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第39話 サイレント、ナ・リキンの娘と結婚させられる

これまでのあらすじ

 サイレント、アーノム・ギトーゲの人々に祝福される。

 サイレント、カナエルがいたので逃げようとするが、貴族に取り囲まれて逃げられない。

 あ、そうだ。

 空動で空中から逃げればいいんだ。


 さすが、ボク!!

 なんて頭がいいんだろう。


 天井に頭をぶつけないように力を調整して……と。

 ボクが空動で宙に浮かぶと、天使長カナエルは自らの羽根を広げボクの肩をぐいとつかんだ。


「捕まえたっす」


 しまった。

 空中は天使の方が速いじゃないか……


 何で空中なら逃げきれると思ったんだ、ボクは。

 ボクのバカ。


「放してよ!!」


「ちょっとでいいから、話を聞くっす」

「いやだ、人間界との協定を破棄してボクを殺しに来た話なんてききたくない!!」

 ボクは天井で駄々をこねた。


「天界は人間に全面協力することを決めたっす」

 ボクだけに聞こえるように小声で話すカナエル。


「え? なんで??」

「天界に人間界の騎士団長がやってきて、魔王に天界のバリアが壊されていることをバラすと脅しをかけてきたっす」


 酷いな、騎士団長。

 天使を脅すなんて見損なったよ。


「それで、その脅しに天使たちは屈服したってことでいいの??」


「そうっす。もしも、天使が人間の不利益なことをすれば、バリアがないことを魔界にバラして、天界を魔族に占領されられてしまうっす!! だから、サイレント様には、逃げないで欲しいっす」


「えっと、つまりそれって、ボクが逃げたら、バリアのことを魔族にバラされるってこと??」


「当然っす!! サイレント様の命を狙っていないのに、狙ったなんて誤解されたら、天界が魔族に占領されてしまうっす!!」


 騎士団長、ありがとう。

 天使を脅してくれて。

 ボクの命が助かった。


「なるほど。だから、必死にボクが逃げさせないようにしているってことだね??」

「そういうことっす。天界の長として、出たくもない人間のパーティーに参加しているっす」


 協定を破っていないことを証明するためにわざわざ来たのだろう。

 天使も大変だ。

 お疲れ様です。


「ちょっと、カナエル、あなたこんなところで何をしているのよ?? まさか、あなた、サイレントの命をとろうとしているに違いないのよ」


 あ、院長先生も同じことを考えているみたいだ。


「違うっす!! そんなことできないっす!! 放すっす!!」


 院長先生に羽交い絞めにされるカナエル。

 そっとしておこう。


 なぜなら、言葉とは裏腹にカナエルの表情が幸せそうだから。

 ボクは空動をやめて床に降りる。


「先ほどは天使と内緒話をしていたようですが、どんなお話をしていたか、私にも教えてほしいですぞ、サイレント殿」

「それは秘密です」


 あれ?

 この話しかけた貴族の顔、どこかで見た顔だと思ったんだけど、どこで見たんだったっけ??


 あ、この顔、忘れもしない、ナ・リキンだ。

 なんで平然とパーティーに参加しているのさ。


 麦の値段をあげて農民を苦しめたんだから、牢屋にいるんじゃないの??


「わかりましたぞ。深くは聞かないので、ぜひ、わが娘と結婚をしていただきたいんですぞ」


「わが娘って、ナ・リキンに娘がいるの??」

「もちろんですぞ!! わが娘は、私の性格そっくりの性格で、いかに人々から理不尽にお金を搾り取れるかを考えているんですぞ」


「いやです」

 最悪な性格じゃないか!!


