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第35話 サイレント、アリアに協力する

前回のあらすじ

サイレント、アリアに冒険者になることを諦めさせるために、自分の技を披露する。

アリア、完コピして、サイレントを落ち込ませる。








 

 すごいな、アリアは。

 ボクより若いのに、魔王を倒すという明確な目標がある。


 しかも、どこまでもまっすぐな眼で目標を見続けている。

 ボクがアリアと同じ年の頃、日々生きることに精一杯で、きちんとした目標などなかったはずだ。


「分かったよ、アリア」

 院長先生には悪いけど、これはアリアを応援しなくちゃいけないな。


 そう、応援。

 決して、よこしまな考えがあるわけじゃないんだからね。


 アリアが魔王を倒した時に、アリアを指導した師匠として有名になりたい……とか、アリアの師匠という肩書を手に入れて、冒険者のコーチになるのを夢見ている……とかじゃないんだからね。

 そんなことこれっぽっちも考えてないんだからね。


 そう、これは応援したいという、純粋な気持ちだ。

 ぐへへ、名誉とお金が一度に手に入る絶好のチャンスだ。


「……ということは、アリアに協力して魔王を倒してくれるんデスか? ありがとうございます」

 深々と頭を下げるアリア。


「ちょっと、待って。さすがにボクが魔王を倒しに行くのは無理だよ」

「でも、今、師匠、分かったって言ったデスよね?」


「言ったけど、アリアにも目標があるように、ボクにもこの町で冒険者として平穏に暮らすっていう目標があるんだ。だから、アリアとはパーティーを組めないよ」


「分かりました」

 良かった、分かってくれたか。


「わざわざ魔王城などには行かずに、魔王をおびき出して倒して、平穏に暮らすってことデスね?」

「そうそう、魔王に果たし状を送りつけて、この街で決闘をすれば……って、ちっがーう。魔王の住所を知らないし」


「魔王の住所を知っていれば、果たし状を送るんデスか?」

「そうそう、住所さえわかれば、果たし状は郵便屋さんが送ってくれる……って、送らないよ! こんな町中に魔王が現れたら、みんな大パニックだよ!」


「それなら、魔王の一人娘を人質にすれば、魔王が怒って師匠のところまで来るはずデス」

「そうだね、魔王の一人娘を人質にすれば……って、そんなことしたら、どっちが悪かわからないよ!!」


「なるほど、つまり、魔王を町はずれに召喚して、戦おうという魂胆デスね?」

「そうそう、町はずれに魔王を召喚すれば、住人にも迷惑がかからないから万事OK……って、ちっがーう」


「そうでした、師匠はアサシンですから、召喚術は使えないデスもんね」

「そうそう、ボクは生粋のアサシンだから、召喚はできない……って、ちっがーう」


「何が違うんデスか? 師匠は生粋の『アサシン』デスよね??」

「あ、そうだ。そこは合ってた」

 正確にはバカシンでもあるから、生粋じゃないけどね。


「そうデスよね。ですから、何か他の方法で魔王を呼ぶつもりなんデスよね?」

「そうそう、超能力を身に付けて、『魔王様、魔王様お越しください』ってテレパシーを……って、違うから。ボクは魔王と戦うつもりなんか、これっぽっちもないの」


「これっぽっちもないんですか? ほんの少し位はあるんじゃないデスか?」

「ない」

 ここで意志を明確にしておかないと、後々大変なことになりそうだと判断したボクはきっぱりと言い切る。


「それなら師匠、一緒にパーティ組んで、倒しましょうよ、魔王!」

「ボクは魔王を倒さないの。そもそもボクは既に勇者のパーティーを組んでいるんだ」


「勇者のパーティーとアリアのパーティーを兼務すればいいんデスよ!」

「過労死しちゃうよ」

 1つのパーティーでも疲れ切っているのに。


「そうデスか。それなら、アリアを師匠のパーティーに入れてくれませんか?」

 なるほど、アリアがボク達の勇者パーティーに入れば、ボクは過労死を免れるというわけか。


「うーん、それは難しんじゃないかな。アリアは天才かもしれないけど、駆け出しの冒険者だから、他のメンバーが首を縦にふるとは思えないな」

「そう……デスか……」


 家の前で肩を落とし、地面を見つめるアリア。

 うう、こういう時、なんて声をかければいいんだろう……

 日は傾き、アリアの影もだんだんと大きくなる。


「サイレントさん、郵便です」

 こんな時に限って郵便が届くなんて、なんてタイミングが悪いんだ。

「ありがとうございます」

 タイミングが悪いから帰ってください……と追い返すこともできないので、お礼を言って郵便物を受け取って、さっさと帰ってもらった方が良いだろう。


「確認証にサインを……もらえないから、指紋で良いです」

 郵便配達のおじさんはボクが字を書けないのを知っているので、ため息をついた後、すぐにインクの入った瓶を差し出してきた。


 あれ?

 指紋が必要……ということは、重要な手紙なのだろうか?


「あ、はい」

 ボクは少しだけ指にインクを押し付け、確認証に指紋を押し、自分の服の袖で、インクをぬぐった。


「重要な書類です。確かに手渡しましたからね」

「あ、はい」


「師匠、その手紙って冒険者ギルドからデスよね?」

「あ、うん、そうみたいだね」

 この手紙には、冒険者ギルドのロゴが押印されている。

 きっと、アリアにもそのロゴが見えたのだろう。


「読まないんデスか?」

「うん」

 アリアが気を落としているのに、手紙なんか読めるわけないじゃないか。

 元々ボク、字なんか読めないしね。


「アリアに気を遣わなくてもいいデスよ。急ぎって書いてあるじゃないデスか」

「気を遣っているんじゃなくて、ボクは字が読めないから読まないんだよ。でも、急ぎって書いてあるなら、早く読まないといけないな……って、アリア、君、文字が読めるの?」

「もちろん読めますよ。がんばって覚えましたから」

 誇らしげに胸を張るアリア。


 きっと、冒険者ギルドの受付嬢をするために、がんばって覚えたのだろう。

 ん? 手紙を読む?

 そうだ!


忙しい人のまとめ話

アリア、サイレントとパーティーを作ろうとする。

サイレントあてに手紙が届く。

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