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第59話 サイレント、説得する

これまでのあらすじ

 魔王、サイレントを助けようとするが失敗する。

 サイレント、気配察知をして、この物語を読んでいる読者に気づき、話しかける。


 アーノム・ギトーゲの空がまばゆく光る。

「何なのじゃっ?? あのまばゆい光はっ??」


「異世界にいるボクの冒険を見守ってくれている仲間の力だよ!!」


「あれ?? 俺は何でこんなところにいるんだ??」「何をしているの、私??」「まるで夢の中にいたみたいな……」


 よし、あなたのおかげで、貴族と兵士が正気に戻ったぞ!!

 力を貸していただき、ありがとうございました!!


「妾のテイムを解放する力というわけじゃな?? まあよい、またテイムしなおせばいだけじゃっ!! 皆の者、今、悪い魔王が襲ってきているのじゃ!! 妾は、主らを強くすることができる!! 妾と一緒に戦って、魔王を倒すのじゃっ!!」


「姫様に従って悪い魔王を倒すんだぞ!!」

 ナ・リキンがみんなに呼びかける。


「そうだ、姫様に従って悪い魔王を倒せ!!」「そうだ、悪い魔王を倒すんだ!!」「悪い魔王を倒せ!!」

 まずい、せっかくテイムが解けたのに、このままだと、元の木阿弥だ。


「ねえ、みんなは魔王が悪い悪いって言っているけどさ、本当に魔王は悪いの?? きちんと話したことがある??」


「話したことはないけど、魔王と言えば悪の権化じゃないか!!」「そうだ、そうだ、悪の権化だ」「悪の権化のなにものでもない」


「それは違うよ!! 魔王は魔界で一番強かったってだけで、それ以外は、家族を大切にするパパだもん!! 魔王が悪の権化だというなら、魔界の王様を呼ぶ名前としてではなくて、悪いことをする人や魔物や天使をそう呼ぶべきだよ!!」


「天使様が悪いことなんかするか!!」


「悪い天使がいないなら、堕天使なんていないはずだよね?? ボクは知っているよ、堕天使がいることを」


「「「「「そ、それは……」」」」」


 くちごもる人々。


「それと同様に人の中には悪いことをする人だっているじゃないか。ボクからしてみたら、自分の利益のために、麦の値段を上げて、良民を苦しめる、ナ・リキンのような人間の方がよっぽど悪い魔王だと思う!!」


 ボクはナ・リキンを指さした。


「「「「「麦の値段が上がっていたのは、ナ・リキンのせいだったのか!?」」」」」

 驚く兵士と貴族たち。


「違うんだぞ!!」

「言い逃れするのかい?? 麦を作るものは、みんなあんたの仕業だって知っているんだよ!!」


 あれは、露店にいたパン屋の主人。


「そうです! 貴族のやり方は横暴ですよ!!」


 あれは、確か、ヒヤクシ・ヨウさん。


「このサイレントさんは困っている私に持っているお金をすべて貸してくれたんです!!」


「ボクがヒヤクシ・ヨウさんにお金を渡しただって?? そんな覚えはないんだけど」


「師匠、やっぱり覚えてなかったんデスね。お城に泊ったあの日、アリアたちがお風呂から上がると、サイレンコさんがいなくなっていて、堕天使とフラットさんと町中を探して回ったんデスよ。そしたら、サイレンコさんは、ヒヤクシ・ヨウさんにすべてのお金を渡していたんデスよ」


