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第36話 サイレント、アーノム・ギトーゲに帰る!?

これまでのあらすじ

 サイレント、アリアパパに婚約破棄を言い出せない。

 サイレント、魔王を認めさせたのでアーノム・ギトーゲに帰ろうとする。

 ふぅ、結構走ったな。

 お、やっと門が見えてきたぞ。


「どいて、どいて!! 英雄のお通りだよ!! 道を開けて!!」

 ボクが大声で叫ぶと、何事かと門に並んでいた兵士たちはこちらを見てくる。


「おい、あれ、すごい速さで近づいているの、サイレントじゃないか??」「そうだ、サイレントだ!!」「みんなで取り囲め!!」


 取り囲めって、ボク人気者だな。

 まあ、魔王を降参させたんだから、当然だよね。


 人気者はつらいぜ。


「ごめんね、ボクはお城に行かなければならないんだ!! サインはまたあとでね!!」


 取り囲まれた人々に、ボクは手を振ると、誰かに手首をがっしりと握られた。


「捕まえた!!」

 声のする方を見やると、そこには門番がいた。


「アーノム・ギトーゲの門番さん、もしかして、お城まで案内してくれるんですか??」

「もちろんさ。さあ、行きましょう!!」


 アーノム・ギトーゲの門番はニッコリと笑いながら答えてくれた。

 そりゃあ魔王を倒した功労者はすぐに案内してくれるよね。


 ……って、ボクの手首を握る手の力が尋常じゃないほどに強いんですけど。


「ちょっと門番さん、手の力が強いんでもう少し弱く握ってくれませんか??」

「それはできないね」


「どうしてですか??」

「懸賞金を逃がすわけにはいかないだろ??」


 ん? 懸賞金??


「おい、ずるいぞ!!」「みんなで取り囲んだんだから、私にも懸賞金の一部を寄越しなさいよ」「そうだ、そうだ!!」


「うるさいな! こういうのは掴まえた者勝ちなんだよ!! 懸賞金は俺のものだ!!」

 門番は威圧的に並んでいた人たちに言い放った。


「「「「ぶーぶー」」」」

 ブーイングの嵐だ。


「いや、ちょっと待ってよ、みんな。ボク、魔王を降参させて認められたんだよ?? ここは、勇者の凱旋をたたえるところじゃないの??」


「「「「はぁ?? お尋ね者のお前が魔王を降参させて認めさせた?? そんなわけないだろ、はっはっはっ!!」」」」


 信じられていない!!


「いや、本当なんだって!!」


「それなら証拠は??」

「証拠??」


「魔王がサイレントを認めた証だよ。魔王の首でも、証文でも、手形でも、なんでもいいからあるだろ??」

「それは……ないよ」


「ないなら、話が本当かどうかなんてわからないだろ」

「それは……そうだね。でも、ボク本当に魔王を認めさせたんだけど」


「そうか、そうか。分かったよサイレント」

 手の平を返したかのようにうなずいてくれる門番。


「信じてくれるの??」

「ああ、もちろんだ!! 詳しく話をきくにしてもここじゃなんだから、王城まで来てもらおうか」


「分かったよ」

 ボクがうなずくと、門番はボクの手首に縄をかけてきた。


「……って、ボクをお城の人たちに引き渡そうとしているだけだよね??」

「ちっ、勘のいい賞金首は嫌いだよ!!」


 ボクの手首をさらに強く握り、手首を縄でぐるぐる巻きにしようとする門番。

 ボクを逃がさない気だ!!


 こうなったら……


「えいっ」

 ボクは頭突きをかます。


「ぐはっ」

 門番がひるんだすきをついて、門番の手から逃れた。


「門番に頭突きをして罪を重ねるとはいい度胸だ、サイレント!! 絶対に逃がさないぞ!!」

 ボクを捕まえようとする門番。


「「「「みんな捕まえろ!! 懸賞金は山分けだ!!」」」」

 そして、ボクを捕まえようとする門に並んでいた人々。


「捕まるわけにはいかないんだ!!」

 ボクは取り囲まれる前に、大きくジャンプをしたあと、空動で上空へと逃げた。


「賞金首は、空を飛んだぞ!!」

「飛空艇を使ってサイレントを追いかけろ!!」


 飛空艇だって??

