第52話 サイレント、院長先生に助けを求める
これまでのあらすじ
サイレント、フラットさんに逃げ道を誘導されて中庭にたどり着く。
サイレント、マジック・バックで弾を全て回収しようとするが、フラットさんに阻まれる。
一度弾が止まったせいか、弾が順番に向かってきている。
1発ずつ向かってくるならば、すべて避けきれるかもしれない!!
「弾がボクを追いかけなくなる時間まで、すべての弾を避け切ってみせる!!」
ボクはダガーをかまえた。
「無理ですよー、サイレントさんを狙う弾が合計3万発あるんですからー」
「それでもやってみせる!! 気配察知を使えばボクに死角はないんだから!!」
ボクは飛んできた1発ずつ弾を避けた。
空動を使い、低空飛行をしながら、空中で上からくる弾右から来る弾、左から来る弾、後ろから来る弾を避け続ける。
「すごいですねー。でもー、避けても避けてもー、その避けた弾も追いかけてきますよー」
「分かってますよ」
時間が経てば経つほど、弾が多くなり、逃げ場がなくなっていく。
こうなったら仕方がない。
ボクはダメージ覚悟でダガーに弾丸を当てて、逃げ道をきりひらこうとした。
ボクがダガーで斬ってしまった弾は半分になり、地面にえぐりこみ、ボクを追いかけて来ていなかった。
爆風が来ることが予想されたが、まったく爆風は吹いてこない。
「…………って、爆発しないんかい!!」
「私の弾はぶつかったら爆発するなんてー、一言も言ってないですよー」
あ、そっか。
この弾、妖精さんと同じように追いかけてくるから、妖精さんと同じで、ぶつかったら爆発すると思い込んでいたけど、そうじゃないんだ。
そうだよ、この弾は何かに当たっても、応接室の鉄製のドアもぶち破ってきたじゃないか。
それなら、避けながらも、弾を斬ればいいんだ。
ボクのダガーはティタン製なんだから。
ボクは避けながらも、斬れそうな弾はダガーで斬り落とした。
やはり、爆発しないぞ。
「気づいたんですねー。私の弾が斬りおとせることにー。でもー、斬りおとして防御に徹しているだけではー、私を倒せませんよー!!」
その通りだ。
すごい多い弾丸の何発かを斬りおとしたところで、ピンチには違いない。
……いや、待てよ。
これってもしかして攻撃のチャンスなんじゃ……
そうだよ、弾が爆発しないなら、ボクのターンだよ。
「これならどうだ!!」
ボクはダガーを持ち直して、ダガーに当てる。
「なるほどー、跳弾ですねー」
「その通りです!!」
ボクはうまくフラットさんへ跳弾させた。
よし、このままなら、フラットさんの腕にあたるだろう。
跳弾させているから、弾の威力は弱くなっていて、致命傷にはならないだろうけど、攻撃できるというメリットは大きい。
「よく考えましたがー、でもー、残念ですー」
フラットさんは微動だにせず、眉を顰める。
何が残念なんだ??
弾がフラットさんの腕に当たりそうになった瞬間、弾は軌道を変えて、ボクに向かって飛んできた。
「私の弾はサイレントさんを追い続けるんですよー」
しまった!!
そうだよ。
フラットさんの弾はボクをホーミングするんだった。
これじゃあ、跳弾させた意味がないじゃないか。
ボクは飛び交う弾丸を避け続ける。
それなら、このままフラットさんに体当たりすれば、フラットさんも巻きこまれるはずだ。
ボクは突進しようとするのだが、飛び交う弾丸がフラットさんへの進路を邪魔して、フラットさんへ近づけない。
まずい、何発か、顔にかすってしまった。
「痛い!!」
「流血していますよー、サイレンコさんー。何か策を講じないとー、サイレントさんの負けは時間の問題ですねー」
「サイレント!!」
声の方を見ると、院長先生が何かを見ながら王城の窓から身を乗り出し、両手をパーにして叫んでいた。
「院長先生!! 助けてください!!」
弾を避けながら必死に叫ぶ。
「分かったのよ!!」
ボクは院長先生の手を見ながら、弾を避け続ける。
「もしかして、インフィニティー、サイレントさんをー、回復させようとしていますかー?? ですがー、その距離からではー、回復魔法は届かないですよねー」
フラットさんは、院長先生に背を向けて、ボクだけを見続けながら、大きな声を出した。
「確かに、この距離だと難しいのよ。でも、私ができることは、回復魔法だけじゃないのよ!!」
「ああー、なるほどー、そこからお得意のホーリィで私を攻撃するつもりですかー??」
「それも違うのよ!!」
「それならー、何をするつもりなんですかー??」
「もちろん、あなたを回復させるためなのよ、フラット!!」
そう言いながら、院長先生は左手を降ろした。
「私を回復?? 何を考えているんですかー??」
「サイレントを裏切るのよ!!」
「院長先生、正気ですか??」
「私はいつだって、強いものの味方なのよ!! なんなら、結婚したっていいのよ!!」
「ついにー、私との結婚を認めてくださるんですねー、インフィニティー」
「もちろんなのよ!!」
パン。
フラットさんは院長先生を見ることなく、背後にいる院長先生にハンドガンを向け、銃で撃った。
「それならー、インフィニティー、少しの間ー、麻痺していてくださいー!!」
「どうして……なのよ、フラット??」
「私、知っているんですよー。インフィニティがー、サイレントさんを裏切ってー、敵の仲間になるときはー、敵を倒す算段がついているときですからー」
う、バレてる。
フラットさんは、天界で院長先生とカナエルとの戦いを影から見ていたのだろう。
「大丈夫なのよ、当たっていないのよ!! 腕が落ちたんじゃないのよ??」
「そんなはずはないですー」
フラットさんは振り返って院長先生の方を見ると、院長先生はぱたりと倒れた。
「最初から自分に麻痺回復魔法をかけてー、麻痺速度を遅らせただけでしたかー」
「院長先生!!」
「さあー、インフィニティは麻痺させましたー。サイレントさんー、諦めてー、降参してくださいー」
音だけで院長先生の場所を特定するなんて、神殺しの名前は伊達じゃない。
ボクの方を向きなおすフラットさん。
その顔はとても悲しそうだった。
「降参するのはフラットさんの方です!!」
忙しい人のためのまとめ話
サイレント、弾を避け続け、院長先生に助けを求める。
サイレント、フラットさんに勝利宣言をする。