「え? ボクがそんなことを」

 ボクのお金が無くなっていたのはそういうことだったのか。


「「「「「やはり、サイレント様は素晴らしい!!」」」」」」

 みんなはボクを温かい目で見てくれた。


「「「「「「ナ・リキンこそ魔王だ!! ナ・リキンこそ魔王だ!! ナ・リキンこそ魔王だ!!」」」」」」

 そして、ナ・リキンを魔王だとののしり続ける。


「お助けくださいぞ、ルゥ姫様!! 姫、ここはあなたの能力で民衆を黙らせてほしいのですぞ」


 泣きつくナ・リキン。


「ダメじゃっ!! あまりにも民衆が心を動かされていて、妾の能力じゃ制御しきれないのじゃっ!!」


「ここぞという時に使えない能力なんだぞ!!」


「はぁっ?? お前の日ごろの行いが悪いからなのじゃっ!! 自業自得なのじゃっ!!」

「このナ・リキンを見捨てるおつもりですかぞ??」


「そもそも、お主と仲間だった記憶はないっ!!」

「それはひどすぎですぞ、姫!!」


「仲間ではないからひどくはないのじゃっ!!」

「はあ?? お前が魔王を倒すために金がかかると言ったから、麦の値を吊り上げて、金策してやったんだぞ!!」


「金策してやったじゃとっ?? 良く言うのじゃっ!! 予定の倍以上も値段を吊り上げたあげく、中抜きをしおってっ!!」

「義賊・パルーンなんて架空の盗賊を演じて、お金を集めていた姫に比べれば可愛い金額ですぞ」


「兵士が一丸となって魔王を倒しに行くには、もっと多くの金が必要なのじゃ」

「別に悪徳貴族から盗まなくても良かったのだぞ!!」


「魔王を倒すために挙兵するとなれば、お金と美談はいくらでもあったほうが良いのじゃっ!!」

「そのためにこのナ・リキンが泥をかぶれと言うんだぞ?? 冗談じゃないぞ!! このナ・リキンには何もメリットがなかったぞ!!」


「ふんっ、メリットならあるのじゃっ。お主は今、牢にいないのは誰のおかげじゃっ??」

 仲間割れだ。


「……ちょっと待って、最初から姫とナ・リキンは仲間だったの??」

「しまったのだぞ!!」「しまったのじゃっ!!」


「「「「「「ナ・リキンとルゥ姫こそ魔王だ!! ナ・リキンとルゥ姫こそ魔王だ!! ナ・リキンとルゥ姫こそ魔王だ!!」」」」」」


 もはや、姫の命令を聞く人は一人もいなかった。

 その場にいた全員が姫とナ・リキンを取り巻く。


「姫のせいですぞ!!」「ナ・リキンのせいじゃっ!!」

 うん、見苦しい。


「みんな、姫とナ・リキンを縄でつないで牢屋に入れるんだ!!」

「分かりました!!」


 縄を持って返事したのは王様だ。


「返事した王様も忘れずにね」

 この王様もグルだったんだから。


「待て!! ワタクシは、姫にそそのかされただけだ!!」

「往生際が悪いですよ、王様」


「よし、このサンザール様が、責任をもって牢屋に連れて行ってやるぜ!! 誰か、牢屋まで案内してくれ!!」

「これでアーノム・ギトーゲに平和が訪れるぞ!!」


「待つのじゃっ!! これから、アーノム・ギトーゲは誰が統治するのじゃっ??」

「お妃様がいるでしょ??」


「政治にド素人の妃に任せたら、国が傾くのじゃっ!! 妾に任せるのじゃっ!!」

「みんな、悪い姫を止められたよ!! ありがとう!!」

 ボクは姫の言葉を聞かなかったことにしてみんなに話しかける。


「「「「「「サイレント、万歳!!」」」」」

「みんなして同じことを言っているけど、姫に操られてないよね??」


「本当にお前はバカだな」「操られているわけがないだろ!!」「操られていたら、サイレントを追いかけているよ!!」


「やっと、麻痺が治ったのよ!! サイレントを助けるのよ!!」

「「「「「「…………はっはっはっはっ!!」」」」」」


 その言葉にみんなは笑った。


「院長先生、悪い奴は捕まえましたぜ」

 おっちゃんは縄で捕縛したナ・リキン、姫、王様を見せつけるようにして説明する。


「どうやら、少し遅かったみたいなのよ……」

 顔を赤くする院長先生。


「そんなことないですよ。傷ついた人々の治療をお願いします!!」

 ボクは深々と頭を下げた。


忙しい人のためのまとめ話

 サイレント、扇動されていた貴族と兵士を説得する。

 すべての元凶が姫だと知ったサイレント、姫と王様とナ・リキンを牢屋へ送る。

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