第62話 サイレント、神様になる!?
2025/2/21 誤字脱字があったので修正しました。(内容は変わっていません)
これまでのあらすじ
サイレント、大天使長探しは面倒くさいので、院長先生を大天使長に指名する。
院長先生、自分が大天使長だと認める。
「私に認められないと、神様になれないのよ!! もっと崇め奉るのよ!!」
「いいですよ、認められなくても」
「そうなのよ、もっと崇め奉るのよ……って、今なんて言ったのよ??」
「いや、別に認められなくてもいいっていったんですよ。まさかとは思いますが、院長先生、ボクを神様と認める気ですか??」
「あなたこそふさわしいと思うのよ」
「バカなボクが??」
「師匠はバカじゃないデス!! 自分を卑下しちゃダメデス!!」
「アリアちゃんの言うと通りなのよ。あなたはバカじゃないのよ。バカだけど」
「いや、どっちなんですか??」
「師匠はバカじゃないデス!!」
「そうなのよ、サイレントはバカじゃないのよ。私は神様にふさわしいと思うのよ」
優しい目でこちらを見てくる院長先生。
「ボクがふさわしい?? ボクはそうは思いませんけど……」
「あなたが思わなくても私は思っているのよ。この大天使長インフィニティ・インテリジェンスが言っているのだから間違いないのよ。神様になれるチャンスなんてないんだから、一度神様になってみるといいのよ!!」
「不安なんですよ。神様なんて大役、ボクにできるのか」
「大丈夫なのよ。神様になったら、この大天使長インフィニティ・インテリジェンスがフォローしてあげるのよ」
「インフィニティがー、フォローしてくれるならー、安心ですよー」
どこが安心なんですか、フラットさん??
自分の欲望に忠実な院長先生ですよ。
そう言いたかったが、ボクはなんとかこらえた。
「そうなのよ、神様に転職して、知り合いがフォローしてくれるなんてこと、めったにないのよ」
いや、そもそも、神様に転職するなんて事案がめったにないんですけど!!
「師匠、一度神様になってみると良いデス!!」
「分かったよ、ボク、神様になってみるよ」
「良く言ったのよ!! それなら、私に手を出すのよ!!」
「手を出す必要はないデス!! 師匠の手を握りたいだけデス!!」
「本当に必要なことなのよ!!」
「分かりました」
ボクは院長先生に手を差し出した。
「私、大天使長インフィニティ・インテリジェンス、サイレントを新たな神様と認める……よし、これで、サイレントは神様になったのよ」
「いや、儀式が簡単!! 院長先生が口で言っただけじゃないですか」
「そうなのよ」
こくりとうなずく院長先生。
「いやいやいや、ほら、院長先生が大天使長になった時みたいにレインボー色の後光がさすとか、体が光り出すとか、分かりやすい演出はないんですか??」
「ないのよ」
「何で??」
「前神様がそういう演出は面倒くさいと言ったからなのよ」
「本当に神様になったか実感がないんですけど」
ボクはじっと手を見る。
「本当なのよ」
「何も変わっていない気がしますけど」
すごい力が出てくるわけでもなければ、神になったというような実感もない。
そもそも数が分かっていないし。
「変わっていないって感じているのは、『スキル・全知全能』をサイレントに継承していないからなのよ」
「なるほど、『スキル・全知全能』を継承していないからなんですね……って、さっぱり分かりませんけど!!」
「『スキル・全知全能』は神になった人が継承して受け継ぐことができる前神様のスキルで、この世のすべてを知ることができて、この世のすべての理を操れるスキルなのよ」
「なんてすばらしいスキルなんだ!!」
「ただ、このスキルを継承すると脳と体の負担が大きいのよ。サイレントがこのスキルを継承すると……」
院長先生は目を伏せる。
「ボクが継承したらどうなるんですか??」
ボクは唾をごくりと飲み込んだ。
「サイレントの体が爆発しちゃうのよ」
継承すると爆発するのに、なんで継承できるスキルにしたの、神様。
神様の考えていることは意味が分からない。
『次の神様、死ね、爆発しろ』ってことなのか??
