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第33話 サイレント、自分の装備をアリアに触らせない

前回のあらすじ

サイレント、アリアにエレガントな対応を見せようとして、お茶をふく。

サイレント、アリアに武器を見せて欲しいとせがまれる。




 

「師匠、アリアは鑑定眼がないデスが、鑑定眼のないアリアが見ても分かります。どこからどう見てもスチール製デス」


「ははは、何を言っているんだ、アリア。これはティタン製だよ。アリアが鑑定眼を持っていないから分からないかもしれないけどさ」

 お店の人がティタン製だと言っていたんだから間違いない。

 まったく、ボクを騙そうとしたって、そうはいかないんだから。


「お店の人が言っていただけデスよね?」

「うん」


「言うだけなら何とでも言えますよね?」

「確かに、そうかもしれないけど」

 そう言われると、自信がなくなってきた。


「ちなみに、他の人にも見てもらったんですか?」

「見てもらってないよ。伝説級の武器をこんなに安値であのサイレントに売ったことが知られたら、『俺にも売ってくれ』っていう輩が現れて、商売あがったりになるから、誰にも言うな……って、お店の人が言っていたからね」


「『誰にも言うな』、詐欺師が使う常套句デスよ?」

 確かに。

 ボクは色々な詐欺にひっかかってきたけど、そのことごとくは誰にも言うな……と言われた気がする……

「そんなはずないって」

 ボクはアリアではなく、自分に言い聞かせた。


「ちなみに、師匠が鑑定眼をもっているんデスか?」

「もちろん、持ってない」


「それなら、そのダガーは偽物デス」

「なんで言い切れるのさ? アリアだって鑑定眼スキルは持ってないでしょ?」

 鑑定眼のスキルは商人スキルだ。

 冒険者見習いのアリアが持っているはずがない。


「持ってないデスが、ティタン製の特徴なら知っているデス」

「特徴?」


「ティタン製の製品は全て透明色だと言われているデス。師匠のダガーはどこからどう見ても銀色じゃないデスか?」

 ティタン製って、全て透明色なの?

 初めて知る新事実。


 ん?

 ……ということは、本当に偽物ってこと?


 つまりは、弟子のアリアにティタン製の偽物をみせつけてたってこと?

 まずい、このままだと、ティタン製も知らないバカだと思われる。


「何を言っているんだ、アリア。これは、銀色に見えるかもしれないけど、見る人が見れば分かる透明色なんだよ」

 ボクはごまかす。


「透明色には見えないデス」

 うん、透明には見えないよね。


「いやいや、これは透明なんだって」

「師匠が言い張るなら、百歩譲って透明だとしましょう。ただ、ティタン製は持ち主の魔力を吸収して光る武器なんデスよ。その武器は光っているデスか?」


 え? ティタン製の武器って、光るの?

 次々に判明する新事実……って、まずい、このままだと、偽物だとアリアに悟られてしまう。

 なんとか誤魔化さないと……そうだ!!


「ほら、ボクの武器、光っているじゃないか」

「師匠、太陽に武器をかざして照らさないでくださいデス」

「照らしてないよ」

 照らしていたけど。


「師匠、アリア、武器に触れば、ティタン製かどうかわかるので、ダガーを触らせて欲しいデス」

「だから、ダメだよ。とっても高くて、誰かに触らせるどころか、自分で投げたことさえないんだから」


「師匠、ダガーを投げたことすらないんデスか?」

「うん、高価なダガーを投げて、盗られたり、失くしたりしたら大変だからね。肌身離さず持っているのさ。だから、弟子であるアリアにも触らせられないな」

 もしも偽物だったら、立ち直れなくなる。


「そうやって、ぼったくられたことを認めないつもりデスね?」

「だって、ボク、ぼったくられてないもん、これはティタン製の武器なんだから」


「師匠、もし、ティタン製の武器だったとしたら、5千ゴールドだとすると破格すぎると思わなかったんデスか?」

 思わなかった。

 なぜなら、ボクはお金の相場観が分からないから。


「これは、その……ボクはお得意様だから、サービスしてくれたんだよ。だから、5千ゴールドなんだよ」

「そう言って、自分をごまかしているんデスね」

 アリアは憐みの目を向けてくる。


「いや、そういうのじゃないんだって」

「そうデスね、師匠、アリアは分かっているデス」

 アリアはボクの肩にポンと手を置く。


「絶対に誤解しているよね?」

「誤解は全然してないデス。それなら、質問をかえるデス」


「何?」


「どうやって買ったんデスか?」

「どうやって?」


「だって、5千ゴールドデスよね? 現金で買えるとは思えませんが……はっ、まさか、盗んだんデスか?」

「そんなことしないよ。確か、ツケで買って、ローンのリボ払いとかいうのにしたんだよ」

 お店の人は色々と説明してくれた。

 まったくわからなかったけど、うん、うんと肯くだけで良かったはずだ。


「それ、年利何パーセントデスか?」

「よく分からないけど、安い買い物だって言われたよ」

 安い買い物なら、きっとお得な買い物のはずだ。


「なるほど、つまりぼったくられたんデスね?」

「だから、ぼったくられてないってば」


「師匠、5千ブロンズならまだしも、5千ゴールドをリボ払いにされた時点でほぼ間違いなくぼったくられているデス」

「だから、そんなことないってば」

 こうなったら、居直ってでもぼったくられたとは認めないでやる!!


「認めないつもりデスか?」

「うん、認めないし、ボクの武器は絶対に触らせないから」

「残念デス。触ればすぐにわかるデスのに……」


 うん、アリアには絶対にボクの武器を触らせないぞ!!

 もう、現実は見ないと心に決めたんだ。


「もう、武器の話はおしまい。武器以外のことで気になることないの?」

「うーん、それなら師匠は普段、どんな腕力の特訓をなさっているか教えて欲しいデス」

 うっ、深堀して欲しくはない話題にかわってしまった……


「あー、いやー、腕力の特訓は本当に地獄の特訓なんだよ」

「師匠、その地獄の特訓を教えて欲しいんデス」

 アリアは目を輝かせる。


 実は特訓なんかしていません……とは言えないな。


忙しい人のまとめ話

サイレント、ぼったくりにあったと悟るが、認めない。

サイレント、アリアに特訓をせがまれる。



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