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第37話 サイレント、アリアと院長先生とサバイバルをする

これまでのあらすじ

 アーノム・ギトーゲに帰ったサイレント、門番に捕まったので逃げる。

 サイレント、魔界に行くが、魔界でも門前払いされたので、どうするか考える。

「それならー、私がー、一人でアーノム・ギトーゲに戻ってー、冒険者ギルドとサイレントさんが魔王を倒したことを冒険者ギルドとお姫様に報告するというのはどうですかー?」


「なるほど、冒険者ギルドとお姫様に信頼のあるフラットさんが報告をすれば、魔王を倒したことを信じてもらえるってわけですね??」


「そういうことですー」

「お願いできますか、フラットさん」


「任せてくださいー。サイレントさんが魔王を倒したという噂が広まったころ、また落ち合いましょう」

「分かりました。よろしくお願いいたします」

 ボクは深々と頭を下げた。


「報告はフラットに任せるとして、噂が広がるまでどうするのよ??」

「それまではサバイバル生活をするしかなさそうですね」


「サバイバル生活なのよ?? 今ここにフラットがいなくて本当に良かったのよ」

「確かに。フラットさんに料理を任せたら、包丁が飛んできますからね。別の意味でサバイバルしないといけないところでした」


「師匠、フラットお姉さまのいないところで陰口をしていないで、日が暮れる前に食料を集めるデス!!」


 さすが、アリア。

 真面目だ。


「うん、そうだね」

 ボクたちは魔物の棲む樹海でサバイバルを始めた。


 …………

 ……


「院長先生、ボク達、サバイバルが板についてきましたね!!」

「板についてきましたね……じゃないのよ!! 魔王に認められたことを報告すればいいだけなのに、何でフラットからの連絡が来ないのよ!!」


「少し遅いかもしれないですけど、もうそろそろ来ますよ、フラットさん」

「そう言い続けてもう7日も経つのよ。絶対におかしいのよ」


「あの……師匠、フラットお姉さまと落ち合う場所って決めていたデスか??」

「もちろん」


 ボクはコクリとうなずく。

 しまった、落ち合う場所なんか決めていなかった。

 どうしよう。


「サイレントさんー」

 ボクが悩んでいると、甘ったるい声を出しながら手を振ってくるフラットさん。


「フラットさん!!」

 良かった。

 フラットさんに会えた。


「時間がかかったみたいですが、どうしたんですか?? まさか病気やケガをしたとか??」

「いえいえー、病気もケガはしていませんよー」


「もしかして、落ち合うところを決めていなかったからですか??」

 ボクはアリアと院長先生に聞こえない声で尋ねる。


「いえいえー、ここに来るのには2時間もかかっていないですからー」


「それならどうして??」

「すみませんー。私の報告でもー、魔王に認められた人間がいるなんてことー、なかなか信じてもらえなかったのでー、少し時間がかかってしまいましたー」


 それはそうだろう。

 いくら信頼のあるフラットさんでも、下手をしたら嘘つき呼ばわりしかねない


 ウソ発見調査官が出て来ただろうし、上を下への大騒ぎだったろう。


「すみません、ご苦労かけました」

 ボクは頭を下げる。


「いえいえー、そんなことないですよー」

「苦労をしていないってことは、もしかして、サイレントの噂も広まっていないってことなのよ??」


「そういうことじゃないですよー。きちんとー、サイレントさんが魔王に認められた噂は広まっていますよー」


「それなら、サイレントの手配書がまだ有効とかなのよ??」

「サイレントさんの手配書はー、取り下げさせましたよ」


「本当にありがとうございます、フラットさん!!」


 やった! これで堂々とアーノム・ギトーゲに帰ることができるぞ。


「いえいえー、どうってことはないですー」

「さすが、お姉さまデス!! ところで、お姉さまの手にしているものは何デスか??」


 あ、ボクも気になった。


「あ、そうだー、これはー、サイレントさんたちに渡さなければいけないんでしたー」


 フラットさんは、ボクたちに封筒を差し出してきた。

 封筒には赤いお城の絵のシーリングスタンプが押されている。


「これは……督促状ですか?? それとも果たし状?? いや、もしかしたら、パーティー追放のお知らせか??」

 字が読めないボクは思いつく限りの可能性をあげていく。


「お姫様からでー、サイレントさんが魔王に認められたことを祝して、アーノム・ギトーゲのお城で行われる、パーティーの招待状ですねー」

「パーティーの招待状……」


 なんだ、招待状か。

 ……って、招待状??


