク、院長先生に何をされるかわからない。

 ここはボクが出張るしかないな。


「アリアは連れ去りたいなら、ボクを倒してからにしろ!!」

 ドラゴンの鳴き声にも負けないように大声で吠えながら、こちらに注意が向くように体を起こした。


 平衡感覚がおかしく、目の前がぐにゃぐにゃになっているが、戦えるはず……

 いや、今、戦わなきゃ、冒険者じゃない!!

 ボクは失った平衡感覚を気にせずにドラゴンの元へと走り出す。


「ほざけ、人間!! ぎゃおー」

 またも大きな咆哮。


「はいはい。咆哮をあげるのは分かってました。弱い魔物ほどよく吠えるっていうけど、どうやら君はその代表みたいだね」

 ボクは耳を塞ぎながら、ゆっくりと歩くアリアを追い抜き、ドラゴンへと突進する。


「音の対処をしたからなんだというのだ。主は吾輩に傷一つつけることはできぬわ」

「そうデス、師匠、やみくもに攻撃してもダメデス!! ドラゴンの体には魔法障壁が何重にも施されている上に、うろこの硬度は固く、並大抵の刃物じゃ貫通しません」


「ふはは、その通り。マヌケな人間よ、逆にそのダガーの刃を折ってくれるわ」


 魔法障壁?

 そんなの、Fランクより弱いSランクの魔物がそんな器用なことできるわけないじゃないか。

 まったく、大げさだな、アリアは。


「試してあげるよ!!」

 突然変異したてのトカゲなんか、スライム並みに弱いはずだ!!

 ボクはできる限り加速をして、最高速度でドラゴンの脚へダガーを突きつける。


「ふははは。愚かなり……ぐはぁ」

 ドラゴンが小さな悲鳴をあげた。


「吾輩の固いうろこを貫いて皮膚まで傷をつけた……だと?」

 ドラゴンの脚から、血がたらりと流れ出ている。


「師匠、すごいデス!!」

「いやいや、トカゲの脚くらい切れるでしょ」

 やっぱり、Sランクの弱い魔物に魔法障壁なんてあるわけないよ。


「やってくれたな、小僧。だが、この程度の攻撃、吾輩にとってはかすり傷だ。致命傷には程遠いぞ」

「……って、あれ? 再生しない? トカゲの脚って、すぐに再生するんじゃなかったっけ?」


「師匠、再生するのはトカゲのしっぽデス」

「あ、そうだった」


「そもそも、ドラゴンはトカゲじゃないデス」

「え、あ、そうなの?」


 まずいな。


 ボクの計画としては、まず、ドラゴンの足を傷つけて、ドラゴンが超回復。

 →超回復の途中でドラゴンは魔力を使い切る。

 →魔力がないドラゴンは『今日のところは勘弁してやろう……』とかなんとか捨てゼリフを言って撤退……って流れにしたかったのに……


 このままでは計画は台無しじゃないか。


「それではこちらからも行くぞ、小僧」

 言いながら、ボクに連続で噛みついてくるドラゴン。

 早い!!

 図体が大きいのに。


「師匠、避けてくださいデス。師匠があんな鋭い牙で1度でも噛みつかれたら、師匠の体はかみ砕かれて、あの世逝きデス」

 Fランクにあの世逝きは大げさだよ、アリア。

 まあ、あの世逝きってことはないにしても、それ相応のダメージをくらいそうだけれども。


「言われなくても、すべて避けきるよ、アリア!!」

 ボクは華麗にすべてを避ける。

「何? 吾輩の攻撃が当たらない……だと!?」


「そうだよ、図体の割には早い動きをするけど、それでも、ボクの素早さからしたら、君の攻撃は遅いんだ」

「それがどうした?」


「え?」

「避けていれば、いずれ体力も尽きるであろう。その時がお前の最後だ」


「避けているだけだと思ったら大間違いなんだからね」

 避けるついでに、ダガーでほっぺを攻撃しておいたんだから。

 ダークドラゴンのほっぺから、血液がにじみ出す。


「小僧、少しはやるようだな」

「突然変異のSランクのトカゲには負ける気はないよ」


「師匠、本当にすごいデス!!」

 興奮するアリア。


「人間のくせに生意気な」

 ドラゴンは言いながらアリアの方を一瞬だけチラ見した。


 何でアリアを見たんだ……

 そうか。

 ボクと戦っていると見せかけて、隙をみてアリアをさらうつもりだ。

 そうはさせないぞ。


「アリア、離れた安全なところから見守っていて」

 ボクはすぐさまアリアに指示を出す。


「分かったデス」

 アリアはよろめきながらも森の奥へと逃げ込もうとした。


「愉快。愉快だ、人間よ。吾輩の考えを読むとはな」

「バレバレだよ」


「それなら、この手は読めるかな? グラビティ・ブレス」

 ダークドラゴンは炎を吐くかのように、黒い息を吐きだした。


「この程度の速度の息じゃボクを捕まえることはできないよ」

 ボクは黒い息をするすると避ける。


「ふはは、我がブレスを避けるとは、なかなかの人間だ」

「お褒めに預かり光栄です」

 トカゲに褒められても全然うれしくないけどね。


「ふはは、それでは、これでもくらえ!!」

 言いながら、ドラゴンは自身の大きな前脚を振りあげ、ボクを踏みつぶそうとした。


「遅い!!」

 ボクはその前脚をも避ける。


「なるほど、吾輩の踏みつけさえ避けるか……それならば、アンチ・グラビティ!!」

 自分の息を自分にかけるドラゴン。

「自分で自分を攻撃してる?」


忙しい人のまとめ

アリア、ダークドラゴンに降伏しようとするがサイレントが叱咤して止める。

サイレント、ダークドラゴンと戦う。


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