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第40話 サイレント、ケンカ祭りに参加する!?

前回のあらすじ

『サイレント追い祭り』が開催される。

サイレント、追い詰められる。





 

「そうですか、全部イヤですか。それなら司祭である私が2~3問、質問をいたします。その質問に正直に答えたら、粛清は無しにするというのはどうでしょうか?」


「無し? 本当?」


「私は司祭。ウソはつきません。ただし、ウソをついた場合は、あなたには、血祭りと火あぶりと拷問にしたあげく、ムゴイ制裁が待っています」


「分かったよ。正直に答えるよ」

 ラッキー、正直に答えるだけで粛清が無しになるなら、いくらでも正直に答えるよ。


「交渉成立ですね。それでは質問です。今日はめでたい100周年のお祭りの日ですね?」

「うん、そうだね」


「そんな日に、貴方よりモテなくて貴方よりバカな男が超絶美女を連れてお祭りを楽しく遊んでいる姿をみせつけてきました。貴方ならどうしますか?」

「そんな奴、拷問して、血祭りにして、火あぶりにするに決まっているじゃないか! いや、それだけでももの足りない。もっとムゴイ制裁を与えます」


 何を言っているんだ、司祭様は。

 そんな輩がいたら、ムゴイ制裁一択に決まっているじゃないか。


「どうやら答えはでたようですね。サイレントの言う通りです」

 今まで見たこともない満面の笑みで語り掛けてくる司祭様。


「正直に答えから、粛清はなしだね」

「そうですね、粛清ではなく、血祭りと火あぶりと拷問とムゴイ制裁があなたを待っていますよ!」

 正直に答えたのに、制裁が増えてる!!


「何で? ボク、正直に答えたよね、ボク!!」


「罪人に石を投げて良いのは、石を投げられる覚悟のあるものだけなのじゃ。ムゴイ制裁を与えようとしているものには、一番ムゴイ方法で制裁を与えるのが教会の教えですよ、サイレント!!」


 ああ、そういうことか。

 ボクがどう答えるかで、制裁が決まっていたのか。


 くっそー、嘘でもいいから、無罪だと答えるべきだった……って、もしも、嘘をついていたら、それはそれで、ムゴイ制裁を与えられていたのか……


 ……あれ?

 もしかして、この質問ってどう答えてもムゴイ制裁一択だったじゃないか!!


「ズルいですよ!!」

「何がズルいんですか? サイレント」


「とぼけても無駄だよ。ボクがどうこたえようと、ムゴイ制裁一択だったってことでしょ?」


「何を血迷ったことを言っているのですか? もちろん、救いの道もありましたよ」

「救いの道?」


「ええ、最初からその少女を差し出せば、あなたはこんなムゴイ制裁を受けなかったでしょう」

「アリアを差し出すなんてことできるわけないよ!!」


「それなら他の救いの道もあったのに……」

「それは何デスか?」

 訊いたのはアリアだった。


「それを知りたければ、ちょっとこちらに来てください」

 アリアを手招きをする司祭様。


「分かったデス」

 アリアは司祭様に近づいた。


 アリアが近づいた瞬間、ボクは一瞬だけにやりとする司祭様の表情を見逃さなかった。


「ちょっと、待った。司祭様に近づいたら最後、捕まるよ、アリア」

 アリアに指摘されてボクは足を止める。


「どうしたんですか? はやくこちらへ」

 ニコニコと貼り付けたような笑みを浮かべる司祭。


 うん、これはさすがにバカなボクにでも分かる。

 アリアが司祭様につかまったら、アリアは人質にされて、抵抗するまでもなくボクは血祭りにあげられ、火あぶりされ、拷問されたあげく、ムゴイ制裁が待っている。


 ふー、気づけて良かった。

 ボクじゃなきゃ、見逃しちゃうところだった。


「絶対に行かせないからね!!」

「ちっ!!」

 司祭様は舌打ちをした。


「あっ、舌打ちしたってことは、やっぱりアリアを捕まえるための罠だったんだ」

「バカなサイレントのくせに、私の罠を見破るとは生意気ですね!! こうなったら、多少手荒になっても構いません。全員で取り囲みなさい!!」


「分かりました!!」

「いい加減にするデス! モテない人のただの僻みじゃないデスか! そんなに暴れたいなら、アリアが全員の相手をするデス」


 アリアが大鎌を包んでいたタオルをとって、全員の前に立つ。

 ゴーン。

 祭りの始まりを告げる大聖堂の鐘が鳴った。


「ふへへ、ケンカ祭りの始まりって言うわけか。それじゃあ、相手してもらおうか、カワイイお嬢ちゃん!」

 筋肉隆々の男がメリケンサックをつけてから、アリアに向かってすごいスピードで襲い掛かった。


「遅いです」

 アリアは男の攻撃をするりとかわした。


「ふへへ、一撃目は囮の攻撃さ。次の攻撃でこうする予定だったのさ」

 男はアリアの背後から抱き着くように腕で振り下ろす。


「アリア!」

 まずい、まずい、まずい、アリアが知らない男に抱きつかれたってことが院長先生にバレたら、監督不行き届きで、院長先生からのムゴイ制裁が待っているじゃないか。


「大丈夫デス、師匠」

 アリアは男の腕もするりとする抜けた。

「どういうことだ? 確かに捕まえたと思ったが」


「それは残像デス。アリアは瞬動で早く動いたデス!!」

「くそっ、もう一回だ」


「そうはいかないデス。峰打ち!」

 アリアは瞬動で男の腕から逃れ、大鎌の柄で男の腹を突く。


「ぐはっ」

 男は腹を抱えて倒れこんだ。


 よかった。

 ホッとした瞬間、一瞬だけ静寂に包まれた。


「……さあ、ケンカ祭りの始まりです! 罪深き二人に制裁を!」

 司祭の高らかに宣言。


「「「「「うぉーーーーーーーーー!!」」」」」

 全員が大声をあげ、動き出し、乱戦となる。


 ほとんどが徒手空拳だが、剣を構える人や、弓矢をつがえるガチ勢もいた。

 さすがに、アリアだけでは大人数を相手にできないだろう。


 ボクはとっさにアリアと背中合わせになり、二人で死角をなくす。


「師匠、これは戦ってもいいんデスよね?」

「殺さない程度にね。死人がでたらボク、この町で暮らせなくなるから」


 ボクは暗器として足に忍ばせていたダガーを取り出し、くるくると回しながらこたえた。


「善処するデス」


「いや、それ、偉い貴族が到底できそうにない時に言う方便だよね? 絶対に死人は出さないって約束してよ」

「善処するデス」


 もう一度同じテンションでうなずくアリア。

 いや、それ、絶対に死人が出るフラグじゃないか。


 アリアさん、本当に善処してください、マジで。


忙しい人のまとめ話

司祭様、ムゴイ制裁の回避の方法を教えると言うが、サイレントを捕まえるための罠だった。

『サイレント追い祭り』を『ケンカ祭り』になってしまう……アリアのせいで。



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