「そんなこと言わずに、娘と結婚した方がいいですぞ!!」

「ちょっと待つデス!! 師匠はアリアと結婚するんデス!!」


「あ、そうそう、ボクには婚約者がいたんだった!! 本当に残念だ、君の娘さんと結婚できなくて」


 ボクに婚約者がいると知れば、ナ・リキンは、娘とボクとの婚約を諦めるに違いない。


「なんと、サイレント殿にはすでに婚約者がいたんだぞ??」

「そうデス!!」


 アリアがうなずくと同時に、たくさんの落胆する声。

 ……って、ちょっと待って。

 他の貴族の方々とは結婚してもいいんだよ。


 性格がそっくりだというナ・リキンの娘と結婚したくないだけで。


「違うのよ、アリアちゃんはサイレントじゃなくて、私と結婚するのよ!!」

 カナエルを羽交い絞めにしながらも、アリアに向かって愛を叫ぶ院長先生。


「違いますー、インフィニティはー、アリアちゃんとじゃなくてー、私と結婚するんですー」

 頬を膨らませて訂正するフラットさん。


「違うデス、フラットお姉さまは、アリアと結婚するんデス」


「つまり、このアリアという娘は、サイレント殿とフラット殿と結婚するということだぞ??」「つまり、サイレント様は重婚を認めてらっしゃるということですかな??」「つまり、アリア殿は第1夫人で、第2夫人として私の娘とも結婚することも可能だということに違いない」


「ちょっと待つのよ!! この国では同性婚も重婚も禁止なのよ!!」

 さすが、院長先生!!


「大丈夫ですぞ!! このナ・リキン、職権を濫用し、同性婚も重婚も認める法律を作ることを誓いますぞ!! そうすれば、わが娘はサイレント殿と結婚できますぞ!!」


 職権濫用宣言をし、ギラギラと目を輝かせるナ・リキン。


「同性婚と重婚を認めるのは、とても良い考えなのよ!!」


 よだれを垂らしながら、目を輝かせる院長先生。

 院長先生も重婚賛成派か!!


「たとえ、法律を変えたところで、ボクとナ・リキンの娘が結婚するとは限らないよね??」

「大丈夫ですぞ、職権を濫用して、サイレント殿はわが娘との結婚をするという法律も作りますぞ!!」


「横暴!! なんで、ボクの結婚相手まで法律で決めるのさ!!」

「サイレント殿が、わが娘を結婚しないからですぞ!! 娘と結婚すれば、こんな法律作りませんぞ!!」


 いや、暴論だよね、それ。


「そんな法律を作らなくて良いデス!! アリアは師匠としか結婚しないんデス!!」


「いいのですかぞ?? サイレント殿ともフラットさんとも結婚するチャンスですぞ??」

「それは…………」


「すぐに返事ができないということは、心が揺れているということですぞ!!」

「……アリア、ちょっと、お花を摘んでくるデス!!」


 すぐに返事ができなかったことを恥じたのだろうか??

 アリアはどこかへと行ってしまった。


「私も一緒に行くのよ、アリアちゃん!!」

 アリアについていく院長先生。


「さあ、サイレント殿、重婚と同性婚を法律で変更しますので、是非とも、わが娘と結婚を。わが娘と結婚すれば、職権濫用して、すぐにでも人間界で認められる存在にしてあげますぞ。人間界で認められれば、神様にも、すぐになれますぞ!!」


 分かったぞ、ナ・リキンの魂胆が。

 ボクと娘を結婚させてコネを作っておいて、ボクを神様にしたら、ナ・リキンの利益になるよう働きかけるつもりか。


 さて、どうやって断るか??

 アリアも院長先生も助けてくれそうにないし……


 ボクはフラットさんの方を見るがフラットさんはこちらの方を見ていない。

 困ったな。


「ちょっと、待ちな、ナ・リキン!!」


 ボクが困っていると、大きな声が城内に響き渡った。

 その声で貴族たちは全員が後ろを振り返る。


 おお、ボクを助けてくれる救世主の到来か??

 ……って、ちょっと待って。


 この声は……

「ラカン??」

忙しい人のためのまとめ話

 ナ・リキン、サイレントと娘を結婚させて利益を得ようと目論む。

 困ったサイレントだったが、ラカンが乱入してくる。

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