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第63話 サイレント、何をするか決める!?

これまでのあらすじ

 サイレント、神様になるが、『スキル・全知全能』は院長先生経由でないと使えない。

 サイレント、神様になって、やりたいことが見つからない。

「何を考え込んでいるのよ、サイレント?? 神様としての初仕事なんだから簡単に考えるといいのよ」

「神様としての初仕事なんだから、じっくり考えているんですよ!!」


「じっくり考えるって、何をする気なのよ?? やっぱり……」

「時間を戻したり、不老不死になったり、死者をよみがえらせたり、人体錬成をしたり、金をつくったり、軍隊をつくったりはしませんからね」


「つまんないのよ」

「楽しいかつまらないかで、ボクの仕事を決めようとしないでください!!」


「どうしてわざわざ時間を止めたと思っているのよ??」

「時間を止めたのってもしかして……」


「もちろん、誰にも聞かれずに悪だくみの計画をたてるためなのよ。私にサイレントの考える新世界を見せてほしいのよ」


 ダメだ、この天使長。

 はやくなんとかしないと。


「ボクは悪だくみなんかしませんよ。ボクはいいことをするんですから!!」


「それなら何をするのよ??」

「えっと、この世界からお金をなくします!!」


「本気で言っているのよ??」

「ボクは本気です。お金があるから貧富の差ができて、姫やナ・リキンのような悪いお金持ちと、ヒヤクシ・ヨウさんみたいにお金で困る人が出てくるんですよ!! お金は悪です。お金をなくして義理と人情で接する世界のほうが良いです」


「それは違うのよ」


 院長先生は真剣な表情でボクの意見を否定してきた。

 珍しいな、院長先生がこんなに真面目な顔をするなんて。


「違うとはどういうことですか??」


 ボクはお伺いを立てる。


「あなたは悪いお金持ちにしかあっていないから、お金は悪だと決めつけているのよ。お金は悪いものではないし、正しく使えば便利なものなのよ」


「お金が悪じゃないんですか??」

「お金がなかったら、どうやって物を買うのよ??」


「物々交換をすればいいんです」

「物々交換は、マッチングがとても不便なのよ。例えば、ケーキが欲しくて魚がいらない人と、魚が欲しくて、ケーキがいらない人とをどうマッチングさせるつもりなのよ??」


「えーっと……」

 たしかに、そこは考えていなかった。


「お金があれば、魚がいらない人がお店に魚を売ってお金にして、ケーキ屋にケーキを買いにいけばいいだけなのよ」


「でも、お金があるから、貧富の差が生まれるんじゃないんですか??」


「確かに、お金があるから、貧富の差が生まれるのは確かなのよ。ただ、憶えておいて欲しいのは、この世界で最初のお金は、『感謝や応援を形にした勲章』みたいなものだったのよ」


「『感謝や応援を形にした勲章』ってどういうことですか??」

「たとえば、『麦を育てて、収穫してくれて、ありがとう』とか、『麦を臼で挽いてくれて、ありがとう。またよろしくね』とか、そういった感謝や応援のために贈られていたものだったのよ」


「なるほど、そうだったんですね。あれ?? でもそれなら、貧富の差がでないような気がするんですけど……」

 生きてさえいれば、みんながみんな誰かに感謝するんだから、お金をたくさん持っている人はいないはずだよね。


「それは違うのよ。例えば、ヒーラーは数が少なく貴重な上に人命に関わる仕事だから、たくさんのお金をもらえたのよ。逆に誰でもできるような仕事には少しのお金しかもらえなかったのよ」


「そういうことか。ボク、お金は悪いもので、稼ぐのも使うのもよくないことなのかと思っていました」


 お金を持っているとトラブルに巻き込まれるし。


「違うのよ。最初は感謝や応援だったのだけど、お金と物やサービスを交換しているうちに、いつのまにかお金をたくさん集めた人が偉い貴族だという風潮に変わっていったのよ」


「ナ・リキンのケースで言うと、麦の収穫が少なかったから、買い占めて、値段を吊り上げて、感謝も応援もされずにただお金だけを集めようとしたのが良くなかったってことですよね??」


「そういうことなのよ」

「それなら、やはり、お金さえなくなれば、貧富の差がなくなるんじゃないですか??」


「仮にお金がなかったとしても、貧富の差はうまれるのよ」

「いえいえ、そんなはずないですって」


「麦で考えてみると良いのよ。一人の農民は麦づくりに適した土と日光が良く当たる土地でたくさんの水を与えて、もう一人の農民は栄養がない土と日光が当たらない土地でミネラルのない水を少ししか与えられない環境なら、貧富の差はでてしまうものなのよ」


 貧富の差が生まれる原因は、お金だけではなさそうだ。


「確かにそうですね。ですが、栄養のある土も日光も水もいらない品種の麦を神様のボクが作れば貧富の差がなくなるのでは??」

「それはいい案なのよ。そうすれば、農家はほぼ首になるか暇になるのよ」


「え??」

「だって、栄養のある土もお日様も水も必要ないなら、ほったらかしで良いのよ。それなら、農家を雇わなくても管理できるのだから、収穫に必要な時期だけ人を雇えばいいのよ。格差は広がるばかりなのよ」


「なんてこった……」

「結局、同じ条件じゃなければ、格差は生まれるものなのよ」


「すべてを同じ条件にしましょう」

「そんなことをすれば、あなたに批判が殺到すると思うのよ」


「確かに、殺到するかもしれませんが、悪いことをして稼いだ金持ち連中を制裁するにはいい機会じゃないですか??」


「ちょっと待つのよ、サイレント。金持ちの全員が全員、ナ・リキンみたいな悪い方法でお金を稼いだ人たちばかりではないのよ。今まで誠実にまっとうな方法でお金持ちになった人たちもいるのよ。さっき言ったみたいにお医者さんとか」


「あ」


 そっか、まっとうにお金を稼いだ人のことを考えていなかったな。


「その人たちは頑張ってお金を貯めて来たのに、あなたが条件を同じにしたら、今までの頑張りを否定することになるのよ」

「おっしゃる通りです」


 お金の本質を知らずに、『感謝も応援もされないお金を搾取するマネーゲーム』だけを見てしまったから、ボクはお金が悪いものだと思い込んでいたのか……

 無知ということは、自分の視界を曇らすんだな。


「私はお金のない世界にしない方が良いと思うのだけれど、決めるのはサイレント、あなたなのよ」


「この件は保留にしたいと思います」

 もしかしたら、何か良い案が浮かんで、お金のない世界も作れるかもしれないしね。


「分かったのよ。他にやりたいことってあるのよ??」

「そうですね……人々の願いを叶える神様になりたいです!!」


「それなら、練習として、私の願いを叶えるのよ!!」

「院長先生の願いですか??」


忙しい人のためのまとめ話

 サイレント、お金をなくそうとする。

 サイレント、お金をなくすのを保留にして、連取に院長先生の願い事を聞こうとする。

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