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第40話 サイレント、ラカンに命令される

これまでのあらすじ

 ナ・リキン、サイレントと娘を結婚させて利益を得ようと目論む。

 困ったサイレントだったが、ラカンが乱入してくる。


「その通りだ」

 ラカンはシニカルに笑って見せた。


「アーノム・ギトーゲ城へは招待状がないと入れないはずだよね?? まさか、無断で入ってきたの??」

「招待状は持っているぜ」


 そう言いながら封筒を見せてくるラカン。

 確かに、本物のようだ。


「誰がラカンを呼んだのさ??」

「あー、ラカンさんー。やっぱり来てくださったんですねー」


「もしかして……」

「はいー、私がお呼びしましたー」


「何で??」

 どうして、ボクを勇者パーティーから追い出した張本人を呼ぶのさ、フラットさん。


「せっかくのパーティーですしー、サイレントさんに関わった人はできる限り全員をお呼びした方がよいかと思いましてー」

「全員来ているの??」


「残念ながら、招待してから招集するまでの期間が短かったのでー、お断りされた方もいますよー」

 ラカンも断れば良かったのに。


「忙しい中来てやったんだぜ!! 嬉しいだろう?? サイレント」

「嬉しくないよ!!」


「おいおい、お前がそこのナ・リキンの娘との結婚を嫌がっているようだから、阻止してやったのに、ずいぶんな言い方じゃないか!!」

「恩着せがましく言っているけど、どうせ君も何か目的があってここに来たんでしょ?? ……まさか、君も貴族と同様に、娘がいて、その娘とボクを婚約させたいの??」


「バーカ。俺様は独身で未婚で子どもも養子もいねえよ。もっと考えて話せよ、サイレント!!」


 そうだった。

 ラカンに子どもはいなかった。


「そうだよね、君は未婚だもんね……はっ、まさか、君自身がボクと結婚をしたいと言い出すんじゃ……」

「バーカ、違うよ。俺様は男だぞ。この国の法律で、同性婚はできねーってさっき、ナ・リキンのおっさんが言っていただろ!!」


「結婚じゃないなら、ラカンはカバッカ町からわざわざ祝福しに来てくれたってことなのかな??」

「俺様がお前を祝福?? するわけねーだろ」


 そうですよね。

 ラカンはボクを追放したのに、わざわざ祝福なんかしにこないよね。


「それなら、何をしに来たの??」

「俺様は魔王を降参させたサイレントを俺様の勇者パーティーに入れてやろうと思ってわざわざアーノム・ギトーゲまで来たんだ」


 ラカンはボクにではなく、貴族たちに話しかける。


「ボクをパーティーに??」


「その通りだ! せっかく魔王に認められても、お前のパーティーじゃ人間界で認められるには時間がかかるだろう?? 人気者の俺様のパーティーに入れば、すぐに人間界でも認められるだろうぜ!!」


「そんなことないよ。ボクの今のパーティーだってすぐにでも認められるさ……」

 ボクはパーティーメンバーを思い返す。


 魔王の娘アリアと堕天使の院長先生と冒険者ギルドの受付嬢のフラットさん。

 うん、すぐには認められないね。


「……いや、すぐには無理かもしれないけれども、時間をかければなんとか認められるよ」

 ボクはすぐさま訂正をする。


「ごちゃごちゃうるせぇな。御託はいいんだよ、サイレント。俺様たちのパーティーに入れてやるって言ってんだ! お前は今のパーティーを抜けて、俺様のパーティに入ればいいんだ!!  そうすれば、お前は人間界でも認められるの!! そうだろ、みんな??」


「「「「「うぉーーーーーーーーっ!! ラカン様、ラカン様、ラカン様!!」」」

 拍手とともにラカンの名前を大声で連呼するナ・リキン以外の貴族たち。


 ラカンはニヒルに笑うと、オーケストラの指揮者のように手だけで歓声を止めた。


「さあ、みんなの前で俺様のパーティーに入ると宣言しろ!!」

「ボクは……ボクは……」


 ここにいる貴族たちはボクの返答を固唾を飲んで見守っている。


 ここで、ボクがうなずけば、すぐにでも人間界でも認められて、神様に近づけるだろう。

 ここは『はい』以外の選択肢はなさそうだ。


「ボクは、君のパーティーに入らない!」

「そうだよな、そりゃあ、入るよな、俺様のパーティに。お前が俺様の命令に逆らえるわけないもんな……あん?? 今、何て言ったサイレント??」


 ラカンは青筋をたてながらボクに問いただす。


「イヤだって言ったの!! ボクは今、他のパーティーにいるんだから!!」


「あいつ、勇者ラカンの誘いを断ったぞ」「魔王を倒したからって調子に乗っているんじゃないだろうな」「ラカンのパーティーに入らないんなら、お前なんか認めないぞ!!」


「ほお、俺様の命令を断るとは、分かっているんだろうな、サイレント!!」

 バキバキと手の骨を鳴らすラカン。


「えっと、戦うのは無しにできませんかね??」

「愚問だな、サイレント。今ここで魔王を倒したお前を倒せば、俺様も認められたことになった上に人間にも認められるだろうが!!」


「ん? ボクを倒しても魔王には認められないんじゃない??」

「そんなことねぇんだよ!! お前を倒せば、魔王も俺様を認めざるを得なくなるに決まっているだろ!! みんなもそう思うだろ!!」


「「「「「うぉーーーーーーーーっ!!」」」」」

「ほら、貴族たちも俺様に賛成しているんだ!!」


「いや、貴族たちがいくら賛成していたって、魔王が納得しなければ認められないんじゃないかな……」


「御託はいらねえんだよ、サイレント!! 俺様の力を見せてやる!!」

 ラカンは鞘から大剣を抜くと構えた。


「「「「「ラカン、ラカン、ラカン!!」」」」」


 貴族たちは歓声をあげながら、ボクとラカンの戦いに巻き込まれないようにとボクから離れていく。


 みんな、待って。

 ボクを一人にしないで。

 ボクが一人になった瞬間、ラカンは攻撃をしてくるに決まっているんだから。


 なんで貴族たちは離れてほしいときに離れなくて、離れてほしくない時に離れていくんだろう……

 人生思い通りに行かないものだ……なんて思っている場合じゃない。


 はやく逃げないと!!

 ボクはとっさにラカンに背を向けた。


「おい、逃げるのか、サイレント!! 戦え!! この卑怯者め!!」


 ボクがラカンに勝てるわけがない。

 卑怯者とののしられようと、ここは逃げるが勝ちだ。

 ボクが瞬動で逃げようとした瞬間、段差につまずいて転んでしまった。


「サイレントのやつ、転んでいるぞ!!」「本当に魔王を降参させたのか??」「あんなにへっぴり腰なら、俺のほうが強いぜ!!」


 関係ないと思って、みんな好き放題なことを言い始める。


「俺様に恐れをなして逃げるのは仕方がないが、転ぶとは運のない奴だ」

 そう言いながら、ボクとの間合いを詰めてくるラカン。


 しまった。

 このままだと、ラカンに殺されてしまう。


忙しい人のためのまとめ話

 サイレント、ラカンにパーティーに戻ってくるように命令される。

 サイレント、断ったので、ラカンと戦うことになる。

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