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第35話 サイレント、魔王を認めさせたのでアーノム・ギトーゲに帰ろうとする

これまでのあらすじ

 サイレント、アリアが反抗期でパパに逆らったことを知る。

 サイレント、アリアパパは良いパパだとアリアに諭す。

「とぼけちゃいけないでござる」

 アリアパパはこちらに真剣な顔を向けてきた。


「えっと……」

 ボクは何をすればいいのだろうか??


「拙者を降参させる強さがあるなら、拙者はサイレント殿を認めるでござる」

「え? あ、ありがとうございます」


「サイレント殿の強さならば、アリアたんの婿としても申し分ないでござる。アリアたんをよろしく頼むでござる」

「え? あ、はい」


「ちょっと、何、さらっと、魔王に認められた上に、結婚の承諾までしているのよ、サイレント!! これだと、サイレントとアリアちゃん、結婚をすることになるのよ」

「しまった!! えっと、アリアとの結婚の話は……」


「まさか、サイレント殿が自分から言い出した婚約なのに、まさか、アリアたんに恥をかかせるなんてことをさせないでござるな??」


 ものすごく怖い形相でボクのことをにらみつけてくるアリアパパ。


「ダークドラゴンと契約したのに、それを反故にするというわけではないでござるな??」

 確か、院長先生の話では、ダークドラゴンの契約を破ると、死ぬよりももっと恐ろしいことが起こるんだっけか……


 だがしかし、絶対に断らなければいけない申し出がここにはある。


「えっとですね……」

「妖精さん召喚!!」


 殺気を出し、ボクに問いただしながら妖精さんを召喚するアリアパパ。


「もちろん、婚約を反故にするつもりなんかないですよ!!」

 絶対に知られてはいけない本心がここにはある。


 ボクは自分の頬にできる限り力を入れて、満面の笑みを作ってみせた。

 がんばれボクの表情筋!!


 決して、震えた笑顔を見せるな、表情筋!!


「そうでござるか」


 とても穏やかな表情でアリアパパはうなずいた。

 ふぅ、よく頑張った、ボクの表情筋。


 ボクとアリアの結婚はアリアパパ公認になってしまったけど。

 ああ、全力で落ち込みたい。


「サイレント、なんではっきりとアリアちゃんとの結婚を白紙にしたいと申し出なかったのよ??」


 恨みがましくボクの背後から院長先生がぼやいてきた。

 まさか、この期に及んで、アリアとの結婚を望んでいるのか、院長先生は。


「アリアパパの目の前で婚約破棄なんかできるわけがないですよ!!」


 そんなことしたら、『娘が婚約破棄されたので、義理の息子を木端微塵にしてみた件』……的な復讐劇が始まっちゃうよ。


「あなたがアリアちゃんと婚約破棄をしないと、私の計画が台無しなのよ!!」

「大丈夫ですよ、院長先生。アリアがボクの頭の悪さに気づいたら、婚約をあちらから断ってきますって」


「ああ、確かに、それもそうなのよ」

 激しく納得する院長先生。


「ところでー、魔王様、アリアさんが人質じゃないと分かったわけですよねー?? 全面戦争する予定の魔物たちはこの後どうなるんですかー」


「あ、すっかり忘れていたでござる!! すぐに、魔物達には、戻るように伝えるでござる!!」

「分かっていると思うデスが、もしもウソをついたら……」


「分かってるでござる。アリアたんが無事だと分かれば、人間界を侵攻するのは愚策でござるからな」

「ダークドラゴンに誓えるデスか??」


「もちろんでござる。ダークドラゴンに誓うでござる」

「ふう、全面戦争が回避できたなら。とりあえずは、一件落着ですね」


「一件落着じゃないのよ、サイレント」

「え? まだ問題がありますか??」


「まだ、アーノム・ギトーゲの兵士たちに報告をしていないのよ。きっと今頃、全面戦争の準備をしているはずなのよ」

「確かに、そうですね」


『遠足が家に帰るまでが遠足』のように、『全面戦争回避は、報告するまでが全面戦争回避だ』


「それなら、魔王を倒したし、帰りますか!!」

「ちょっと待つのよ、サイレント。倒したんじゃなくて認めさせただけなのよ」

 院長先生がツッコミを入れてくる。


「倒すのも認めさせるのも同じようなものですよ」

「同じじゃないのよ!!」


「インフィニティの言う通りですー。魔王が存在しなくなったわけではないのでー、倒したはおかしいですー。言葉は正しく使わないといけませんよー。サイレントさん」

「はい、そうですね、フラットさん」


「ちょっと、何で私の言葉には抵抗して、フラットの言葉はすんなりと受け入れるのよ??」

「すみません、なぜか院長先生の言葉には抵抗したくなるんですよね」


「はっ、それって、もしかして、私のことが好きだから……」

 顔を赤らめさせる院長先生。

 うん、違うよ。


「改めて、魔王に認められたんですし、帰りますか!!」

 訂正するのも面倒になったので、ボクは院長先生をそのままにして、帰ることを提案した。


「そうデスね、師匠!!」

「アリア、アーノム・ギトーゲってどっち??」


 テンションが上がったボクはアリアに尋ねる。


「あっちデス」

「ありがとう!!」


 ボクは全速力で走り出していた。


 このボクが魔王に認められた神様候補になった上に、魔界との全面戦争をも回避させた功労者だ!!

 報奨金もたんまりともらえるはずだ。


「サイレント、ちょっと待つのよ!!」

「待てません!! 先に行ってますので、後から来てください」


 だって、一秒でも早く魔王を降参させて認められたことを自慢したいんだもの。

 ボクはみんなをおいて、アーノム・ギトーゲへと一直線に走った。


 …………

 ……


忙しい人のためのまとめ話

 サイレント、アリアパパに婚約破棄を言い出せない。

 サイレント、魔王を認めさせたのでアーノム・ギトーゲに帰ろうとする。

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