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第47話 サイレント、カバッカ町を抜け出して、トカゲに出会う

前回のあらすじ

勇者パーティー、ダークドラゴンと戦う。

勇者パーティー、ドラゴンに負けて、記憶を操作される。





 


「師匠、無事にカバッカ町を抜け出すことができましたが、これからどこへいくんデスか?」

「うーん、何処に行こうか? どこでもいいと思うけど……隣の村とか」


「それは止めた方がいいと思うデス」

「どうしてさ?」


「隣の村だと、カバッカの人たちが追いかけてくるかもしれないデス」

 あ、そっか。

 追われる立場になったことがなかったから、そこまで考えていなかった……


 あれ。でも、待てよ……

 そうだ、あそこなら、問題ないはずだ。


「隣村は危険だと思うかもしれないけど、1つだけ大丈夫な村があるんだよ」

「大丈夫な村デスか?」

 この様子だと、アリアは知らないんだな。


「うん、隣の町のホバッカの村だよ、アリア!」

「ホバッカの村デスか? どうして安全なんデスか?」


「ホバッカ村とカバッカ町はライバル同士で、基本的に仲が悪いから、好き好んで行き来する人はいないはずだからさ」

「それなら安心デスね」


「そう、安心なんだよ」

 ボクはサムズアップする。


「それならそこに急いで行くデス」

「うん、そうだね」

 遠くからボクを呼ぶ声がだんだん近づいて来て来る前に、行かなければならないからね。


「あ、でも、待って、アリア」

「どうしたデス?」


「もう、夜で辺りが暗くなっているから、街道でたむろしている輩やモンスターがいるかもしれない。急ぐのも大切だけど、慎重に進むことも忘れないで」

「了解デス!」


「よし、それじゃあ、まずは体臭を自然に溶け込ますことから始めよう」

「体臭を溶け込ますんデスか?」


「うん、そうだよ。一歩外に出たら、いつ魔物に遭遇してもおかしくはないからね。こうやって、草の汁や土の匂いを体にまとわせるんだ」

 ボクは草むらに寝転がった。


「師匠、今急いでいるデスよね? 急いでいるのに、しないといけないデスか?」

「当然だよ。もう、町を出たってことは次の町に入るまで安全なところなんてどこにもないんだから」


「それは分かっているデスが、土まみれになりたくないデス」

「アリア、この匂い消しは基本中の基本なんだ。その基本をバカにしちゃいけないよ。基本をバカにする人は、基本で泣くって言ってたんだから」

 誰が言っていたかは忘れたけど。


「わかったデス」

 アリアも一緒に草むらで寝転がる。


「ところで師匠、ホバッカ村への道はわかるんデスか?」

「もちろんだよ。ホバッカ村は、いつも行くダンジョンの近くにあるからね。そうだ、街道からは少し離れるんだけど、近道も知ってるから、そこから行こう!!」


「近道……危なくないデスか?」

「大丈夫。何度もラカン達と通った道だけど、夜でも滅多に野盗や魔物は出ないよ」

 よっぽど運が悪くなければだが。

「そうなんデスね」


「よし、ボクが先頭に立って魔物感知をしながら進んでいくから、離れないでね、アリア」

「分かったデス。師匠が魔物を感知するなら、アリアは野盗が襲ってこないか周りを見回しながらついていくデス」


「あ、それは大丈夫」

「どうしてデスか?」


「ボクの魔物感知は人間にも通用するからね」

「人間にも通用するデスか?」

 とても驚くアリア。


「うん、そうだよ」

「師匠はすごいデス」

 アリアは目を輝かせる。


「いやいや、すごくないよ」

 魔力や生物を感知する魔物感知は、基礎の技だからね。


「いえ、すごいんデス。普通は人まで感知できないデス」

「そうなのかな……」

 昔から魔物感知で当たり前のように全ての生き物を感知していたから、気づかなかった。


「……あ、アリア、そこに蚊の大群がいるから、少しだけ回り道しよう」

「師匠、虫まで探知できるんデスか?」


「できるよ」

「やっぱり、師匠はすごいデス」


「すごくないよ。ただ、臆病なだけなんだ。虫にさえもね」

「虫にさえ意識を向けていたら、アリアだったら精神的に疲弊して1分でギブアップするデス!! それを常にやっている師匠はすごいデス」


「そうやっておだてようとしても、何もでないからね」

「おだてているんじゃないデスよ」

 アリアは口を尖らせた。


「……って、ちょっと待って、アリア。何かいる!!」


 まるで死んでいるかのような生体反応だから分かりにくいけど、これは間違いなく魔物の気配だ。

 この反応から察するに、そんなに強くはないはずだけど、警戒するに越したことはない。

 ボクは暗闇に目を凝らす。


 ……って、あれ?

 でっかい黒いトカゲみたいな生物?


 ボクは目をこすってから、もう一度気配のするほうを凝視した。

 うん、やっぱり、固そうなうろこに覆われた黒いトカゲだ。


 ……って、いや、トカゲでかすぎだろっ!!

 こんなでかいトカゲは見たことない。


「アリア、ものすごく大きなトカゲがいるんだけど……」

 ボクはトカゲに聞こえないように小声でアリアに耳打ちをする。


「もしかして、突然変異体デスか?」

 突然変異体、聞いたことがある言葉だ。


 えっと、なんだっけ……あ、そうだ。

 動植物が魔物化すると、突然変異で体が巨大化するって、以前ラカンが言っていた気がする。


「おそらく、突然変異体だね。よし、暗殺しちゃおう!!」

 以前、突然変異体の鷲の肉は、美味しかった。

 きっとこのトカゲも美味しいだろう。

 ボクは涎をたらしながら、ダガーを構えた瞬間である。


「……手を出しちゃダメデス、師匠。これはダークドラゴンデス!!」

 アリアが小声でボクを制止する。


「ダークドラゴン?」

「この魔物の名前デス!!」


 へー、この突然変異したトカゲの名前はダークドラゴンって言うのか!!

 アリアは物知りだなー。


 ボクなんて何度も何度もダンジョンに潜ったことあるのに、一度もみたことないや。

 ん?

「ドラゴン?」

 どこかで聞いたことがあるような……


 ……思い出せないや。

 ま、いっか。

 思い出せないってことはたいしたことじゃないんだろ。


忙しい人のまとめ

サイレント、町を出る。

サイレント、ダークドラゴンに出会う。




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