第60話 サイレント、助けてくれたみんなにお礼をする
これまでのあらすじ
サイレント、扇動されていた貴族と兵士を説得する。
すべての元凶が姫だと知ったサイレント、姫と王様とナ・リキンを牢屋へ送る。
「それなら、あなたから回復させるのよ、サイレント」
「いや、ボクよりもアリアとフラットさんをしてください」
「分かったのよ」
院長先生はボクの肩をポンと叩いた瞬間、ヒールをかけてくれた。
もう、ボクは後回しでいいって言ったのに。
「ありがとうございます」
「別にいいのよ!! 次はアリアちゃんなのよ!!」
そう言い残すと院長先生はその場を後にする。
「みなさんも助けていただいて、ありがとうございました。ボク一人じゃきっとどうにもならなかったです」
ボクは助けてくれた人々にも深々と頭を下げる。
「どうってことないぞい」
「そうなんだよ」「そうなんだね」
「お礼を言わなければならないのはこちらの方です。改めて、娘を助けてありがとうございます」「パパを助けてくれてありがとう」
「サイレント、事情を話さず追い回してしまい、本当にすまなかった」
「このサンザール様とサイレントの仲じゃないか、良いってことよ」
人の繋がりって、本当に大切なんだな。
今回は、みんなに助けられたよ。
「お礼をするより先に、お妃様の統治をどうにかするのだわ」
噓発見調査官ミイ・コンさんが面と向かって言ってくる。
「え? あれは姫が助かりたくてついた嘘じゃないんですか??」
「違うのだわ。妃に政治を任せたら、自分の高級服や高級カバンばかりに予算をつけるのだわ」
「あ、そうなんだ」
お金があると、人はロクなことをしないんだな……
「ワタクシが監視するから、姫様に政治をさせて欲しいのだわ」
「そう言って、姫様を脅して、自分だけ得をしようとしてない??」
「そんなこと考えていないのだわ。ワタクシは妃が国民の税金を使って贅沢するのが我慢ならないのだわ」
「それなら、こちらからお願いいたします。特に報酬は払えないけど」
「報酬を払いたいなら、カッコいい魔族を紹介すると良いのだわ」
「え?」
「こんなに可愛いアリアちゃんのような魔族がいるなら、きっと格好いい魔族もいるに決まっているのだわ。ここで魔族の味方をしておけば、格好いい魔族に言い寄られるに決まっているのだわ」
ああ、そういえば、この人、院長先生やカバッカ町の司祭様並みに結婚願望が強いんだっけか……
「魔族ではないですし、気に入るかどうかはわかりませんが、とりあえず、院長先生を紹介しますよ」
院長先生は大人になるときに男を選択すれば男にもなれるんだ。
悪いけど、似た者同士、人身御供になってもらおう。
「サイレント!! 話は全部聞いていたのよ!!」
ボクをにらみつけてくる院長先生。
「すみませんでした」
ボクは反射的に院長先生に謝る。
あれ??
院長先生はアリアとフラットさんの治療をお願いしたはずだよね。
戻ってくるのはやくないか??
「あの、アリアとフラットさんの治療はどうなりましたか??」
「もう済んだのよ。しばらくすれば、歩いてお話するくらいはできるはずなのよ」
「さいですか……」
さすが、院長先生だ。
仕事がはやい。
「まったく、治療が終わったと報告に来て見れば、私を勝手に紹介するという悪事をしている最中だったのよ!!」
「悪事とは人聞きが悪いですよ、院長先生。ボクは良かれと思って紹介したんですから」
「この方が院長先生なのだわ??」
ミイ・コンが訊いてきた。
「そうですね」
「タイプじゃないのだわ!! 私、他の人を探すのだわ」
「そうですか」
ですよね。
うん、分かります。
今の院長先生は男でも女でもないから、どちらからも愛されないキャラだもの。
「それなら、姫を解放して、妃の政治介入を阻止するのだわ」
決意を固めて、城の牢屋へと行ってしまうミイ・コンさん。
「何で勝手に紹介されて、何で勝手に振られなきゃいけないのよ!!」
血涙を流す院長先生。
まさか、ミイ・コンさんが出会ってすぐに院長先生をふるとはボクも思っていなかったよ。
その場の空気が重くなる。
「えっと、我々は祝賀会の続きを楽しみますぞい!!」
そう言い残して、ほとんどの人はパーティー会場に逃げてしまった。
みんな、カムバック!!
ボク、失恋した人にどう声をかけていいか分からないよ。
心の中で願うと、誰かがこちらに来た。
あれは、フラットさんだ。
「もしでしたらー、私が婚約者になりましょうかー??」
傷心している院長先生に声をかけるフラットさん。
清らかな心なのか、院長先生と結婚したいというやましい心なのか……
「お断りするのよ!!」
「残念ですー。でもー、諦めませんよー」
「いい加減諦めてほしいのよ!!」
院長先生が強く言う。
「分かりましたー。それではー」
フラットさんは、そう言いながらどこかへと行こうとする。
「フラットさん、どこ行くんですか??」
「どこですかねー?? 少なくともー、私は姫の仲間だったんですから、サイレントさんのパーティーには戻れないですよー」
「戻ってきてくださいよ!! フラットさんは、姫にテイムされていただけなんですから」
「ですがー」
ちらっと院長先生を盗み見るフラットさん。
「私は気にしていないのよ」
「インフィニティは良くてもー、アリアさんがー、気にするのではー??」
「アリアは気にしないデス。むしろ、神殺しであるフラットお姉さまから、たくさんのことを学びたいデス!!」
「アリアさんー」
フラットさんは涙を流していた。
「ボクも院長先生もアリアもフラットさんのことを仲間だと思っています。ですので、これからもよろしくお願いいたします」
ボクは手を差し伸べた。
「はい、よろしくお願いいたします」
フラットさんがボクと握手をしようと手を差し伸べる。
「簡単にサイレントの手は握らせないのよ」
ボクとフラットさんの握手を阻止する院長先生。
「それならー、インフィニティとー……」
「フラットお姉さまと堕天使は、握手はさせないデス」
うん、いつも通りの風景になってきたね。
これでこそ、ボクのパーティーだ。
忙しい人のためのまとめ話
サイレント、助けてくれたみんなにお礼をする。
フラットさん、パーティーから抜けようとするが、全員が止める。