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第39話 サイレント、逃げる

前回のあらすじ

司祭様、100周年の祭りを『サイレント追い祭り』に変更しようとする。

サイレント、司祭様が偽物だと断言する。




 

「みんな、落ち着くのじゃ。私は本物の司祭じゃ」


「確かにそうだよな」「どこからどう見ても司祭様だ」「ああ、そうだ」

「うら若き美少女がサイレントの毒牙にかかろうとしているのじゃよ? しかも100周年のお祭りの日にじゃ」

「何て邪悪なんだ、サイレント」「サイレント、ギルティ!!」


 あれ?

 これはまた空気が変わったぞ……


「サイレントは一生に一度の思い出を今から作ろうとしているのじゃ。みんなはこのままでいいんのかの?」


「確かにそうだ!!」「少女を保護するのが当たり前だよな」「サイレント、お前の一生の思い出は祭りの日に美少女と手を繋いだ思い出じゃなくて、ここにいる全員に血祭りにされた思い出に変えてやんよ」


「今から決議をとる。サイレントを捕まえるのに賛成のもの、手をあげよ。ちなみに、手をあげなかったものはどうなるか分かっておるじゃろ?」

 司祭様の一言で、僕とアリア以外の全員がしっかりと手をあげた。


「何て卑怯なんだ。脅して無理矢理手をあげさせるとは……」

「うるさい、この世は民主主義なんじゃ!! 数は正義なんじゃ!!」


「脅して数を増やすなんて、横柄だぞ、司祭様!!」

「横柄で結構。全員でサイレントを捕まえるのじゃ!」


 司祭様が号令を出した瞬間、

 ごーん。

 大きな鐘が鳴った。


「うぉー、覚悟しろ、サイレント」

「みんな、こんなこと間違ってる。すぐにやめるんだ」

 ボクはみんなの良心に訴えかける。


「こんなことしたくないんだ、俺たちだって」「でも、司祭様に脅されているからさ、俺たち」「そうなんだよ、全然やりたくはないんだけどさ」

 ……と建前で言っているけれど、これは目がマジだ。

 これは全力で逃げないといけないやつだ。


「逃げるよ、アリア!」

 ボクはとっさに大声を出し、アリアの手を取り、走った。


「あいつ、見せつけるために大声まで出した上に、女の子の手を取ったぞ」「二人で駆け落ちをする気だ。『一生交際しない同盟』を結んだというのに」「同盟を破棄するとか、ゆるせねえ!」

 ボクはアリアを持った方がはやいと思い、お姫様抱っこをする。


「お姫様抱っこをするだと?」「あいつ、リア充じゃないか」「サイレント、お前は完全に包囲されている。おとなしく粛清されなさい」

 司祭様を先頭に、雪崩のようにボクを追いかけてくる人々。


「やーだよ、あっかんべー」

「師匠、アリア、大鎌を持っているので、走ったらスピードがでないはずデス」


「大丈夫、大鎌はアリアが持っているんだから、ボクには全然負担にならないよ」

 こんなに切羽詰まっているのに、面白いことを言うね、アリア。


「そんなわけないデス」

「大丈夫、ボクを信じて」

 ボクはアリアを抱っこしながら、猛スピードで町人から逃げる。


「待てー、サイレント!!」

「何だ? 今年は聖火ではなくて、追っかけ祭りか?」「それならオレも参加するぜ!」「私も参加しよっと!」

 人の雪崩が雪崩を呼び、とんでもない数の人々がボク達を追っかけてくる。


「逃げろ、逃げろ、逃げろ!! ……って、行き止まり!!」

 なんというミス。

 勝手知ったる道なのに、袋小路に入ってしまった。


「この石壁、垂直に5メートルはあるデス。この壁を乗り超えるのは難しいデス」

 このままじゃ逃げ切れない。


 こうなったら、この石壁を登るしかない。

 走れ、走れ、走れ!!


「さすが師匠デス! 垂直の石壁を走ることができるとは!!」

 よし、あともう1歩で壁を乗り越えられる……って、うわー!!

 最後の一歩が空を蹴り、ボクとアリアは地面へと着地する。


 もう一度、挑戦してみるか?

 いや、ボクだけならともかく、もう一度失敗して、アリアが怪我でもしたら、院長先生にがっつり怒られてしまうだろう。


「アリア、ボクが彼らを足止めするから、少しでもはやくこの場から離れるんだ」

「離れるってどこにデスか?」


 そうだよね。

 袋小路だもんね。

 どこにも逃げ場なんてないよね。

 そして、誰も助けてはくれない。


「ボクが囮になって、群集をかき分けるから、とにかく、安全なところへ逃げるんだ」

 ボクはアリアを下ろし、ボクはダガーをかまえる。


「師匠を一人でおいていくことなんてできないデス」

 アリアは言いながら、大鎌を構えた。


「追いかけっこは終わりですか、サイレント?」

 訊いてきたのは司祭だった。


「ええ、逃げるのは諦めました」

「今日は楽しい、血祭りじゃい! あ、いや、やりたくはないんだけど、司祭様が、ね」「ここはみんなが持っている聖火で火あぶりだろう。やりたくはないんだけど」「今日は、めでたい祭りの場ですから、間をとって拷問するというのはどうでしょう? やりたくはないけど」


 やりたくないって言っている人の表情じゃないよ、君たち。

 拳を顎に当てて指をパキパキ鳴らせながらニヤリと笑っているんだからね。


「やりたくないことは、さっさと済ませてしまうのが物の道理というものです」

「さすがは、司祭様、言うことが違うね」「確かに」「まったくだ」


「そうだ、この後の予定も決めてしまいましょう。血祭りと火あぶりと拷問、3つも候補があがっていますが、どれがいいですか、サイレント?」

 選ばせてあげますという司祭様。


「……全部イヤだよ」


忙しい人のまとめ話

結局、『サイレント追い祭り』が開催される。

サイレント、追い詰められる。




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