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第48話 サイレント、ドラゴンと戦う

前回のあらすじ

サイレント、町を出る。

サイレント、ダークドラゴンに出会う。




 


「師匠、逃げてください!」

「大丈夫、大丈夫、ボクの魔物感知にもひっかからなないほど、今にも消え入りそうな気配だってことは、きっと突然変異を起こしたばっかりだって!!」


 突然変異したての魔物は、突然変異するのにエネルギーを消耗しすぎて、気配が死人のようにない上に、弱いってラカンが言っていたし。

 そんな突然変異したての魔物にビビることはないでしょ。


「何を言ってるんデスか? ダークドラゴンの魔物ランクはSですよ!!」

 魔物ランクS?

 聞いたことのない魔物ランクだ。

 魔物はA~Fランクに分かれているってことまでは知っているけど。


「ランクSということは、Aでも、BでもCでも、Dでも、Eでも、Fでもないってことだよね?」

「何言ってるんデスか、師匠。当たり前じゃないデスか」


 ボクの記憶が正しければ、Aが最初の文字で、Zが最後の文字だ。

 つまり、Sランクの魔物は、Fランクのスライムより弱いってことじゃないか。


 何でアリアはSランクの魔物に出会っただけで、青い顔をしているんだ?

 おかしい……


 あ、分かったぞ。

 アリアは冒険者なりたてで、魔物を倒したことが1度もないから、スライムよりも弱い魔物にビビっているんだ。


 まあ、Fランクのスライムでも、電撃を使ったりして、結構強いからな。

 この前戦ったファイヤー・ウルフなんて火まで吐いていたし。


 ここは師匠として、戦えるところをみせないといけないな。


「ここは任せて、アリア」

 ボクはアリアを安心させる言葉を言いながら、ダガーを持ってダークドラゴンと言われる魔物と対峙する。


「いや、師匠、逃げてください!!」

「待っていたぞ」


「気づかれた……って、ちょっと待って。魔物がしゃべった!?」

 ボクは二度見する。


 突然変異のトカゲはしゃべるのか?

 いやいや、魔物は喋らないのが常識だ。

 トカゲがしゃべるわけない。


 ……ということは、ボクにそう聞こえただけで、しゃべっていないんだ。

 犬の鳴き声が『ワン』のように、ダークドラゴンの鳴き声が『待っていたぞ』なんだろう。


「なるほど、そういうことか。うん納得」

 もう少し待っていれば、このダークドラゴンは、同じように『待っていたぞ』って鳴くに違いない。


「何がそういうことなのだ?」

 ダークドラゴンは低い声で聞いてくる。


「あ、こっちの話です」

 うん、鳴き声じゃないね。

 間違いなく喋っているね、ダークドラゴン。


「ヌシよ」

 ボクはきょろきょろと辺りを見回す。

 居るのはアリアとボクだけだ。


「ヌシって、ボクのことですか?」

 ボクは自分で自分を指差して尋ねた。


「そうだ、ヌシよ。ヌシの連れを差し出せ! さすれば、命だけは助けてやろう!!」

 連れって、アリアのことだよな。


 アリアを差し出せば、ボクの命が助かる。

 よーし、すぐにでもアリアを差し出そう……って、なんで弱いSランクの突然変異のトカゲにアリアをさしださなくちゃいけないんだ!!

 アリアは院長先生から預かった、大切な子だぞ!!


「イヤだね。どうせ、アリアを差し出したら、アリアを食べちゃうつもりでしょ!!」

 ダークドラゴンとやらは、人肉が大好きな魔物に違いない。


 人を襲うなんてけしからん。

 そんな奴には、あっかんべーをしてやる。


「吾輩がそんなことなどするか!! 吾輩達はカバッカの町へ行くのだ」

「カバッカの町?」

 トカゲが町に何の用だろう?


「そうだ、丁重にエスコートする。だから安心して預けろ」

 エスコート?

 エスコートって、護衛するってこと?

 つまりは、食べるんじゃなくて、アリアをお嫁さんにしたいってこと?


 カバッカの町で結婚式を挙げるってこと?

 もしかして、これって、ドラゴンと人間との禁断の恋!?

 いや、『待っていたぞ』……って言葉が出たってことは、アリアをさらうタイミングを見計らっていたってこと?


 それって、ただのストーカーじゃん。

 なんて、けしからんトカゲだ。


 これは、ダークドラゴンとやらに、アリアはお前のことをなんとも思っていないという現実を教えないとな。


「アリア、ダークドラゴンにエスコートされたい?」

 アリアがダークドラゴンに一目ぼれしている可能性もあるので、念のため、ボクは背中越しにアリアの気持ちを確認する。


「ダークドラゴンには逆らえないデス」

 アリアは今にも消え入りそうな声でつぶやく。


「あのね、逆らうかどうかじゃなくて、アリアの気持ちを聞いているの!!」

「それは、いやデス……いやデスけど、やはり逆らえないデス」

 やはり、アリアの声に力はなかった。

 こうなったら、ボクがアリアの代わりにこたえてあげよう。


「ダークドラゴン、アリアは君にエスコートされたくないって。分かったら、お家に帰って!!」


「そうはいかぬ!! 吾輩はエスコートしなければならないのだ!!」

「しつこいと、女の子に嫌われるんだよ。ストーカードラゴンさん。ママに習わなかった?」

 たいして強い気配でもないのに、大きな声出さないでよ。


「吾輩はストーカーではない。いい気になるなよ、小僧!!」

「それなら、アリアと町に行って何をする気?」


「カバッカの町を滅ぼすのだ」

「町を滅ぼすだって?」


「その通りだ」

「そっか、ボクが追放された町を滅ぼすつもりなのか……」


「追放されただと? 何だ、ヌシはカバッカの町を憎んでいるのではないか。それなら、吾輩と共に町を滅ぼそうではないか」

「町を滅ぼす……」

 確かに、ボクを追放した町なんて壊してしまいたい……


「そうだ。吾輩にはその力がある。一緒に町を滅ぼして、いわゆる一つの『ざまぁ』をしてやろうではないか」


「やーだね」

 ボクは、あっかんべーをする。


「何故だ? 何故ヌシを追放した町を滅ぼそうとせぬ?」


「だって、ボクを追放しようとしたのは町の全員じゃないもの」

「どういうことだ?」


「お世話になった孤児院と冒険者ギルドがあるし、それに門番のおっちゃんもいるからね。勘違いされて、町のみんなから追われてしまったけど、ボクはあの町に育てられたんだ。だから、それはできないよ」


「交渉決裂だな、ぎゃおー」

 天地が裂けるようなダークドラゴンの大きな咆哮が耳に入って来たと思ったら、突然のめまいがボクを襲う。


 しまった、油断して、鼓膜をやられた。

 平衡感覚が、おかしい。


 足も震えはじめ、立っていられなくなったボクは、その場に倒れこんでしまった。


忙しい人のまとめ

サイレント、ダークドラゴンに一緒に町を滅ぼそうと誘われる。

サイレント、断る。



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