第68話 サイレント、競争する!?
これまでのあらすじ
サイレント、念話を切り忘れた院長先生のせいで伝説を残す。
サイレント、おっちゃんと司祭様の口車に乗り、二人をパーティーメンバーに迎え入れる。
「……というわけで、おっちゃんと司祭様をパーティーに迎えたいと思うんだけど、どうかな??」
ボクはみんなに尋ねる。
「パーティーに加えると言っても、カバッカ町に帰るだけなのよ??」
「そうです」
ボクはうなずく。
「アリアは師匠がいいなら良いデス」「いいのよ」「いいですよー」
「おっちゃん、司祭様、みんなも賛成してくれました」
「よし、それなら、カバッカ町に行こうぜ!!」「そうですな。善は急げですな」
そう言いながら馬にまたがるおっちゃんと司祭様。
「ん?? おっちゃんも司祭様も馬に乗るの??」
「何を言ってんだ、サイレント?? 移動手段と言えば、相場は馬だろ。馬以外でどうやって帰るんだよ?? まさか、お前、馬に乗れないのか??」
おっちゃんはボクをバカにしてくる。
「失礼だな、馬くらい乗ったことがあるよ。ユニコーンの背中だけど!!」
「ユニコーンの背中だと?? 天使でもないのに、ユニコーンの背中に乗れるわけがないだろ!! ウソも休み休み言え!!」
「いや、本当なんだって!! 院長先生のホーリィから逃げるときに……」
「分かった、分かった、お前がユニコーンに乗った話は別にいいから。それよりも、お前は馬にも乗らずにどうやって帰る予定だったんだ??」
「もちろん、空を飛んでだよ」
「空を飛ぶだと?? 何を言ってるんだ??」
「え?? そのままの意味だけど……」
そう言いながらボクはスキル・空動で空を飛んでみせる。
「お前、空を飛べるのか??」
目を丸くするおっちゃんと司祭様。
あ、そっか。
ボクが空を飛べること、おっちゃんたちは知らなかったんだっけ。
「そうだよ。ボクと院長先生は空を飛べるから、カバッカ町までは空を飛んでいけば、すぐ着くよ!!」
ボクの言葉におっちゃんと司祭様は顔を見合わせ、コクリとうなずいた。
「あのな、サイレント。凱旋というのは、陸路で帰るもんなんだ」
「そうだ、サイレント。空を飛んでいる人を見たら、カバッカ町の人々は混乱するだろう」
「混乱なんてするかな?? 天使だと思って終わりだと思うけど……」
「カバッカ町は天界からは遠いんだ。天使がいたら、大混乱だろうが。いいから、空路じゃなくて、陸路で行くんだよ。俺たちは飛べないんだから」
「そうだ、陸路で行かないと、仲良くなるチャンスが……」
司祭様が話している最中だというのに、おっちゃんは司祭様の口を手で塞いだ。
「仲良くなるチャンス??」
何か企んでいるのか??
「何でもない、サイレント、こっちの話だ。ねえ、司祭様??」
「ああ、もちろん、こっちの話だ」
「それなら、陸路で行くことアリアたちに説明するから一緒に来て」
「「ああ、もちろんだ」」
おっちゃんと司祭様はアリアたちと合流した。
「おっちゃんと司祭様は空を飛べないので、陸路でカバッカ町へ帰ることになりました」
ボクはアリアたちに説明をする。
「分かったデス」「分かったのよ」「分かりましたー」
もしかしたら、陸路を反対されるかもしれないと思っていたけど、すんなりと受け入れられて良かったよ。
「アリアちゃん、カバッカ町まで歩くのは大変だろ?? 良かったら、俺の白馬に乗らないか??」
顔をキラキラさせながら、アリアを誘うおっちゃん。
「アリア、師匠という婚約者がいるので、相乗りは丁重にお断りするデス」
「そうか、婚約者がいるのか……って、婚約者だって?? しかも、相手はサイレントだと??」
ボクをにらみつけてくるおっちゃん。
「本当なのか?? サイレント??」
司祭様も眉間にしわを寄せながら尋ねてくる。
「そうなんです……実は」
ウソでごまかそうかとも思ったが、さすがに、アリアがいる手前、ウソはつけない。
「お前、いつの間にアリアちゃんと婚約したんだ??」
「ボクの気づかない間にですよ!!」
「はあ?? 気づかない間にできるわけがないだろ」
「でも、ダークドラゴンと戦っている間に、気づかず婚約しちゃったんだもん」
「婚約はな、気づかずにするもんじゃないんだよ!!」
そう言いながら、ボクの胸倉をつかみ、揺さぶるおっちゃん。
本当に気づかなかったんだから、しょうがないじゃないか。
「そこらへんにしなさい、サンザール。アリアさんがいなくても、まだ二人もいるんですから」
「そうだな、あと二人もいるんだからな」
二人もいるってどういうことなんだろう??
「ああ、そういうことなのよ」
納得する院長先生。
そして、フラットさんとごにょごにょと内緒話を始めた。
何を話しているのだろうか??
「さて、インフィニティ様、歩くのは大変でしょう。私の白馬に乗りませんか??」
紳士的な態度で院長先生を誘う司祭様。
「大丈夫なのよ。疲れたら天使の羽根で空を飛ぶのよ」
「それなら、フラットさん、俺の白馬の後ろに乗らないか??」
「大丈夫ですよー、私ー、ティタン一族なのでー、疲れ知らずなんですー」
断られて大量の血涙を流した上に、下唇を噛んで下唇から血を流すおっちゃんと司祭様。
「まだだ、まだ、諦めないぞ!!」「そうだ、我々にはまだおやつ作戦がある!!」
「サイレント、カバッカ町まで、誰が一番速くつくか、競争するのよ!!」
「いいですねー、競争ー」
示し合わせたかのように院長先生に賛成するフラットさん。
さっきの内緒話はこのことを打ち合わせていたに違いない。
「えっと、馬に乗ったおっちゃんと司祭様と、馬に乗っていない院長先生とフラットさんとアリアとボクで競争するってことですか??」
ボクは念のために確認をとる。
「そういうことなのよ。あなたが全力疾走すれば、おやつを食べる前につけるのよ」
「面倒だな……」
ボクは頭をポリポリとかいた。
「そうだよな、面倒だよな、サイレント!!」「ゆっくり帰りましょう、サイレント!!」
なぜだか知らないが、おっちゃんも司祭様もゆっくり帰りたいらしい。
「一位になった人は、負けた人に一つ願い事を言えるのよ!!」
「願い事って??」
「叶えられるものなら、何でも叶えられるのよ!!」
ごくりと唾を飲み込み、顔を見合わせるおっちゃんと司祭様。
「よし、俺はやるぞ」「そうですね、我々の白馬の速さを見せてあげましょう!!」
「それなら、妨害なしで競争なのよ。『よーいどん』なのよ!!」
忙しい人のためのまとめ話
サイレント、みんなで帰ろうとする。
院長先生の提案で、競争することにする。