第48話 サイレント、フラットさんがどうやって追跡していたかを知る
これまでのあらすじ
サイレント、ティタン一族の特徴を知り、フラットさんが神殺しだと納得する。
アリア、フラットさんに、どうやって追跡していたかを聞く。
「それはー、サイレントさんが知っていますよー」
「え? ボクですか??」
全然、心当たりがないんですけど。
「師匠、フラットお姉さまに追跡されるような魔法をかけられていたデスか??」
「え? ボクは知らないよ。フラットさんに魔法なんかかけられていないもん」
「魔法じゃなくてー、私がサイレントさんに渡したものがあるじゃないですかー」
フラットさんから渡されたもの??
そんなものあったっけ??
「あ、もしかして、このダガーですか??」
ボクは手にしていたダガーをフラットさんに見せる。
「その通りですー」
フラットさんは拍手をしてくれた。
褒められると気分がいいな……じゃないよ!!
まさか、このダガーがボクの位置を教えていたなんて思わなかったよ!!
「師匠のダガーって、初心者用のダガーですよね??」
「それは違うよ。ボクのダガーは、フラットさんから金貨5千枚で買ったティタン製なんだから!!」
「そんなわけがないデス。ティタン製の武器はすべからく透明色のはずデス。師匠のダガーは初心者用のダガーの色デス」
「サイレントさんの言う通りでダガーはー、間違いなくティタン製ですよー」
「師匠を騙すのはやめるデス。フラットお姉さまと言えども、許せないデス」
「騙してなんかいませんよー。私はサイレントさんがー、勇者だと勘違いしていましたのでー、本物を用意しましたからー」
「本物ならどうして色が違うか説明してほしデス!!」
「それはですねー、サイレントさんのダガー全体にー、トレース魔法がかけられているんですよー」
「はっ!! そういうことデスか!!」
「どういうことアリア??」
ボクにはさっぱり分からないよ。
「師匠、トレース魔法をかけると、色が違って見えることを覚えていますか??」
「ああ、そんなこと言っていたっけ」
全然覚えてないけど。
「師匠のダガーは、『初心者用のダガーに見えるようにトレース魔法で色を調整した本物のダガー』だったんデス!!」
「なるほど、『初心者用のダガーに見えるようにトレース魔法で色を調整した本物のダガー』ってことか!!」
ちょっと何を言っているのか分からなかったボクは、アリアの言葉をオウム返しした。
「……ん?? ちょっと待って。ボクの記憶が確かなら、トレース魔法って、1日で魔力切れがおきるんじゃないの??」
「確かにそうデスね」
「それなら魔力切れを起こして、ボクを追いかけることはできないよね」
「デスが、まだトレース魔法は機能しているようデス」
「サイレントさんー、そのダガーは、高価なものだから肌身離さず持っていて下さいとー、お願いしていましたよねー??」
「そうですね」
金貨5千枚もしたのだから、お願いされなくても、肌身離さず持っていただろう。
「サイレントさんが肌身離さず持っていてくれたおかげで、ダガーが魔力を吸収して、トレース魔法が途切れなかったんですよー」
「なんだって!?」
「ああ、なるほど、ストーカーをしていたのはアリアちゃんじゃなくて、フラットだったのよ」
「アリアは堕天使がやっていたと思っていたデスがフラットお姉さまだったんデスね」
院長先生とアリアが納得しあう。
「ちょっとまってください。院長先生とアリアはボクがストーカーされていることに気づいていたんですか??」
「誰かが何かを使ってサイレントにトレース魔法を使っているのは気づいていたのよ。負のオーラが出ていたのよ」
「アリアも魔眼で誰かが師匠にトレース魔法を使っているのは気づいていたデス」
「どうして教えてくれなかったんですか??」
「アリアちゃんがサイレントにおいて行かれないように、トレース魔法を密かに使っていると思ったからなのよ。もし、私が指摘したら、アリアちゃんに嫌われちゃうじゃないのよ!! だから黙っていたのよ」
どんだけアリアが好きなんだよ、院長先生。
「トレース魔法は精巧にかけられていたので、アリアの眼でもダガーに魔法がかかっていると見抜けなかったデス。証拠もなしに堕天使を問い詰めても、しらを切られそうだったからデス」
確かに、もしも院長先生がボクにトレース魔法をかけていたなら、しらを切るだろうね。
「今、『確かに』……って思ったのよ、サイレント??」
「……思ってません」
ボクは院長先生の目を見ずにこたえた。
「絶対に思った人の言い方なのよ!!」
ホーリィを唱える院長先生。
「ボクは無罪です!!」
本当は有罪だけど。
「身近にサイレントさんをストーカーをしそうな方たちがいて本当に良かったですー。サイレントさんたちがー、人ジゴクと戦った時にバレてしまったのではないかと思っていましたからー」
「人ジゴクと戦った時だって??」
「はいー、あの時、人ジゴクのとどめをさしたのは私ですからー」
「そういえば人ジゴクを倒した時、『パンッ』と音がしたのってもしかして……」
「はいー、私の銃の音ですねー」
あの時、助けてくれたのは、フラットさんだったのか……
「助けていただき、ありがとうございました!!」
「何であなたを尾行していた相手にお礼をしているのよ、サイレント!!」
「助けてくれたんだから、お礼は言わないといけませんって。あの時はアリアが死にそうで大変だったんですから。お礼を言うだけじゃなく、何か贈り物をしたいくらいですよ」
「サイレントさんー、贈り物はいらないのでー、今から全力で私と戦っていただけませんかー??」
「絶対にイヤです!!」
ボクは脚に力を入れる。
「あなた、今までの話を聞いてまだ逃げようとしているのよ??」
「そうですよ」
ボクは大きくうなずいた。
「正気なのよ?? トレース魔法で追跡できるフラットからは絶対に逃げられないのよ!!」
「そんなことないです。ボクはフラットさんから逃げる方法を思いついたんですから」
忙しい人のためのまとめ話
サイレント、フラットさんがどうやって追跡していたかを知る。
サイレント、フラットさんから逃げようとする。