 あんなのに追いかけられたら、今度こそ捕まっちゃうよ!!


 はやく逃げないと。

 ボクは空動で逃げ続けた。


「院長先生、助けてください!!」

 飛空艇が出てくる前に兵士たちから逃げることができたボクは院長先生に助けを求める。


「やっぱり追いかけられているのよ」

「どうしてこうなったんですか??」


「あなた、指名手配されているのよ!! 帰ったら捕まえられるに決まっているのよ!!」

「こうなることが分かっていたなら、先に教えてくださいよ!!」


「教えようとしたら、文字通り、あなたが『先走った』のよ、サイレント」

「おっしゃるとおりです」

 うん、ボクが院長先生の話を聞いていないのが原因だね。


「反省しているならいいのよ」

「はぁ、魔王に認められたのに帰れないなんて、これからどうすればいいんだ??」


「師匠、こうなったら、魔界へ行き……いえ、帰るデス!!」

「帰るって、ボクの故郷は魔界ではないよ、アリア」


「魔王を降参させて、魔王に認められたんデスから、魔界が第二の故郷と言っても過言ではないデス」

「そうだね、アリア」


 そうだよ、ボクは魔王を倒したんだ。

 アリアの言う通り、魔界が故郷だと言っても過言じゃないよ。


「この道をまっすぐに進んでいけば、魔界へ続く門に行けるはずデス!! さあ、行くデス、魔界の彼方へ!!」

「そうだね。先に行っていますので、院長先生たちはあとから来てください!!」

 ボクはそう言い残すと全力で魔界へと走りだす。


「ちょっと待つのよ、サイレント!!」

「待てません!!」


 ボクが一直線に走ると、黒い門らしきものがあった。

 きっと、あそこが魔界への門に違いない。


 ボクは全力でその門を潜り抜けようと、さらに加速する。

 門に近づくと、そこには、よだれをだらだらとたらしながら、こちらをにらみつけてくる犬がいた。


 突然変異の犬なのだろうか、胴体は一つだが、犬の頭は何個かある。

「わんわん!!」


 犬はボクに向かって吠えて威嚇をしてきた。

 でも大丈夫、なぜならボクは魔界最強の魔王を降参させたんだから。


「ボクの名前はサイレント!! 魔王を降参させた人間だ!!」

「わんわん!!」


 頭が何個かある犬はボクに向かって吠えながら炎を吐いてきた。

 ……って、炎だって??

 ボクは犬から全速力で逃げる。


「アリア、どうなっているの??」

「どうしてデスかね??」


「さっき魔王を降参させたばかりなのよ。サイレントが魔王を降参させたなんてこと、知らない魔物のほうが多いのよ。今、魔界に行けば、絶対に襲われるのは当然なのよ」

 確かにその通りだ。


「それなら、どこへ行けばいいというんだ」


 魔界もダメ、人間界もダメ……

 ……ということは……


「天界だ!!」


「あなたが天界なんて行ったら、神様のバリアを壊した罪で、天使から袋叩きなのよ!!」

「そうですよね」


 うん、知ってました。


「どうすればいいか、分かったデス!!」

「どうするのさ、アリア??」


「パパにお願いして、魔界の魔王城に一緒に行けばいいデス」

「なるほど!! その手があったか」

 ボクはポンと手をうった。


「つまり、サイレントはアリアちゃんのお家に婿入りをするということなのよ??」

「そういうことになりますね」


 人間界で逃亡生活をするくらいなら、魔界で婿入りして、安全を確保した方が、まだましというものだ。


「もしも、婿入りしたと人間界に知られれば、絶対に人間界に帰ってこれないのよ。それに魔界では、人間族を恨んでいる魔物も多いから、生きた心地がしないかもしれないのよ。それでも良ければ、婿入りすると良いのよ」


「うん、アリア、魔界へ挨拶に行くのはとりあえず保留にしようか」

 魔界で肩身の狭い思いをするのは絶対に嫌だ。


「そうデスか……良い考えだと思ったのデスが……」

「きっともっと良い案があるはずだよ」

 今は、まったく思い浮かばないけれども。


忙しい人のためのまとめ話

 アーノム・ギトーゲに帰ったサイレント、門番に捕まったので逃げる。

 サイレント、魔界に行くが、魔界でも門前払いされたので、どうするか考える。

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