 王様に指名手配されていたこのボクが??

 お城からの招待状??


 これは夢なのだろうか……

 ボクは自分で自分のほっぺをつねった。


 痛い。

 夢ではなさそうだ。


「参加しないほうが良いデス、師匠!!」

「え? どうして?? お城でお祝いしてくれるんだよね??」


 ボクはアリアに尋ねた。


「それは……言えないデスが、参加しない方がいいデス」

「言えない?? 何で??」


 ボクは首をかしげる。


「師匠は神様候補なわけデスから、きっと、引く手あまたのモテモテになるからデス」

「アリア、聞こえないんだけど! もっと大きな声で言ってよね」


 ボクはアサシンで耳は良いけど、そんな風にもじもじ話されたらまったく聞こえないんだからね。


「もし心配ならー、アリアさんも一緒に参加すればいいんですよー」

「いいんデスか?? アリア、魔族デスよ?? 魔族だと人間たちに知られれば、どうなるか分からないデス」


「アリアさんがー、魔族だということは、言わなければー、大丈夫ですー」

「デスが、師匠がモテてしまったら……」


「モテるということはー、人間達がー、サイレントさんを認めるという行為に等しいですー。もしかすると、一気に神様になれるかもしれないですよー」

「師匠が神様に……やっぱり、パーティーには参加したほうが良いデス、師匠!!」


「うん、うん、そうだよね」

「ちょっと待つのよ! 行かない方がいいのよ、サイレント」


「どうしてですか??」

「あのお姫様の招待なら、絶対に何か企みがあるはずなのよ。行かない方が賢明なのよ」


「企みですか??」

「企みなんかないですよー」


「お姫様が何か企んでいるかどうか、何であなたがわかるのよ??」

 そういいながらフラットさんをにらみつける院長先生。


「もしも心配ならー、インフィニティも一緒に来ればいいんですよー」

「何で私が参加しないといけないのよ」


「豪華な食事が食べられますよー。それにー、パーティーでサイレントさんがモテモテになっているところをアリアさんが見ればー、結婚は諦めるかもしれませんねー」


「え? なんて言ったんですか?? フラットさん」

 院長先生の耳元でとても小さな声でささやくから聞こえないんですけど。


「何でもないですよー」

 ふふふと笑うフラットさん。


「参加した方がいいのよ、サイレント!!」

「アリアにも院長先生にも勧められたなら仕方ないですよね。行かないと!! 参加する気はなかったんだけどな」


「参加する気がないなら、うれしそうな顔をするんじゃないのよ!!」

「え? そんな顔してます??」


「してるのよ」「しているデス」「していますねー」


 仕方ないじゃないか。

 このボクがお城のパーティに主賓で呼ばれるなんてこと、一生に一度あるかないかのことなんだから。


「そんなことないですよ。それよりも、はやく行きましょう!!」

 ボクはみんなとアーノム・ギトーゲ城へと向かった。


「そうですねー、はやく行きましょうかー」

「あー、念のために、アリアちゃんが魔族なのと、インフィニティが堕天使なのは内緒にしておきましょうー。アーノム・ギトーゲには、魔族や堕天使に偏見をもった方もいらっしゃいますからー」


「分かりました」

 ボクたちはアーノム・ギトーゲへ移動を始めた。


忙しい人のためのまとめ話

 魔王に認められたこと噂を広めてもらったサイレント、指名手配されなくなる。

 サイレント、お城の祝賀会に参加するためにアーノム・ギトーゲに戻る。

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