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第54話 サイレント、アリアをかばう

これまでのあらすじ

 サイレント、姫の適性職業を思い出し、指摘する。

 サイレント、姫に今までのサイレントの悪行を暴露されるが、言い訳できない。

「この女は魔法を使って、王様に幻覚をみせて、王様を意のままに操ったのじゃっ!!」

 アリアを指さす姫。


「それは麦の値段を下げるためにやったことデス!! あなたの同意もあったはずデス!!」


 さすが、アリアだ。

 ボクと違って、姫に即座に反論をするなんて。


「そうだ、そうだ!!」


 アリアの言う通りだ。

 お姫様の同意を得て王様を操ったんだ。


「妾は同意なんかしておらぬのじゃっ!!」

「見え透いた嘘デス!!」


「それなら問おう、妾が同意書でも作ったのかっ?? あるなら出してみるのじゃっ!!」

「それは、…………作ってないデス」


「そう、作っていないのじゃっ!! 王様が治療するときは、同意書がひつようなのじゃっ!! 王様を操るという大事を為すのならば、同意書が必要なのじゃっ!! つまりは、妾の同意なしに王様を操ったのじゃっ!!」

 反論しようにも、お姫様がウソを言っていないので何も言えない。


「「「「「「なんてやつだ!! 同意なしに王様を魔法で操るなんて!! お前の言うことなんか信じられるか!!」」」」」」


 叫びながらその場にいた全員が石を投げてきた。

 しかも、飛んでくる石は、まるで筋肉ムキムキの冒険者が投げているのようにものすごいスピードだ。


 まずい!!

 ボクはアリアをかばおうとするが、フラットさんから受けたダメージがあり、アリアをかばえない。


「師匠は悪くないデス!!」

 貴族たちが投げてくる手の平サイズの石を避けも、叩き落しもせずに血を流しながら、必死にかばってくれるアリア。


「「「「「いい加減にひっこめ!!」」」」」」

 貴族たちはさっきよりも多くの石を投げ始めた。


「絶対に引っ込まないデス!!」

 全身傷だらけになったアリアはひざをおりそうになるが、絶対にひるまない。


「アリア、かばってくれてありがとう。でも、もういいんだよ」

 ボクは自分の体に鞭打って、アリアの元へとヨタヨタと歩いて行くと、飛び交う石からアリアを守るようにアリアを優しく抱きしめた。


「師匠、ダメです!! 師匠は全身ボロボロデス!! アリアをかばわないでくださいデス!!」

「そう思うなら、ボクの腕から逃げてごらん」


 ボクはアリアをぎゅっと抱きしめた。


「ずるいデス、師匠。アリアは麻痺状態で、師匠の腕を振りほどくことなんてできないデスのに」

「「「「「「何、二人でラブストーリーしているんだ!!」」」」」」


 投石の量がさらに増えた。

 痛い、痛いよ!!


「アリアに罪はないんだ!! 王様のことはボクが謝るから、アリアは無罪にして欲しいです!! お願いします!!」


 ボクは抱き着いたアリアの腕を降ろし、アリアの前に立ち、かばいながら、姫に頭を下げた。


「この魔族を無罪にして欲しいのなら、妾と契約して、騎士団長になって、妾が神様になる手伝いをするのじゃっ!!」

「ダメです、師匠!!」


 さて、どうするべきか。

 ここでボクがうなずけば、アリアは助かるけれど、ボクはテイムされて、姫の手駒になってしまう。


 それなら、断るか??

 そうすれば、ボクもアリアも助からないはずだ。


「分かったよ」

「それなら、さっそく、妾と契約をするのじゃっ」


「『分かったよ』……って言ったのは、アリアに言ったんだ!! 姫と契約はしないよ!!」

「なんと薄情な男じゃっ! やはり、魔族を助けたくないのじゃなっ!!」


「アリアは助けたいよ!! でも、ボクが姫にテイムされて、姫を神様にするのは違うと思うんだ」

「何が違うというのじゃっ??」


「人を道具としか思わない人を神様になっちゃいけないと思う!! だから、姫には従わない!!」

「そうか妾に従えないなら、死刑台で死ぬといいのじゃっ!!」


「え?? どうしてボクが死なないといけないの??」

「死にたくなければ、妾に従うのじゃっ!!」


「ボク、死ぬのも君に従うのも嫌なんだけど!!」

「ダメじゃっ!! どちらかを選択するのじゃっ!! 妾に服従するなら神になる権利を奪えるし、この死刑台で首を吊って死ぬのならきっと妾に運が戻って神様になる権利が戻ってくるはずなのじゃっ!!」