「……なるほど、だから、実感がないんですね」
「そうなのよ、『スキル・全知全能』を継承していないから、体も心もサイレントのままなのよ」
「あの質問なんデスけど……」
「なんなのよ、アリアちゃん」
「『スキル・全知全能』を使わないと、神様の能力は使えないんデスよね??」
「そうなのよ」
「それなら、どうやって、師匠は継承していない『スキル・全知全能』を使うんデスか??」
「良い質問なのよ。こたえは、『サイレントの許可を得て、私が代わりに使用する』なのよ」
「どういうことですか??」
「『スキル・全知全能』を継承しなくても使えるスキルで、今は宇宙にあるサーバーに保管されているのよ。私がここにいながらにして宇宙にあるサーバーとアクセスをすることで、サイレントの代わりに私が『スキル・全知全能』を使用するのよ」
「えっと、つまり、ボクの代わりに『スキル・全知全能』を院長先生が代わりに使ってくれるということですよね??」
「そういうことなのよ」
「本当にボクの指示があれば、代わりに使用してくれるんですか??」
「もちろんなのよ。私の聞こえるところで指示を出してもらえれば、私の意志とは関係なく、サイレントに代わって、『スキル・全知全能』を自動で使うのよ」
「本当かな??」
「試しに『インフィニティ以外の時よ止まれ』と指示を出してみるのよ」
「『インフィニティ以外の時よ止まれ』」
ボクがつぶやくと、みんな石像みたいに止まってしまった。
「これで私とサイレント以外の時が止まったのよ」
「本当かな??」
「嘘だと思うなら、アリアちゃんを呼んでみると良いのよ」
「アリア!! アリア!!」
ボクが呼びかけるが何も反応がない。
ただの石像のようだ。
「本当だ、全く動かない。それならフラットさんは??」
「フラットもこの通りなのよ」
院長先生はフラットさんの目の前で手を叩いたり、指で顔をつついたりしてみるが、何も反応はない。
「ふふふ、これで人目を気にせずにいちゃいちゃラブラブできるのよ」
「そういう目的で時間を止めていませんから」
ボクはすぐさま院長先生から離れる。
「それなら、時が止まっている間に、アリアちゃんの耳元で『あなたは大天使インフィニティ・インテリジェンスが好きになる』とささやき続ければ、サブリミナル効果で私のことが好きになるようにするのよ!!」
院長先生の欲望が酷くなっている。
「『時よ、動きだせ!!』」
ボクが叫ぶ。
「『あなたは大天使インフィニティ……』」
「アリアの耳元で何をやっているデスか??」
眉をひそめて院長先生に問い詰めるアリア。
おお、本当に、ボクの指示で時が動き出した。
「何でもないのよ、アリアちゃん」
そう言いながらこちらをにらんでくる院長先生。
ボクは目をそらす。
「もういたずらはしないから、もう一度、私以外の時間を止めるのよ」
「本当ですか??」
「なんなのよ、その疑いの目は」
「そう言ってしそうですもん、いたずら」
「神に誓うのよ」
「分かりました。『院長先生以外の時よ、止まれ!!』」
ボクが言うと、世界のすべては止まってしまった。
「ほら、神様の力を実感できたのよ??」
「実感できました!! 今のボクならなんでもできる気がします!!」
「この能力は私の聞こえる範囲だとすべての願いが叶ってしまうから、注意するのよ」
「どういうことですか??」
「例えば、あなたが冗談で、『今日の天気は雪にしてください』と私の聞こえるところで指示を出せば、すぐに雪が降ってくるのよ」
「分かりました、注意します」
うう、院長先生の前では、うかつに冗談も言えなくなってしまった
「さて、サイレント、あなた、神様になって、何がしたいのよ??」
「考えたことありませんでした」
「何で神様になったときのことを考えておかないのよ!?」
「そんなこと普通考えませんよ」
まさか、ボクが神様になるなんて、神様でも思うまい……って、意味が分からない言葉になっている。
「なんでもできるのよ。時を戻してもいいし、不老不死にもなれるし、死者をよみがえらせることだってできるし、人体錬成もできるし、金を作ってもいいし、軍隊を作ってもいいのよ」
ボクは神様になって、何がしたいんだろう??
忙しい人のためのまとめ話
サイレント、神様になるが、『スキル・全知全能』は院長先生経由でないと使えない。
サイレント、神様になって、やりたいことが見つからない。