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第37話 サイレント、注目の的になる

前回のあらすじ

サイレント、アリアに手紙を読ませたら、内容はパーティーからの追放だった。

サイレント、勇者にパーティー追放だと告げられる。





 

「おい、サイレント」

 呼ばれたボクは、地べたからラカンを見上げた。


「へー、なんだ、その表情だと、既に内容も知っているんじゃないか?」

「ああ……」

 声を出そうとするのだが、声が声にならない。


「もしかして、字を読めるようになったのか、お前?」

 声を出せなかったボクは首を横に振る。


「そうだよな、お前が字を読めるわけないよな。あ、そうそう、その手紙には書いていないが、お前の家も明後日には契約を解除するから、引っ越しの準備もしておけよな」

 引っ越しもしなければいけない……だって。


「おいおい、そんなに落ち込むなよ、サイレント。今日は祭りだ。楽しもうぜ」

 ラカンは口笛を吹きつつ、雑踏する町へと消えていく。


「大丈夫デスか? 師匠?」

「アリア」

 しゃがんで手を差し伸べたのはアリアだった。

 ボクはその手を握り、体を起こす。


「本当だったんだ。本当にボクは追放されたんだ……一度パーティーから追放されたボクを拾ってくれるパーティーなんかありはしない。これから一体ボクはどうすればいいんだ!?」


「師匠、落ち込んでいる師匠を誘うのは、ずるいかもしれませんが、パーティーを解散したなら、一緒にパーティーを組みましょう。そして、魔王を倒しましょう! 魔王を倒して、師匠を捨てたパーティーを見返してやりましょう」


「励ましてくれて、ありがとう、アリア」

 なんて前向きなんだろう、アリアは。


「でも、ごめん。魔王討伐はできないよ」

 立ち上がったボクはアリアの手を離す。


「どうしてデスか?」

「ボクの夢は平穏にこの街で暮らすことなんだ」


「でも、冒険者になれないんデスよね?」

「うん、パーティーで冒険者をするのは難しいから、思い切って『スローライス』をするのもありだね」


「スローライス? お米を投げるんデスか?」

「違うよ、農業をしてのんびりな生活を送るんだよ」


「師匠、それを言うなら『スローライフ』デス」

「そう、それ、『スローランス』」


「師匠、『スローランス』だと投げやりデス。『スローライフ』デス」

 まったく、シリアスな場面なのに、こういう時でも全然締まらないなボクは。


「とにかく、平穏に暮らすんだ。目立ちさえしなければ、この町はとても住みやすい町だからからね」

 パーティから追放されて今住んでいる家から追い出されようとも、ボクはこの町で住んでいくのだと決意を固める。


「そうデスか」

「だから、ごめん、アリア」


「わかりました。こちらも無理を言って、すみませんデス。アリアは失礼するデス」

 祭りが始まる直前ということもあり、たくさんの人が笑顔でいる町中をとぼとぼと歩いて行くアリア。


『院長先生にも冒険者は諦めさせろ』……って、お願いされたんだ。

 これでいいはずだ。


 でも、これで本当にアリアは冒険者を諦めるだろうか?

 ボクが断ったとしても、アリアは他のメンバーを募って、パーティーを作るだろう。


 もしも、そのパーティーがうまく機能しなかったら、アリアは傷つき倒れてしまうかもしれない。

 そうなってしまったら、一番悲しい顔をするのは、院長先生だ。

 それなら、一緒に行動して冒険者のイロハを叩きこんでからのほうが良いのではないか……


「ちょっと待って、アリア。魔王は倒せないけど、ダンジョンに慣れるまでボクと一緒にパーティー組まない?」

 気づくとボクはアリアに大声で声をかけていた。


「本当デスか?」

 アリアは振り返り、ぱぁっと表情を明るくする。


「うん、アリアが一人前になるまでだよ」

「ありがとうございます、師匠!」

 アリアが両手を握ってきた。


「あのバカなサイレントがカワイ子ちゃんから手を握られた……だと?」

 ボクが町中で大きな声を出したことで、通行人に認識されてしまった。


「これは事件だ!! そう、『幼女たぶらかし罪!!』」「そいつはとっちめないといけないな」「なんで裏切るんだ、サイレント! 『一生交際しない宣言』をしたじゃないか!」

 ボクを罵る声が響き渡り、みるみるうちに囲まれる。

 ボクのシリアスな場面が、みるみるうちに壊されていく。


「いやいやいや、事件でもないし、とっちめる必要なんてないし、そもそも、ボクは『一生交際しない宣言』なんてしてないから! ボクのことは気にせずにお祭に参加していてください」


「そうだ、今日は大切なお祭だった! サイレントなんかにかまってないで、祭りに行こうぜ」「そうだな、100周年というお祭りを血祭りにしようなんて考えるなんてどうかしていたぜ」「そうだった。サイレントと交わした約束は、『一生交際しない宣言』じゃなくて『一生交際しない同盟』をだったからな」

 言いながらみんな散り散りに去っていく。


 ふう、良かった。

 みんな正気に戻ったようだ。


「待ちなさい、みなさん! サイレントの口車にのってはいけません!!」


 せっかく場が収まりそうだったのに、ほじくり返すのは誰だよ?

 ボクは声のする方をにらみつける。


 そこには、ニコニコした好々爺が立っていた。

 誰だったっけ? このおじいさん。

 どこかで見たことあるんだけど……


「あ、あれは、司祭様!」「そうだ、司祭様だ!!」「司祭様っ!!」

 そうだ、司祭様だ。


忙しい人のまとめ話

サイレント、アリアとパーティーを組むことを決断。

サイレント、アリアに手を握られたところを町人に目撃される。

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