「どちらも選ぶ必要なんかないデス!! 逃げればいいだけデス!!」


「その深手で逃げ切れるのじゃっ?? 逃げられるはずがないのじゃっ」


 確かに、アリアもボクもボロボロだ。

 おそらくこの状況からなら、貴族たちからも逃げられないだろう。


「死か服従か選ばないなら、今すぐにお主と魔族をデッド・オア・アライブで全国指名手配してやるのじゃっ!! 選べば、魔族は助かるのじゃっ!!」


「……分かったよ、ボクの命を差し出すよ」


「「「「「「「死刑!! 死刑!! 死刑!! 死刑!!」」」」」」」」

 ボクの判断で鳴り響く死刑コール。


「ちょっと異様すぎるよな、ここの貴族たち……」

 もしかして、ボクたちがアーノム・ギトーゲの麦の値段を下げたのを根に持っているのだろうか??


「ああ、それは妾が貴族たちを操っているからなのじゃっ!!」

 姫はボクにだけ聞こえるように言ってきた。


「まさか、ここにいる貴族たちは君にテイムされて操られているの??」

「半強制的にだが、ナ・リキン以外の全員を操っているのは間違いないのじゃっ!!」


「半強制的ってどいうこと??」

「半強制的というのはの、妾のカリスマ性に心奪われ、妾の都合の良いように動かすことができるのじゃ。よほど心動かす出来事でもない限り、ここにいる貴族たちはすべて妾の傀儡じゃっ!!」


「さっきから生気がなく、みんなが同じことを言っていたのって、もしかして……」

「もちろん、妾の能力のせいじゃっ!」


 なるほど、これじゃあ、ボクが何を言おうが、聞く耳をもってくれないわけだ。

 ボクは唇をかみしめた。


「ちなみにじゃが、妾に操られたものは、筋力も格段にあがるのじゃっ!!」

「だから、さっき、みんなが石を投げた時に、ものすごい威力だったのか」

「そういうことじゃっ!!」


「ボクが死んだら、この人たちは解放してあげてよね」

「妾に指図するとは、生意気な男じゃっ!! じゃが、よかろうっ!! お主が死んだらなっ!! おっと、お主の能力、空動を使うことは禁止するのじゃっ!!」


「分かった、空動は使わない。その代わり、ボクの約束守ってよ」

 ボクは死刑台へと向かう。


「師匠、ダメデス!! 師匠は悪いことなんかしていないのに、どうして死刑にならなければいけないんデスか??」

 泣き崩れるアリアの肩をボクはポンと叩いて、アリアの前に出た。


「もう、いいんだ」

 ボクの人生なんてこんなもんだ。


 みんなに誤解されて、散々な人生だったけど、アリアだけはボクのことを信じてくれた。

 一人信じてくれる人がいればそれで良いじゃないか。


 ボクは諦めて死刑台へと歩みを進め、縄の中に首を入れた。

 バイバイ、ラカン、アイズ、ブリジット、おっちゃん、フラットさん、院長先生、そして、アリア。


「ちょっと待った!!」

 男の大きな叫び声が聞こえてきた。


 一体誰だ??

 ボクを止めるのは。


「サイレントさんはいい人なんだ!! ボクが保証する!!」

「あなたは……」

 叫ぶ男の特徴的なやけどした顔を見て、ボクは目を見開いてしまった。


「…………誰??」

 ボクは首をかしげる。

 アサシンの格好をしていて、こんなに特徴的なやけどがあったら、絶対に覚えているはずだ。

 でも、見たことない顔なんですけど……


「「「「「お前誰だ?? アサシンの格好をしているということは、どうせ、サイレントの仲間だろ!! 説明しろ、サイレント!!」」」」」

「こっちが訊きたいよ!!」


忙しい人のためのまとめ話

 サイレント、姫に『自害する』か『姫に従う』かの選択を迫られる。

 『自害する』を選んだサイレント、死ぬ直前に見知らぬ男に止められる。

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