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第36話 サイレント、アリアに手紙を読むように頼む

前回のあらすじ

アリア、サイレントとパーティーを作ろうとする。

サイレントあてに手紙が届く。







 

 冒険者ギルドの中にはボクみたいに文字を読めない冒険者もごくわずかにいたはずだ。


 ここでアリアの仕事ぶりを褒めちぎって、受付嬢の適性があるんだとアリアが思えば、冒険者になることをやめるかもしれないぞ。


 我ながら、なんという名案!!


「それなら、読んでもらおうかな」

「師匠宛の手紙なのに、アリアが読み上げていいんデスか?」


「急ぎらしいし、アリアに読んでもらえたら嬉しいな」

 ふふふ、自然な流れだ。

「師匠、何か企んでいるんデスか?」

 う、鋭い。


「ぜーんぜーん、なーんにも、企んでないよ」

「本当デスか?」


「本当だよ。何? 師匠の言うことが信じられないの?」

「そういうことではないデスが……」


「それなら、早く読んで。急ぎなんだから」

「分かりました! 不肖アリアが、師匠のお手紙を読ませていただきます」


「よろしくお願いします」

 ボクは頭を下げる。


「親愛なるサイレント様――」

 手紙の内容を意気揚々と読み上げるアリア。


「――現在のパーティーから脱退する手続きが完了いたしましたので、通知いたします。つきましては……これって、パーティー追放の通知!?」

 アリアが素っ頓狂な声をあげる。


「パーティ追放だって!?」「誰が追放されたんだ?」

 通行人から注目を浴びるアリア。


 顔から血の気が引いていくのが、自分でもわかった。

 もはや、アリアを褒めるどころの話ではない。


「師匠、ここは人目があります。まずは家の中に入りましょう!!」

「そうだね」

 ボク達は家の中に入った。


「昨日のことは本当だったんだ……」

「これは、何かの間違いデスよ! こんなに強い師匠が追放なんてされるわけがありません」


「ありがとう、アリア、フォローしてくれて」

 でも、ボクは強くないんだよ。


 ボク、パーティーで最弱な役立たずだからね。

 面と言われずに、書類だけで追放されるってこんなに惨めな気持ちになるんだな。


「師匠、まずは冒険者ギルドに行って、真偽を確認したほうがいいデス!」

「いや、いいんじゃないかな……」


「駄目デス! 行きますよ師匠!」

 ボクはアリアに促され外に出た。


 テンションが低くなったボクは、いつも以上に気配を消し、肩を落として歩いていた。

 行き交う人はボクの存在に気づくことができないので、ボクは足音だけで自分に近づいて来ているかを確認し、ぶつかりそうになったら、避けて歩く。


「今日の町は人通りが多いデスね、師匠!」

 アリアは気を遣ってくれているのだろう。

 ボクに話しかけてきてくれた。


「そうだね。今日は伝統的な100周年祭りが夜にあるから、人が多く集まっているって、警備のおっちゃんが言っていたっけ……」

 祭りの活気ある喧噪がボクをなおさら惨めにした。


「祭りデスか?」

「うん、この伝統だけは後世まで残さなければならない、とても大切なお祭りらしいよ」

 楽し気に笑う家族が目に入り、さびしさが押し寄せる。


「そうなんデスね」

「うん、聖火をこの町の人全員で捧げなければいけない……って院長先生も言っていたな」

 そう、みんなで協力して一つの物をつくりあげる


「それはすごい祭りデスね」

「そうだね」

 そんな祭りの中、重い足取りで冒険者ギルドへと向かった。


「アリア、ちょっと待って」

 ボクはアリアに待ったをかける。

「どうしたんですか」


「この先にパーティーメンバーのラカンがいる」

 この足音は間違いなくラカンだ。

 ボクは気づかれる前に、気配を消して、アリアを引き連れてラカンから逃げようとした。


「何ですか、師匠」

 アリアの腕を思いっきり引っ張ったのだが、アリアの方が力があるため、ボクは逆にアリアに引っ張られ、道の真ん中で倒れこむ。

「ぐへっ」


「大丈夫デスか? 師匠?」

「ああ、うん、大丈夫だよ」


「おや? そこに倒れているのはサイレントじゃないか!」

「やー、ラカン、奇遇だね。こんなところで」

 ボクは倒れたままでラカンの言葉に答える。


「もしかして、お前、今、俺様から逃げようとしなかったか?」

「そ、そんなわけないじゃないか」

 図星だ。


「そっか、俺様の探索能力も鈍っちまったかな? 逃げようとするサイレントを捕捉したと思ったんだが……」

「逃げる気なんて毛頭ないよ。なんでボクが逃げなくちゃいけないんだよ?」


「いやあ、俺様たちからの手紙はもう届いたかと思ってな」

 にかっと笑うラカン。


 やっぱり、あの通知は間違いじゃなかった。

 ボクは地面に這いつくばった。


 ゴーン。

 重々しい鐘がなる。


「それでは、これから100周年祭りが始まります! 盛り上がって行きましょう」

 祭り開催の宣言とともに、町中に盛大な拍手が起こる。


 すぐに立ち上がらなければと思うのだが、体のどこにも力が入らない。

 まるで、得体のしれない何かがボクの体を地面に縛り付けているようだった。


忙しい人のまとめ話

サイレント、アリアに手紙を読ませたら、内容はパーティーからの追放だった。

サイレント、勇者に追放だと告げられる。

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