第25話 サイレント、アリアパパと戦う
2025/1/15 タイトルを修正しました。(本文に修正はありません)
これまでのあらすじ
サイレント、アリアパパにサイレントだとばれてごまかそうとするが、ごまかせない。
サイレント、抵抗するが、アリアパパと命を懸けた戦いを強いられる。
あわわわわ、戦闘が始まってしまった。
ボクは慌てて、瞬動でアリアのパパと距離をとる。
さて、なんとか距離をとることができたけど、アリアのパパってそもそも強いのか??
アリアと同じで大鎌と魔法を使うのか??
いや、武器を持っているようには見えないよな。
だけど、マジック・バックの中に武器を隠し持っているかもしれないしな……
うん、あれこれ考えても分からないね。
そうだ、分からないなら、知っている人に訊けばいいんだ!!
ボクって天才!!
「アリア、アリアのパパって強いの??」
「強いデス。アリア、パパには一度も勝ったことないデスから」
アリアが勝ったことがない……
どんだけ強いんだ、アリアパパは……
……って、ちょっと待って。
ボクもカバッカ町でアリアに勝っているじゃないか。
そうだよ、別にビビることはないんだ。
「アリア、ボクとアリアパパどっちが強いと思う??」
「師匠デス!!」
ウソをつけないアリアがボクの方が強いと断言してくれた。
つまり、アリアよりは強いけど、ボクよりは弱いと判断して良さそうだ。
それなら楽勝じゃないか。
そうだよ、人の形をした魔物はSクラスだと、フラットさんから聞いていたんだ。
余裕だな、余裕。
「そんな……アリアたん、こいつはパパよりも強いというでござるか??」
「そうデス」
落胆するアリアパパにコクリとうなずくアリア。
「ふふふ、ボクのほうが強いみたいだよ。さあ、どこからでもかかってこい」
ボクは颯爽と両脚のホルスターからダガーを取り出して、構えた。
「ふむ、得物はダガーでござるか。そういえば、アリアたんが戦った時、大鎌を蹴られた挙句、ダガーをのど元につきつけられて、負けてしまったと言っていたでござるな」
「パパ、どうしてアリアが師匠に負けた時のことを詳しく知っているデスか??」
「それは、ママが……」
「ママデスか。やっぱり、人間界に出てきたときからずっとママがついてきていたんデスね」
アリアから怒りの炎が出ている。
よっぽど嫌だったんだね、アリア。
「しまった、口を滑らせてしまったでござる」
アリアのママもアリアがボクの家に来た時にいたのか……
全然気が付かなかった。
ボクとアリアが戦った時は、家の中しか気配察知をしていなかったから、窓の外からボクたちの戦いの様子を観戦いたのかもしれないな。
ボクの家にカーテンはないから丸見えだし……って、深夜にボクの家を覗くなんて、怖すぎるよ、アリアのママ!!
ホラーじゃないか!!
「おのれサイレント!! アリアたんを怒らせて拙者の戦意を喪失させようとするとは卑怯でござるぞ!!」
「今のは自爆だよね?? アリアパパが口を滑らせただけだよね??」
ボクは悪くない。
「問答無用でござる!!」
アリアパパは、剣を抜いた。
剣を抜いただけだというのに、背筋がぞっとした。
あの刀、やばい。
何をどう表現していいか分からないけど、とにかくやばい。
「くらうでござる!!」
ボクのお腹めがけて、抜刀するアリアパパ。
ボクがその刀を避ける。
よし、このままの軌道であの速さなら、刀は木に食い込むはずだ。
木から刀を抜くにしろ、刀を離して素手で攻撃してくるにしろ、一瞬だけ反撃のチャンスが生まれることは間違いない。
よし、刀が木に食い込んだ瞬間、ダガーでアリアパパののど元にダガーを突き付ければボクの勝ちだ。
さあ、木に食い込め!! 木に食い込め!!
「え? 木が消えた!? どういうこと??」
そう、アリアパパの刀が木に触れた瞬間、木はそこに存在していなかったかのように消えてしまったのだ。
「師匠、まずは避けるデス!! 二撃目が来るデス!!」
「え? あ、うん、そうだね」
ボクはうなずきながら、アリアパパと距離をとる。
「ねえ、アリア、どうして、木が消えたの??」
ボクはアリアパパと距離ができたのを確認してから、アリアに問いただした。
「パパの刀は妖刀だからデス!!」
「妖刀だって!?」
「そうデス!! パパの妖刀は魔力を流し込むことで、暗黒物質をまとわせることができるデス!!」
そんな話、ボク、聞いてない!!
「そもそも暗黒物質って何??」
「暗黒物質は、触れたものすべての存在を一瞬で消してしまう魔法デス」
「存在が消えるってことは……」
「師匠の存在が一瞬にして無に帰すデス」
うん、あんなのに勝てないよ。
こうなったら、逃げの一手だ。
アリアパパの攻撃よりも、ボクの方が速く動ける。
「逃げるとは卑怯でござる!! いざ尋常に勝負でござる!!」
「イヤだよ!」
ボクは刀がギリギリ届かない距離を保ちながら、アリアパパから逃げる。
「なるほどデス。師匠はパパとつかず離れずの距離をとることで、相手を傷つけずに疲労させて勝とうという作戦デスね」
「絶対にそうじゃないと思うのよ。ただ逃げているだけなのよ」
「逃げるだけじゃ、拙者は絶対に負けを認めないでござるよ」
確かに。
逃げるだけじゃ、アリアのパパは納得しないだろう。
それならば、戦意を喪失させる方法はないものか??
……あ、そうだ。
アリアパパの刀を盗ることはできないだろうか??
そうだよ、マジック・バックで盗めばいいんだよ!!
「マジック・バックよ、アリアパパの妖刀を吸い込め!!」
ボクは魔法でマジック・バックを取り出して、アリアのパパが持つ妖刀だけをバッグに入れようと試みた。
「拙者の刀をマジック・バックで盗もうとしているでござるか?? マジック・バックは、所有者の許可がないとマジック・バックには入れられないでござる!!」
…………
あ、そうだった。
すっかり忘れていた。
「ふっ、さすがはアリアパパ。ボクのはったりに戸惑わないか」
ボクはあたかも作戦だったかのようにつぶやき、マジック・バックを地面に置く。
「絶対に、許可がなければマジック・バックに入れられないことを忘れていただけなのよ」
院長先生、それは言わないお約束ですよ。
「アリアパパの攻撃を避け続けるのみ!!」
「はぁ、はぁ、はぁ。追いつけないでござる。それならば……」
アリアパパは刀の鞘を投げつけてきた。
「うわあ」
アリアパパの刀の鞘を避けた先に、アリアパパ。
速い!!
「これで終わりでござる」
アリアパパは刀をボクに向けてくる。
でも、ボクの方が速いから!!
「ふふふ、アリアパパの行動は読んでいたもんね。どんなにいい武器を持っていても相手に当てることができなければ、意味がないんだよ」
「さすが師匠デス」
「妖刀キラーと呼んでくれても構わないんだからね」
ボクは誇らしげに胸を張る。
「ただ避けているだけなのよ。誇ることでもなんでもないのよ」
院長先生、それは言わない約束じゃないですか。
いや、約束なんかしていないんだけどさ。
「アリアパパ、鞘もなくなっているんですから、もう奇襲は通じません。降参するなら今のうちですよ??」
院長先生の話を聞かなかったことにして、ボクはアリアパパに降参を勧めた。
「絶対に降参はしないでござる!!」
忙しい人のためのまとめ話
サイレント、アリアパパと戦う。
サイレント、アリアパパの攻撃を避け続ける。