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第27話 サイレント、最後の手段を使う

これまでのあらすじ

 サイレント、妖精さんをなめて、遊んでしまう。

 サイレント、妖精さんを舐めたことを後悔する。

「ちなみに、前はどんなパターンだったんですかね??」

 ボクはもみ手をしながらアリアパパにたずねた。


「なんで敵であるお前に教えないといけないでござるか??」

「確かにおっしゃる通りです」


「えっと、確か、相手の体力とスピードに合わせて追い続けて『これ以上走れません、もう無理です』と降参した瞬間に、光の速さでぶつかったはずデス」

「そうなんだ、教えてくれてありがとう、アリア」


 ボクは肩を落としながらアリアにお礼を言う。


 もしも、前と同じなら、ボクの体力がなくなるまでずっと追いかけられて、走らされ続けるってことでしょ!?


 体力には自信があるけど、すごい速さの妖精さんから逃げられるのだろうか??

 多分、無理だろう。


 こうなったら、最後の手段をつかうしかない!!

 いや、待て、冷静になれ、サイレント。


 最後の手段は、とてもリスクが伴う、諸刃の剣だ。

 成功しなければ、死のリスクのみが高まる……


 やるか、やらないか……

 リスクはあるけど、ここでリスクを取らなければ、助かる道はない。


「あの、アリアのパパ……」

 ボクはおずおずと話を切り出す。


「何でござるか??」

「お金をあげますので、今回は見逃してもらえないですかね??」


「お金?? まさか、買収しようというのでござるか??」

「平たく言うと、そうですね」


 そう、ボクの最後の手段、買収だ。

 さきほど、見逃してもらえなかったのは、ボクを見逃したところで、利益が出ないから。


 ここでボクがお金を提示すれば、ボクからお金を巻き上げられるのだから、気分は良くなる……はずだ。


 もしも、失敗すれば、怒りしか買わないけど。


「お金で見逃すはずがないでござる!」

「まあまあ、そう言わずに」


 金貨はアーノム・ギトーゲで使ってしまったけど、銀貨ならば、たくさん持っている。

 実際に銀貨を目の前にすれば、アリアパパの気もかわるかもしれない。


 ボクは地面に置いてあったマジック・バックから銀貨を取り出そうとする。

 取り出そうとするのだが、マジック・バックから銀貨が出てこない。


「どうして銀貨が出てこないの??」

「何を言っているのよ、サイレント。銀貨は全部あげちゃったのよ」「そうデス」「そうですねー」


「え?? 銀貨をあげちゃった?? 誰に??」

「覚えてないのよ??」「覚えてないデスか??」「覚えてないんですかー??」


「覚えてないから聞いているんじゃないですか!! もう、腹ただしいな!!」

 ボクだって怒ることはあるんだよ。


「それは……」

 院長先生がこたえようとしたその時である。


「お前が誰にお金をあげたかなんてどうでもいいことでござる!! お金も持っていないのに、買収を持ちかけられた拙者の方が腹ただしいでござる!!」


 アリアのパパが声を荒らげた。

 まずい、アリアパパ、本気で怒ってる。


 確かに、アリアパパの言う通り、ボクが誰に銀貨をあげたかなんて気にしている場合じゃない。

 今、お金がないことは確かなんだから。


「ごめんなさい!!」

 ボクはアリアパパに謝罪して、逃げようとしたときに、目の前にはボクがいた。


「あれは、ボク??」

「違うデス、あれは師匠の姿を模した泥人形デス!!」


 目を凝らしてみると、確かに、アリアの言う通り、泥でできているようだ。

「この泥人形って……」

「妖精さんが師匠と同じ形になったデス」


「えっと、ボクと同じ姿になったから、ボクと同じくらいの速さになったってことは……」

「それはないデス。妖精さんはどんな形になろうとも、光の速さで追いかけることが可能デス」


 ですよね。

 性能が落ちたのではないかと淡い期待をもったボクがバカだったよ。


「妖精さんは、お前自身の姿になって、お前自身を追いかけるのでござる」

「ボク自身に追いかけられるっていうけど、あれ、泥人形だよね。色がないから、似ても似つかないよね」


 ボクの言葉に地団太を踏む妖精さん。

 あ、まずい。


 余計な一言で妖精さんを怒らせちゃったみたいだ。

 最悪の展開だ。


 めちゃくちゃ速く動ける妖精さんと鬼ごっこをして、逃げ切らなければならない……ってことでしょ??

 そんなの逃げきれないに決まっているじゃないか。


 あ、そうだ。

 逆に考えよう。


 ボクがマジック・バックの中に入ればいいんだ。

 そうすれば、妖精さんは追ってこられないはず。

 ボクは先ほど出したマジック・バック


「まさかそんな愚行をしないとは思うでござるが、マジック・バックの中に立てこもるつもりでござるか??」

「ボクがマジック・バックの中に入る?? そんなことするはずないじゃないですか」


 アリアパパに図星をつかれて、『その通りです!!』……と正直に言い出せなくなったボクは、その場をとりつくろう。


「それはそうでござるな。マジック・バックの中で籠城など、時間稼ぎにしかならないでござる。バックから出てきたが最後、光の速さとなった妖精さんの体当たりを避け切れず、お前はあの世行きでござる!」


 あ、そっか。


 マジック・バックの中にいる間は安全だけれど、マジック・バックの出口は一つだ。

 マジック・バックから出たら最後、一瞬でケリがついてしまう。


 マジック・バックの中に入る案は却下するしかない。

 ……ということは、妖精さんから逃げ続けるしかないってこと??


 本当にどうしよう……

 妖精さんよりも速くなんか走れないよ。


忙しい人のためのまとめ話

 サイレント、最後の手段、買収をしようとして、アリアパパと妖精さんを怒らせる。

 サイレント、マジック・バックに籠城することが、愚策だとアリアパパに気づかされる。

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