表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/372

第43話 サイレント、検問所でおっちゃんと会う

前回のあらすじ

アリア、町の治安部隊もサイレントを捕まえに来たと勘違いし、襲い掛かる。

アリアを止めるサイレント、治安部隊を殺そうとしたと勘違いされ、死刑勧告される。






 

 城門の前に着いたけど、検問所に踏み出せないでいた。


「師匠、怖いんデスか?」

「そ……そんなことないよ」

 ……と口では言っているが、もちろんビビっている。


 もしも、既にボクがさっきしたことが検問所にも伝わっていたら、捕まってしまって、人生が終了してしまう……


 でも、検問所に行かなくてはこの町から抜け出すことはできない。

 行かなければならないが、どうしても躊躇してしまう。


「お、サイレントじゃないか……」

 遠くから名前を叫ばれて、びくっとする。


「おっちゃん!」

 この前、身体検査なしで通してくれたおっちゃんだ。


「はっはっはっ、面白いな、お前。何でそんなにびくびくしてるんだよ? まるで、指名手配された犯罪者みたいだぞ」

 犯罪者という言葉に背筋が凍る。


「ははははは……そんなことあるわけないじゃないか……」

「師匠、やりますか?」

 アリアはボクにだけみえるように鎌を見せまがら小声で聞いてきた。


「大丈夫。多分」

 ボクは小声でアリアに伝える。


「分かったデス」

 アリアは鎌を後ろ手に隠す。


「何、こそこそ2人で話してるんだ? こっちに来いよ!! ごほっごほっ」

 おっちゃんは咳をしながら手招きをした。


 うう、この誘いが罠だったらどうしよう……


「おっちゃん、いつもよりやつれた顔をしているよ。大丈夫?」

「お前を手荷物検査しないで通したことがなぜかバレて、罰として、朝から深夜までずっとここで働かなくてはいけなくなったからな」


「ずっとここにいるの?」


「ああ、だから、祭りがどうなっているのか全然分かっていないんだ」


「ラッキー」


「何がラッキーなんだ? このサンザール様が不幸に見舞われて、お祭に参加できずにいるっていうのに……」


「ああ、こっちの話だよ、こっちの話」

 もしも、この話が本当なら、ボクが指名手配されていることをおっちゃんは知らないはずだ。



「それよりも、サイレント」

 アリアには聞こえないように、ひそひそ声でボクにだけ聞こえる声で話しかけてくるおっちゃん。


「はひっ」

 おっちゃんから急にひそひそ声で話しかけられて、びくっとする。

 まさか、ボクがしでかしたことが既にバレているのか……


「あの子、なんて名前なんだ?」

「アリアだよ」


「アリアちゃんか。可愛い名前だ……ありがとうな、サイレント」

「どうしてありがとうなの?」


「この前、持ち物検査をしなかったお礼として、アリアちゃんを紹介してくれたんじゃないのか?」

「違うから。アリアは孤児院の子で冒険者になりたいからってことで預かってるの」


 この前のお礼としてボクが美少女を紹介するわけないじゃん。

 おっちゃんからこんな話が出てくるってことは検問所まで話が回ってきていないってことだろう。


「そういうことか……ところで、アリアちゃんは未婚なのか?」

「そうだけど……もしかして、狙ってる?」


「当たり前だろ! あんなお姫様みたいにカワイイ美少女、この国を探してもなかなかお目にかかれないぞ!!」

「もしも手を出したら、きっと、院長先生に怒られるよ」


「うっ、それは勘弁願いたいな。あの人怒るとめっちゃ怖いからな」

「それなら、手は出さないことだね」


「ああ、そうするよ。ところで、お前も町の外へ行くのか?」

「お前も? 他にも誰か外に出たの?」


「ああ、勇者ラカン様の御一行が、30分ほど前に町を出たぜ……って、なんだ、勇者様御一行に置いて行かれたからあわてて追いかているんじゃないのか?」

「うん、まあ、そんなところかな」

 おっちゃんの顔を直視できなくて、ボクは自分の足元を見た。


「おいおい、どうした、暗い顔して」

「ちょっとね」


「そうか。それなら、多くは聞くまい」

 空気で察してくれたのだろう、おっちゃんはそれ以上、何も言わなかった。


「……ん? 何か外が騒がしいな」

 ボクが何も言わなかったので、おっちゃんは周囲がうるさいのが気になったのだろう。

 ……って、まずい、このままだと、指名手配されているのがバレてしまう。


「ところで、おっちゃん、勇者様を待たせているから、すぐに外に出たいんだけど、いいかな? ほら、勇者様を待たせちゃうと、みんな不機嫌になるのおっちゃんも知っているでしょ?」

 ボクは平然と小声で嘘をつく。


「それなら、早く通行証を出して、魔法陣の上に乗れ!!」

「通行証、通行証……はい、おっちゃん」

 ボクは通行証をリュックから出した。


「おう、これこれ。最初から出してくれれば……って、通行証が血だらけじゃないか!! ……まさか、お前、町でモンスターでも狩ったのか?」

「町にモンスターがいるわけないじゃないか!!」


「そうだよな。……ということは、お前、まさか、人を襲って返り血でも浴びたのか?」

「そんなわけないでしょ」

「そうデス! 返り血を浴びるような近い距離じゃなかったデス!!」


 その通り。

 ダガーが刺さった治安部隊とボクとの間には、かなり距離があったからね……って、違うだろ!!

 この血まみれの通行証は今日のじゃなくて、昨日のファイヤー・ウルフのものだから!!

 余計なことを言うんじゃない、アリア!!

 ……とツッコミをいれたいけど、おっちゃんにバレるから、いれられない。


「どういうことだい、お嬢ちゃん?」

「それは、ボク、アリアと実践形式で戦った時にアリアに怪我をさせたから、その時のことを思い出したんじゃないかな?」


「おいおい、こんなに可愛らしい新人相手に本気になるなよ、サイレント」

「今度から気を付けるよ。ところで、ここをすぐに通して欲しいんだけど」

 良かった、うまくごまかせた。


「新しい通行証がないのであれば、時間がかかるな」

「そこを何とか」


「前にも言ったが、今は祭りの最中だから、町の盗品や重要文化財を持ち出していないかどうかの持ち物検査はしないといけないんだ」

 頭をポリポリとかくおっちゃん。


「ボク達何も持ってないよ。この前みたいに素通りさせてよ」

「この前の素通りがばれて、上司にこっぴどく叱られたんから、今回はそうはいかないんだ」


「おっちゃんのケチ!」


忙しい人のまとめ

検問所から町を出ようとすると、検問所でおっちゃんに止められる

通行証がないサイレント、なかなか検問所を通れない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