第57話 姫様、暴論でサイレントを追い詰める
これまでのあらすじ
ホバッカ村の村長とムーとジュンと天界の天使長カナエル、サイレントをかばう。
カバッカ町の司祭様、自分の罪を認め、サイレントをかばう。
「「「「「サイレントが死刑じゃないならば、罪人ではないのでは??」」」」」
「そんなことないのじゃっ!! この男は魔族の女と組んで、国家を転覆させようとしているのじゃっ!! はやく殺すのじゃっ!!」
「いや、ボクとアリアが国家を転覆させる証拠は??」
「巧妙に隠しているのじゃっ!!」
「そんなの暴論じゃないか!!」
「この男はつい先日まで指名手配されていたのじゃっ!! それだけで理由は十分なのじゃっ!!」
「「「「「その通りだ、うぉー!!」」」」」
姫の一声で、貴族と兵士たちは、ボクに襲い掛かってくる。
もはや、邪魔な人々を排除するのではなく、ボクだけを狙ってきていた。
いやいや、指名手配はヴァンパイア・あげはの私怨だよね。
「サイレント殿、逃げるんだぞい!!」
「逃げたいんだけど、全身が痛くて逃げられないんだ」
「それならば、ヒールをかけるっす!!」
天使長カナエルは空からボクに向かって魔法をかけようとする。
その瞬間、兵士たちは組み体操でピラミッドの階段を作り、その階段を駆け上って、カナエルに多くの人がとびかかった。
「逃げて、カナエル!!」
カナエルは兵士たちにつかまり、もみくちゃになってしまった。
「カナエル!!」
「痛いっす!! 痛いっす!! でも生きている感じがするっす!!」
ああ、そういえば、そういう性格だったっけ……
「カナエル様、ボクのことはいいから自分を回復させるんだ」
「サイレントは私が回復させます!!」
カバッカ町の司祭様が言った瞬間、アーノム・ギトーゲの兵士たちは、ピラミッドを崩し、司祭様にとびかかる。
「逃げるんだぞい、カバッカ町の司祭様!!」
ホバッカ村の村長が声をかけると、その声に反応して、今度は貴族たちが村長にとびかかった。
「最強の矛で倒すんだよ」「最強の盾で守るんだね」
「みんなは操られているだけなんだ!! 絶対に殺さないで!!」
「殺さずに、この人数相手だと、きついんだよ」「殺さずに、この人数相手だと、きついんだね」
「助太刀します」
ニック村のショウ・ジキも手伝うが、全員乱戦で『もみくちゃ状態』だ。
「それなら、あたい、この姫を狙うよ!!」
ニック村のショウ・ジキの娘が叫ぶ。
「そうはいかないのじゃっ!!」
いつの間にか、姫様は多くの盾を持った兵士に囲まれて守られていた。
「これじゃあ攻撃できない」
ショウ・ジキの娘は、唇を噛んだ。
「反逆罪じゃ!! その娘をひっとらえろ!!」
まずい、このままだとじり貧で、みんなやられてしまう。
「みんなは関係ない!! 襲うならボクだけにするんだ」
ボクはアーノム・ギトーゲの貴族と兵士たちの前にでた。
「師匠、みんなが師匠を助けようとしてくれた気持ちを踏みにじっちゃダメデス」
「分かっているけど、アリア。ボクのせいでみんなが傷つくのは見ていられないよ」
「年貢の納め時じゃっ!! サイレントを殺すのじゃっ!!」
「ちょっと待った!!」
すごく聞きなれた声がした。
ボクが振り返る。
「おっちゃん!!」
「あ、あれは、カバッカ町の治療の神、サンザールじゃないか!!」「サンザールと言えば、カバッカの町で、患者を見ないどころか、病状も聞かずに、何も言わずに病を治したという伝説を作った、あの神サンザール!!」「はやり病も一人で鎮圧させた、まさに神様の権化」
いつの間にかすごく有名になっているな、おっちゃん。
「神様の権化なんて言われているが、正直に言おう。俺のあの力は、サイレントがフェス様を倒した羽根の力だったんだ。つまり、俺の力じゃない!!」
「「「「「「何だって!?」」」」」
「おっちゃん!! いいの? 本当のことを話しちゃって?? 本当のことを言わなければ、カバッカ町で神様になれるのに」
「良いに決まっているだろ。サイレントのピンチに駆けつけるのが、このサンザール様ってもんよ」
「おっちゃん」
まさか、おっちゃんが助けてくれるとは思わなかったよ。
こういう時、おっちゃんなら、何も言わずに、ことの成り行きを見守るだけのタイプなのに。
感動して泣きそうなんだけど。
「たくさんの人を救いすぎて、フェニクスの羽の効力がキレかけて、あと数人くらいしか助けることができなくなったから、神様ごっこもそろそろ辞めないといけない頃だと思っていたしな」
「おっちゃん、今、何か言った??」
ぼそぼそとつぶやくから聞こえなかったんだけど。
「いや、なんでもない、こっちの話だ。それよりも、カバッカ町のみんな、サイレントを助けるんだ!!」
「サンザールに助けられた絵命、今こそ恩返しすべき時!!」「いくぞ!!」「うぉー!!」
ボクを助けようとするカバッカの人々とそれを阻止しようとする貴族と兵士たち。
もう中庭はカオスだ。
「このサイレントは魔法で王様を操ったのじゃっ!! 絶対にここで死刑にするのじゃっ!!」
「ちょっと待つデス!! 王様を魔法で操ったのはアリアで、師匠は関係ないデス」
「そうだよ、ボクは関係ないよ」
悔しそうに唇を噛むお姫様。
「直接的に操ったのはサイレントじゃなくても、パーティーメンバーが操ったのじゃっ!! つまりこやつは悪い奴なのじゃっ!!」
うん、苦しくなってきたね、姫様。
「それならば、サイレント殿はいい人だと、拙者が保証するでござる!!」
「お前、誰じゃっ?? 部外者ならば引っ込んでいろっ!!」
「拙者は魔王でござる!!」
「「「「「「魔王だ!!」」」」」」
脱兎のごとく逃げようとする貴族たち。
カオスな会場がさらにパニックになった。
忙しい人のためのまとめ話
姫様、暴論でサイレントを追い詰める。
サイレントをかばった人たちがやられていくが、おっちゃんと魔王が現れる。