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第44話 サイレント、ラカンの罪を聞く

これまでのあらすじ

 サイレント、嘘発見調査官のおかげで、フラットさんがウソをついていることを知る。

 サイレント、ラカンがフラットさんに脅されていたことを知って、正直に言うように促す。

「分かった、俺様の口から言う。…………実は、初めてスクロールをもらったあの日、冗談のつもりで、俺のスクロールとサイレントのスクロールをバレないように、こっそり交換していたんだ。すまなかった、サイレント」


「「「「「「何だって!? 何でそんなことをしたんだ??」」」」」」

 貴族たちは口をそろえて驚く。


「ちょっとしたいたずら心だったんだ。俺様は上級職だろうし、サイレントは下級職だと思い込んでいたから、サイレントが俺様のスクロールを見て、上級職だと驚いた瞬間、『実は、そのスクロール、俺様のだぜ』って種明かししようと思っていたんだ。スクロールには名前が出てこないから、すり替えてもバレないだろうと思ってな」


「ところがー、サイレントさんがスクロールを開けてみるとー、なんとびっくりー。適性職業は『バカシン……もとい、アサシン』だったんですよねー」


「ああ、それで、本当のことが言えなくなっちまったんだ」

「ですがー、ラカンさんがサイレントさんのスクロールを取り換えた瞬間をー、私に見られていたんですー」


「誰にも見られていないつもりだったんだけどな……」

「それでー、ラカンさんはー、自分の本当の職業が『バカシン……もとい、アサシン』だと、みんなにバレたくなくてー、私に従わざるを得なかったんですよねー、ラカンさん」


 にっこりと笑いながらラカンに話しかけるフラットさん。


「つ、つ、つまり、実際は、サイレントさんの適性職業が『勇者』で、ラカンさんの適性職業が『バカシン……もといアサシン』だったってことでしょうか、アイズさん?」


「そういうことね。スクロールには名前は出ないから。あ、だから、ラカンは、レベルは関係ないとか言って、スクロールを見ようとすらしなかったのは、適性職業が『バカシン……もといアサシン』だとバレないようにするためってこと??」


 アイズはラカンに確認をとる。


「……そういうことだぜ」


 ラカンはうつむく。


「道理で、こちらから魔王を倒して欲しいとお願いしても、まだ魔王を倒すレベルに達していないからとお断りされるわけだ。そもそも、スクロールを見ていないんだからな」「本当の適性職業は『バカシン……もといアサシン』だったくせに、自ら勇者だとを偽るなど、恥を知れ、恥を!!」「勇者サイレント様に謝れ!! 土下座しろ!!」


 会場の貴族たちは、急に手のひらをかえてラカンを糾弾する声でいっぱいになった。


 いやいや、あなたたち、ついさっきまでラカンの味方だったよね?


「うう、本当に、すまなかった、サイレント」

 ラカンは涙声で土下座をしてくる。


「ラカン、顔をあげて」

「怒ってないのか? 俺様はサイレントがスクロールを使わないことを良いことに、何年もお前を欺いていたんだぞ」


「ボクは全然怒ってないよ」

 そう、僕はこの程度のことで全然怒らない。

 ……というより、怒れない。


「本物の勇者様は、何と心の広いこと」「さすがはサイレント様、この方こそ、本物の勇者様ざます」「サイレント様万歳!!」


「ありがとう、サイレント!!」

 お礼を言いながら、ラカンはボクに抱き着いて来た。


「気にしないで。まさか、ラカンもスクロールを交換しているなんて思いもしなかったよ」

「「「「「「え?」」」」」


 ボクの一言で会場が一瞬で凍り付く。


 あれれー、おかしいぞー。

 ボク、何かやっちゃったかな?


「『も』? サイレント、今、お前、『ラカンも』って言ったか?」

 あ、まずった。


「あはは、えーと、ボク、『ラカンも』なんて言ったかな?」

「おい、まさかとは思うが、お前もいたずらで交換をしていたのか? 俺のスクロールを」


「あはは……」

 ボクはラカンに視線を合わせずに乾いた笑いで返答する。


「笑ってごまかしきれねーぞ、サイレント」

「実は……そうなんです。ごめんなさい。本当はこの秘密は墓場まで持っていくつもりでした」

 今度はボクが土下座する番だった。


「なんてこった!! 俺様がずっと悩んでいたってのに……」

「ボクだって、悩んでいたよ!!」


「でも不思議なのよ。もう一度スクロールを使えば、お互い、気づきそうなものなのよ。ラカンもサイレントも使ってなかったのよ??」


「俺様は、もしもスクロールを使って、適正職業が『バカシン……もといアサシン』だと誰かに見られたら大変だと思い、使っていなかったんだ」


「ボクも同じですよ。そもそも、ボクは字が読めませんし、いくらレベルが上がったって、適正職業が『バカシン……もといアサシン』だとバカにされるから、スクロールは捨てました」


「字が読めなくても、スクロールを交換したんだから、『バカシン……もといアサシン』はラカンの適性職業は『勇者』のはずなのよ。ラカンのスクロールと交換したって正直に言えば、笑われずにすんだじゃないのよ」


「あ、そっか!! 笑われたことばかりに気を取られて、気づかなかった!!」

 本当にボクのバカ!!


「結局のところ、サイレントもラカンもお互いがお互いのスクロールを交換していたわけだから、サイレントが『バカシン……もといアサシン』で、ラカンが『勇者』だったわけなのよ」


「なんだ、やっぱりサイレントが『バカシン……もといアサシン』じゃないか!!」「ふざけるな」「サイレントはやっぱり勇者なんかじゃないんだよ」


 貴族たちの怒号が飛び交う。


 あれれ、おかしいな……

 今まで貴族のみんなは、ボクの味方だったよね??


「つまりは最初からー、ラカンさんは『勇者』で、サイレントさんは『バカシン……もといアサシン』だったなんてー、なんとも滑稽な話ですー」


 パンパンパンと音がしたかと思ったら、ラカンとアイズとブリジットはばたりと倒れた。

 音の方を見るとそこには拳銃を構えたフラットさん。


「何をしたんですか?? フラットさん??」

「撃ったんですよー、ラカンさんたちをー」

忙しい人のためのまとめ話

 サイレント、ラカンの罪を聞いて、ラカンを許す。

 サイレント、自分も同じことをしていたと暴露する。

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